軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

気付く事、見たくない物(ラギル視点)

ラギルたちは今日もまた集まることになった。

先日話し合いは済んで、当面は時間稼ぎができると思った矢先の事である。

だが今回招集をかけたのはマグニではなくナリキンだった。

内容は「試練について」とのこと。

恐らくだが、早くも試練について諦めるという宣言に違いない。まったく情けない。

まだ一週間も経っていないのだ。せめて1年は調査を行ってからようやく諦める選択肢を選ぶべきだ、そのくらいしなければ試練の重みがない。

すっかり通いなれた部屋に入ると、既にマグニとナリキンが待っていた。

聖女アルカに、軟禁しているナリキンの身内達もいる。

「おおラギル殿。ご足労いただきありがとうございます」

「うむ。もう諦めて次の試練を希望するというのか? 少々説教させてもらわねばならんな」

「あ、いえ。蘇生魔法である【リザレクション】を習得したので、成功するかどうかはさておき一旦試してみようかと」

「……は?」

ナリキンはそう言った。闘技場で集団即死事件が発生してから4日目の朝だ。

早い。あまりにも早すぎる。

「……【リザレクション】とは、初代聖女の頃に行使されていた 古(いにしえ) の魔法で、400年ほど前に使い手がいなくなり失伝したと記録にある、あの?」

「おお! さすがラギル上級神官殿、博識であらせられる。ええ、その儀式魔法です」

「ぎしき、まほう?」

「ええ。魔力消費が多いため複数人で行使する魔法ですが、ご存じない?」

儀式魔法。確かにそういう魔法があることはラギルも知っていた。

しかし宗教国家である光神教の総本山であるにもかかわらず、蘇生魔法【リザレクション】が儀式魔法で行使されるものだという記録は一切なく、個人により行使される通常と同じ魔法だという認識であった。

確かにラギルの記憶にある古文書には一冊だけ『儀式を行う』とあったことを思い出した。

が、それは宗教的な装飾儀礼だと思っていた。

なにせ、そもそも、歴代の教皇は一人で蘇生を行っていたのだから。

……まるで、誰かが意図的に邪魔な資料を消したような話ではないか。

そこまで推測してしまい、ラギルは体を震わせた。

「ッ、し、しかし、本当に【リザレクション】を習得したのかね!? どうやって!?」

「ええ。ちょっとした伝手でスクロールを手に入れましてな」

どのような伝手だそれは。わずか1日やそこらで失伝した魔法のスクロールを手に入れるなど、間違いなく『ちょっとした』ではないだろう。

「い、いや、まて。しかし【リザレクション】は儀式魔法なのだろう? 複数人で行うのであれば、お主一人が習得したところで意味がないではないか」

「大丈夫です。妻の実家から複数いただきまして、身内の面々も習得済みですので問題ありません」

「……はぁ??」

どうやら伝手というのは『妻の実家』らしい。

そんな農家の梨みたいな感覚で古の魔法のスクロールを送ってきたとでもいうのか?

「……お、おぬしの妻の実家だと? 一体どこの家だ!?」

「おっと、それは秘密です。妻は秘密が多くてですな、しかし、秘密の多い女は魅力的だと古来より言うではありませんか」

「ああ、謎の多いことで有名な初代聖女の名言じゃな……」

功績があまりにも多岐にわたっており、しかも100年生きてふらりと姿を消した、という最期。

当時複数人いた女傑をまとめ、一人の聖女として後世に残した説が濃厚である。

と、ここでようやくラギルは、これが『そもそも嘘である』ということに気が付いた。

そうだ。そもそも儀式魔法だというのも嘘。であれば、歴史から【リザレクション】を消した 何者か(・・・) がいるなどという陰謀論もなかったということ。

そうだ。そうにちがいない。

「……読めたぞ? ははぁ、なるほど。実際に使うのは【ジャッジメントレイ】あたりか? 死体を消してしまえば蘇生は不可能になる。そうなれば諦めるしかないのですぐ次の試練を行える、と、そういうことか」

「うん? ああ、そういう手もありますか」

「白々しい! 失敗しても良いからといって、意図的にロネスキーの遺体を処分しようという目論見! この儂の目が光っているうちは断じて認めぬ!!」

「阿呆。それこそ私の目が光っているからそんな事ぁできないよ」

と、ここでマグニが口をはさんだ。

「だがマグニ婆。こやつはホラを吹いておるにちがいないぞ。昨日今日で古の魔法を探し当て、習得したなど――」

「それなんだが、私も習得した。このナリキンからスクロールをもらってね……本物だよ」

「――はあああ!?」

何をバカな、とラギルが言う前に「本当だよ」と言って肩をすくめるマグニ。

「え、や、え? 百歩譲ってスクロールを持っていたとして、それをなぜマグニ婆に!?」

「うん? マグニ殿は元聖女候補生で魔力が豊富だと聞いたので頭数にいいかな、と思ったのだが」

「もっとこう、もっとこうあるであろう!? こんな老い先短い老婆より、相応の若者を選ぶべきだろうが!」

「オイ。さりげなく私を老婆呼ばわりするんじゃないよ。事実だが」

「! そうだ、聖女。聖女アルカに覚えさせるべきだっただろう!」

「あ、私も昨日習得済みです。さすがナリキン様ですね」

「……!!?」

こちらがおかしいのか? どうして古く失伝したとされる【リザレクション】のスクロールを、ホイホイと渡しているのだ!? ラギルは頭を抱えた。

「あっ。ひょっとしてラギル殿も覚えたかったのですかな? 申し訳ない、今日持ってきたのは1本だけでしてな。また後日でよければおすそ分けいたしましょう。ああ、その場ですぐ使っていただくことが条件ですが」

「だから果物か!? 貴様の妻の実家では【リザレクション】のスクロールが木に 生(な) るのか!?」

「ラギル殿。さすがに妻の実家といえど木にスクロールは生らないかと」

「わぁっとるわ! んなもん!!」

思わず訛りが出てしまう。頭がおかしくなりそうだ、常識が通じない。

……いやしかし、常識とは何だったか。蘇生は教皇にしか使えない奇跡。それが『常識』のはずで。

しかしその前提が。

ああ、もう。この上、本当に蘇生が成功してしまったら……常識が壊れる。壊れてしまう……