軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

教皇選・第二の試練、発表

ナリキンはダンジョンを攻略できなかった。

『むむ! しまった、気が付けばもう明日が試練の期日ではないか! これはしたり、ダンジョンの攻略は一旦切り上げて帰らねば……スマン、皆! またな!』

というか、しなかった。

別にダミーコアを潰すところまでやってもよかったのだが、そういえば今回がまだ3つの試練の内最初の1つだったことを思い出し、さすがにやり過ぎかと止めておいた。

配信を見ていた者たちからは不満の声も上がったが、そもそもがダンジョンの完全攻略は奇跡のような偉業。しかもソロでとなれば聖女くらいしかできない所業。

できなくとも仕方ないという声が大半だったし、そもそも不満の声も「そんなぁ! このまま最後までやってくれぇ!」という要望のようなものだった。

少なくとも、ナリキンの支持率はこの1ヶ月でうなぎ登りを通り越して天井突破していた。民はもう、試練なんていいからナリキンに教皇になってもらい、ダンジョンも攻略して欲しいと願っている。

まだ、第一の試練だというのに。

ともあれ、その第一の試練は聖書を無事ロネスキーに返却し、文句なしの達成となった。

現物は傷一つなく無事だし、ナリキンがこの聖書をずっと身に着けていたのは、配信を見ていた民たちが証人である。

例え誰かが口を挟もうと「何言ってんのコイツ?」と一笑に付されるだろう。

そして……

『聖女アルカと決闘し、勝利せよ』

それがダンジョンから帰ってきたナリキンに課せられた第二の試練だった。

「……それだけですかな?」

「悪いね、これだけだよ」

ダンジョン攻略等に比べてあまりにもアッサリした試練。マグニはナリキンがダンジョン攻略を完遂しなかったのでむしろホッとしたくらいだった。

しかしこれは政治的に重要な意味を含んでいた。

その証拠に、聖女派の上級神官ラギルが顔を青くしながら睨んでいる。

「アンタが聖女より上であると示せば良い……既に民の支持は相当なモンだが、ここいらで決定的にしておけば 誰も文句は(・・・・・) 言えなくなる(・・・・・・) だろう」

「なるほど」

聖女派。その言葉がある程に、聖女を教皇に祭り上げようとしている奴は多い。

それは聖女がダンジョンを攻略できる『武』の象徴であるからだ。

その聖女相手に1対1の決闘で勝てるのであれば。そもそもの聖女派の土台が消し飛ぶ。

尚、ナリキンが聖女アルカに敗北した場合は、その時考えることにした。

現役の聖女相手に手本を示すか、これ以上に適切な試練を考えなければいけないので、マグニは是非ともナリキンに試練を突破して欲しいと思っている。

「では聖女アルカ様。決闘はいつがよろしいかな? 都合のいい日を教えてくだされ」

「ふむ。それこそ、今日今すぐ、でも予定は空いているのですが……」

言葉を濁すアルカ。

「なにか問題でも?」

「……ひとつだけ。決闘を受けるにあたり、ひとつ条件を出させてください」

「なんですかな?」

「実は私、あるお方を探しているのです。――そう、あの日、私の心をすっかり塗り替え、真実に目覚めさせてくださったあのお方を……!」

あの日。真実。それは、聖女が教皇に明確に牙をむいた、あの夜の話。

『教皇討伐』のお題目を唱えさせ、教皇を聖都クロマクより失踪せざるを得なくさせたテロリストが居た。

何を隠そう、目の前のナリキンのことである。顔は完全に変えているが。

「あの方にお礼を述べたいのです。どうか、あの方に会わせてくださいまし。それが叶うなら、喜んで決闘を引き受けましょう。ナリキン様。私の我儘を、聞いていただけませんか……?」

「……おお。ああ、ええ。はい。微力を尽くしましょう……」

とある『名も知らぬテロリスト』を探し、連れてこいということだ。

……それはある意味、本当の試練。

しかもこの場合は聖女が手本を示す必要が無い。

ナリキンは顔が引きつるのをなんとか抑え、聖女に握手で応えた。

* * *

『助けてマスターえもん!』

「しょうがないなぁナリキン君は。……で、どうした?」

ナリキンは試練を出されるなり早速俺に相談してきた。(※ 『助けてマスターえもん』は助力が欲しい時の伝統的挨拶の一つとして教えておいたものである)

一体どんな無理難題を出されたのか。俺はナリキンから話を聞く。

ふむふむ。ほーほー。そうきたかー。

「うん。だが全く問題ないな?」

『え、そうですか?』

「そりゃそうだ。偽物だったら許さない、とか言われたとしても、ここに本物が居るんだし」

『! 確かに! では我が顔を前のものに戻していただき……ああ、そうなるとナリキンが居なくなってしまうな。そうだ、マスターにナリキンとして聖女に会っていただければ』

「待て待て」

自分があの時のテロリストだったのだから、とそう提案したナリキン。しかし。

「あの時の『中身』は俺だっただろ。身体はナリキンだったが」

『あ。そういえばそうでしたな……ん? ではマスターに憑依していただき……? 身体が足りませんぞ! 新たにもう一人作りますか』

「そんな面倒なことは必要ない。お前、俺のスキルを知らないのか?」

そう。俺には【超変身】があるのだ。

しかもレベルアップしてて『過去に存在したもの』にも変身できるようになっている。自分がその姿をちゃんと知っていることが条件だが……

ナリキンの過去の姿は、当然その条件を満たしている。

……そういえばナリキンが聖王国に行った後の話だったな。知らなくても当然か?

「というわけで、俺がそっちにテロリストとして行くから、それを聖女アルカに紹介してくれればいい」

『さすがマスターですな! あっという間に解決しました!』

「名前は……キョウとでもしておくか」

聖王国に忍び込むにはソトの力を借りればいいし、大きい問題はないだろう。

むしろ問題としては、

「それよりナリキン。お前、聖女に勝てるか?」

『……聖女の強さが未知数ですなぁ』

そう、聖女は準勇者級の実力者。いちダンジョンモンスターのナリキンが勝てるかどうか――そちらの方が単純に難題なのである。