軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

仲間の強化パートは勝利のフラグ

ナリキンはただのダンジョンモンスター。一方聖女は準勇者級の英傑だ。

「防御力は『神の毛布』をロクコから借りて使えば問題ないが、攻撃力の方がな……」

『ロクファを使いますかな?』

「決闘は1対1だろ? それは筋が通らないとかイチャモンが付けられそうだ」

先日、バジリスクを倒した茶番は実力とは決して言えない。……バジリスクの素材欲しかったからボススポーン使って量産中で、その処分ついでに一匹流用したのが先日の配信での裏話だ。

当然、バジリスク側が手加減していたと言っていい。弱点も熟知してたし。

……本当に手段を選ばないのであれば、俺がナリキンと交代して決闘に出るという手もある。【超変身】なり『憑依』なりで。

俺なら『神の毛布』で防御しつつ、無敵の固定砲台として【エレメンタルバースト】で始末できるだろう。ダメージを食らわず、こちらが一方的に攻撃できるのだからいつかは勝てる。

……しかし、決闘相手である聖女に『ナリキンが別人である』と見破られる可能性が高い。それもかなりだ。

魔国のやつらもそうなのだが、一定の実力者は『拳で語る』とか『剣は何よりも雄弁』とか言って、俺の知らない言語由来のルートで見抜いてくる。

別人だと見抜かれたらやはりイチャモンが付く……であれば、やはりナリキンが戦う方向で進め、『憑依』は最後の手段としておくべきだろう。

『マスターの【エレメンタルバースト】を自分も使えれば良いのですが』

「ネルネが匙を投げるレベルで発音できないらしいからなぁ……」

この世界の魔法は、スクロールで覚える他、耳で完コピして唱えられれば習得できる。

が、全属性を無茶苦茶に混ぜた【エレメンタルバースト】は、その詠唱も無茶苦茶すぎて再現不可能らしい。

習得できるのは恐らく、俺と同じく翻訳機能を備えているワタルのような異世界勇者くらいだろう。

『他の強いスキルをスクロールで習得するというのはどうですかな?』

「……例えば【ジャッジメントレイ】とかかな。だが、上級を越えたレベルのスクロールは高すぎて未だに手が出せないんだよ」

あのクラスのスクロールは1000万DPとか普通にするし。

カリソト区のおかげで収入は激増したが、それでも手は出せない価格だ。

「よし、普通にナリキンを強化しよう」

『む? 我を強化する……普通に、とは?』

「鎧としての性能をパワーアップだ。オリハルコンでお前の本体である鎧をコーティングすれば基本性能が爆上がりする……かもしれない!」

『!!……お、オリハルコン!? よ、よろしいのですか!? ぜ、ぜぜ、全 鎧(アーマー) の憧れですぞ!?』

全鎧の憧れとか初めて聞く言葉だわ。

だが、オリハルコン鎧のリビングアーマーともなればダンジョンのラスボス級の存在といえる。それなら聖女とも渡り合える存在……のはず。

『やはり、リビングアーマーたるもの自前の防御力があってこそですからな!』

「兜だけは別途で作っておいた方が良いか?」

『いえ! 兜も自分を使ってください、顔だけ人化もできるので!!』

声が生き生きとしている。実は『神の毛布』で防御力をカバーされるの嫌だったんだろうか。確かに鎧のアイディンティティに干渉しちゃうしな…

「じゃあパーツ単位で作業するから、【収納】に順次パーツを入れてくれ」

『では右腕からお願いします……入れましたぞ!』

「オーケー、確認した。それじゃコーティングしてくぞ」

そうしてナリキンから【収納】経由でパーツを受け取り、一晩かけて全身分のオリハルコンコーティングを施して行った。

……最後の兜パーツの時は生身状態でやってきたので少しビビった。

「【収納】に生首が入ってるのは驚くだろ。リビングアーマージョークにも限度ってもんがあるんじゃないか? オイ」

「はっはっは。やってみたかったのですぞー! では最後の兜、よろしくお願いします!」

オリハルコンコーティングでハイになってたな、ナリキンめ。

* * *

さて、そんなこんなでナリキンを強化した。

今は撮影用ダンジョンを使って性能を確認しているところだ。

実際の性能がどのくらい上がったかと言えば、まず防御力がオリハルコン級になった。

これは鎧をオリハルコンで包んだのだからそのまんま、当然だ。魔法耐性も最高級であり、俺の魔法を受けてもピンピンしている。

【エレメンタルショット】も弾けるあたりさすがオリハルコン。

そして、運動性能が爆上がりした。

今まではジャンプでもせいぜい身長までくらいまでしか跳べなかったのが、家の屋根に跳び乗るくらいは余裕、3階建ての建物でも屋根に手が届くくらいの跳躍力を得た。

攻撃力も、岩を殴り壊せる程。まるでスーパーヒーローだ。

「ククク、もはや我はナリキンではない……ナリキン2.0である!!」

「おー、すごいな」

「体が全く別物のように軽いのです! それでいてパワーもある! 我、すごい!」

動作アシスト用のゴーレムにオリハルコンコーティングを施すと性能が上がるので、リビングアーマーも上がるとは思っていたが……想像以上の上がり幅だったな。

こっそりハニカム構造にする肉抜きを施したのも良かったかもしれない。

「勝てる、これなら聖女に勝てますぞぉー!!」

「素の防御力で負けはなくなったし、攻撃力も十分ではある。確かに今のナリキンは俺でも正面からでは勝てない――だが、聖女には『技』がある」

「……!! 技(ワッザ) ……!?」

武術とは、弱者が強者に勝てるようになる術理。ましてや聖女は強者な上にダンジョンの実戦において武を磨いている。

「しかし、この力があれば聖女の技などねじ伏せてやれるに違いありません!」

「ほう。なら――まず、ウチの村の最高戦力幼女に勝ってみようか」

というわけで、戦闘の先生としてニクを呼んだ。しっぽがパタパタと揺れている。

「ニク、ナリキンは丈夫だから全力でやっていいぞ。やれるか?」

「かしこまりました。丁度、動く練習相手が欲しかったのです」

ぺこり、とお辞儀をするニク。相対するナリキン。

「……ふふふふ、ニク先輩に吠え面かかせてやりますぞ!」

「おやナリキン。武器は使わないのですか?」

「不要! 我が肉体こそ最強の武器なれば!! うぉおおおお!!!」

「そうですか。では」

「おおおお――おぼろべっ!? な、あ、足が滑っ、む、どこに消え」

「足払いして後ろに回り込んだだけですが? これは私も武器が不要そうですね……ご主人様に全力を出していいと言われたのですが……やれやれです」

「ほあ!? か、身体が動かせぬ!? なぜだーーー!?」

そしてナリキンはニクに惨敗した。

なにせニクはオリハルコンコーティングされたゴーレムアシストを使っているのだ。しかも使用歴が昨日コーティングしたばかりのナリキンでは比べ物にならない。

出力が大体同じなら技術のある方に分があるのは当然の話で、つまりはナリキンが勝てる要素はなかったのである。

「硬いだけならいくらでもやりようがあるのですよ?……む、身体をバラそうとしましたね。ダメです。アルカとの決闘でそれを使う気ですか」

「……ぬぅううう!? なぜバレる!? どうなっておるのですかぁー!? このナリキン2.0が手も足も出ないのですがぁあー!?」

この様子だと……聖女に勝つにはもう一捻り必要そうだ。

当面は聖女に頼まれたテロリストを捜索すると言う名目があって不在を怪しまれないだろうし、ナリキンにはしばらく修行してもらおう。

ニクには特別手当をださないとな。よろしくー。