軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

作戦説明、からの

というわけで暗い中、村の外へとやってきた。

使うのは俺が預かっていたヤマタノオロチの死体だ。

ワタルの【収納】にはサイズの都合で入らなかったので、こちらで丸々預かっていた一品。

【収納ダンジョン】はハクさんにもバレているので、実はダンジョンという点だけ隠せば公開してもよい話で、容量が多い点についてはワタルにも「内緒だぞ」と前置きしつつ開示してある。

尚、一応「俺の【収納】は容量がデカいんだ。魔力が多いからじゃないか?」と伝えてはいて、納得してもらえている模様。推測であってそれが真実だとは誰も言っていない。

「うう、アタシのオロチが……弁償しなさいよォ!」

「普通に嫌だが?……じゃあいくぞー、ネクロマンス!」

と言いつつ発動するのはもちろん【クリエイトゴーレム】。

死にたてすぐを収納したフレッシュな死体を素材に、肉ゴーレムとなり起き上がる。

「というわけでヤマタノオロチの死体をゾンビにした。お前の配下にして村を襲ってくれ」

「アンタ凄いわね! ネクロマンスって桁がワケ分からないくらい高いヤツでしょ!? いくらでも戦力補充し放題じゃないの!」

695番の躍進はアンタの仕業ね! と尻尾を地面に叩きつけはしゃぐ650番。

「スキルで戦闘要員を補充できるのは便利だからな。特に、DPがかからないのが良い」

「それはそうね。ザコも山ほど倒されると出費がバカにならないのよ」

ダンジョンあるあるで少し話が盛り上がりかけたところで、ヤマタノオロチの死体に空いた穴をそこらへんの土を固めて詰め込んで塞いでおく。さらに鎧の様に盛る。

こういう加工にも便利なのが【クリエイトゴーレム】。何も言わずにさも当然のように弄って完成だ。

「へぇ、ネクロマンスって穴を塞いで鎧までできるの! 目が死んでる以外は完璧ねェ!」

「実際死んでるから目は仕方ないな」

ゴーレムとしてそれらしく眼を動かすことはできるけど、ゴーレムゆえに別の知覚をするのでわざわざ動かす必要も無いのだ。

……

あれ? これ実際ゾンビと何が違うんだろう?

性能がなんか違うのかなぁ。生前の魂がどうのとかかも。本当のネクロマンスなら魂とかレイスとかでなんとかできるのかもしれない。

「にしても、こんなのがイキナリ出てきたらビックリよねェ」

「あ、そっか。確かにいきなり出てきたらマズいな」

「え? マズイの??」

「多分そっちが考えてるのとは別のマズさだけどな」

だって本来俺の【収納】に入っているはずの死体が外に出ているというのは、何らかの理由がなきゃマズイ。

俺がこいつに味方して死体を提供したのがバレてしまう。

「……切っ掛けになるような装置を作らなきゃな。うーん」

「切っ掛けねェ」

「なぁ、この村ってお前の仕込みなんだよな? 村人に協力させることはできるか?」

「できるわよ。半数はホンモノのニンゲンだけど、村長とか村の重鎮は全部ウチで出したやつだから」

人間そっくりのリザードマンらしい。体の服の中に隠れるところに鱗がある程度のリザー度だとか。……リザー度ってなんだよ。なんとなく分かるからいいけどさ。

「じゃあ村のはずれに祠があったことにしよう。丁度ここでいいかな? 今DPで作るからヤマタノオロチゾンビを見ながらちょっと待っててくれ」

「ん? 分かったわ」

と、650番が後ろを向いたところで、近くの岩を材料に【クリエイトゴーレム】で祠を作る。ただの原寸模型ならもはや作るのも一瞬である。

「よし、できた。これを起動スイッチにしよう。俺が祠を壊したら村人に『そ、その祠を壊しちまったのか! 災いが訪れるぞ!?』と言わせてくれ。アレンジしてもいいぞ。で、ヤマタノオロチゾンビをけしかける」

「……なんで?」

「その『災い』で俺の【収納】に仕舞ってたはずのそいつがゾンビになって蘇った流れだよ。分かれ」

「ああ! そーゆーコトね! うん、面白そうだから協力してあげるわ」

「協力しないならワタルの功績がダンジョン攻略になるしかないから、そもそも断る余地もないはずだけどな」

「うぐう、そうだったわね……」

ぐぬぬと悔しがる650番。

キミが弱いのが悪いのだよ。……そもそもオロチが俺の一撃を耐えてワタルに襲い掛かるならそれで済んでた話でもあるしな。

ついでに俺が祠を壊してしまったという失点を追加できる! 一石二鳥の作戦だ。

見てろよワタル! お前に、ヤマタノオロチ討伐の名声をくれてやるッ!!

* * *

そして朝になってからワタルを祠の前まで連れて行ったのだが――

「すみません! うっかり躓いて何か壊しちゃいました!」

「お、おめぇ、その祠を壊しちまっただか!? 災いがふりかかるべー!」

おぉおおい!? なんでワタルが祠を壊してるんだよ!!

「くっ、こうなったら俺がよりぶっ壊すしか――うぉおお【エレメンタルバースト】!!」

「ぎしゃ――……びッ」

「あっ」

タイミング悪く出現したヤマタノオロチゾンビの頭を4個ほど吹っ飛ばしてしまった。

「二匹目のヤマタノオロチ!?」

「い、いや! 俺の【収納】にあったはずのヤマタノオロチが消えている。つまりあれは祠を壊したことにより俺の【収納】から転移して復活したヤマタノオロチゾンビ!」

「な、なるほど!?」

「さぁいけワタル! トドメを刺すんだ!」

「……でも、もう動いてませんけど?」

……そう。ヤマタノオロチゾンビは、実はゾンビではなくゴーレムなのだ。

ゴーレムは魔法生物であり、魔法ダメージであっさり死んだりする。

ましてや【エレメンタルバースト】は暴走した全属性魔法、かつ俺の魔力。

同じく俺の魔力で動くゴーレムには、ものすごく浸透する。浸透した上で暴走し、一撃で行動不能となってしまったのである。

「ば、ばかな。こんなはずでは……!?」

「やりましたね、ケーマさん! 僕の失敗をフォローしてくれるだなんて!」

視界の隅に「え、これアタシ悪くないわよね?」とコソコソ隠れる650番。

……

「ワタル、このままじゃお前の功績が全然ないだろう? あの洞窟をもうちょっと調べてみないか? 何かあるかもしれないぞ」

「まつだ勇者様! あの洞窟はヤマタノオロチが出てくるまでなにも無かったただの洞窟なので大丈夫ですだぁ! なんならあとはオラたちで調べとくんで! いやー、さすが勇者様方だべー!」

おい村人ッ! お前どっちの味方だ!? ってそりゃ650番の味方だったわ!

「だそうですので、そうですね。僕のすることは――ケーマさんの功績が特大だと報告するしかないですね!!」

「や、やめろぉ!?」

嬉々として帰還準備をするワタル。

そう、おそらくは、ワタルの望み通り。つまり【超幸運】の仕業に違いなかった。

かくして、俺の『復活のヤマタノオロチ ~お、お前あの祠を壊したんか~』作戦は失敗し、俺はヤマタノオロチを2回殺し、ワタルのやらかしのフォローまでしたという功績をかぶせられてしまった。

ロクコには「次のダンジョンコアの集会で650番の事殴っとけ」と言っておこう……