軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話:ゴレーヌ村の様子2

「……良い壁ができましたね!」

「村長がいない間にこんなデカいモンつくらせるとか、すげーにゃぁソト様」

「あれ? 半分はミーシャちゃんが作ったんでしょうに」

「スラコン製法教えてもらえなかったら圧倒的に負けるとこだったにゃ……」

スラコン製法。スライムを壁状にし、そこにバジリスクの石化の魔眼を使う。すると石膏のようにぴしっと固まるという新しい建築技術だった。

ミーシャが四天王のプライドをかけてクーサンと壁作りをしていて、進捗が負けていたところにフラッと来たソトが教えてくれた新技術。

その強度は石膏の比ではなく、芯材にトレントが立っていればそれも併せて石になるため、かなりの時間節約ができた。ドルチェに頭を下げてバジリスクを派遣してもらったり、トレントやスライムをどうにかこうにかするのがミーシャでも大変だったが。

お代として今後何か仕事があって履き潰した靴下が出たら、保管して、ソトに差し出すことにはなったが。

今回の仕事で走り回った後の、鼻を近づけると思わずフガッとなるような靴下も脱がされて持っていかれたが。

「ソト様のおかげでギリギリ四天王の体面を保てましたにゃあ。ありがとにゃ」

「えへへ、お代はちゃーんと貰うので気にしないでください」

途中からはスライム運用のコツがわかってきて速度が上がり、建築勝負はなんとか引き分けに持ち込むことができた。

むしろ、スラコン製法の運用レポートをソトがまとめてくれたので、それを加味すればミーシャが勝ったと言っても良い。

最後の方はクーサンもスラコン製法を使ってきて、激しいデッドヒートになった。

あれは危なかった。とミーシャは振り返る。

まぁ元々仕事を用意したのもソトなので、盛大にマッチポンプなのだが。

ミーシャの方で纏めた運用方法をクーサンでも使えるか実験をするために情報を共有したのもソトなのだが。

その結果確立されたスラコン製法を改めてアメリアに売り、ちゃっかり大金を稼いでいたのがソトなのだが。

諸々を考慮した結果がギリギリの引き分けになるように調整され、ソトの手のひらで踊らされていたことにミーシャは今尚気付いていなかった。

「ところで壁の近くに建てた寝床の小屋、そのままでいいのかにゃ?」

「はい。あれはあれで使えるので、私の別荘にする予定です!」

「はぇー。まぁ資材置き場ってことでスラコンで地下室も作ってたもんにゃぁ。潰すのは勿体ないかぁ」

本来場所は有り余っているのだが、モンスター襲撃があるかもしれないと主張するソトの指導で突貫で地下室を作り、そこに資材――スライムやバジリスクを置いたりしていたのだ。

それが、そのままソトの別荘となった。

「でもソト様。折角の別荘だけど、お家から随分遠いにゃん?」

「パパ達にバレない秘密のお家です! 隠れ家です!」

「秘密基地ってことかぁ。私も小さい頃作ったにゃぁ……ここまでしっかりしたのじゃなかったけど、宝物とか隠したりしてたにゃ」

「はい。私もここに宝物を隠すんですよー」

「うんうん、子供らしくていいと思いますにゃ!」

納得して頷くミーシャ。だが少し疑問が生まれる。

「あれ? でもソト様ってダンジョンにお宝を隠せるんじゃないかニャ?」

「パパにバレたくない、私のダンジョンには隠しておけないお宝なんです」

「そんなのがあるのかにゃ」

そう。ソトはダンジョンコア。しかも【収納】という、宝物を仕舞うのに特化した場所をダンジョンにしているとんでもない存在だ。

ミーシャもソトの『【収納】ダンジョン』に入って『 欲望の洞窟(ロクコ) 』の設置機能を使うことで帝都からゴレーヌ村までやってきている。

あのダンジョンに隠せないというお宝が思いつかない。

「たとえばお友達とかですね。私のダンジョンを教えられないけど、一緒に遊ぶ場所を確保しておきたい、みたいな! 将来的に、いっしょに冒険に行くのにも外壁に近いと便利ですし」

「ああ。確かに友達はそういうタイプの『お宝』ですにゃ。大事にするといいですにゃぁ」

ソトの『お宝』を微笑ましく思い、ホッコリと笑顔になる。

姫は、情操教育も無事修められているようでなによりだ。と。

「あ。パパやママには隠れ家のことは内緒にしてくださいね?」

「え? なんでですかにゃ?」

「私にだって、パパやママに把握されてない、秘密のお友達くらいいてもいいでしょう?」

「あー。なんでもかんでも親に全部把握されてる、ってのは確かに気分良くないですニャ」

軽い反抗期というやつだ。

このくらいなら可愛いモノだ、とミーシャは笑う。

――尚、親に内緒で大壁を作って勝手に村を拡張したのは『お手伝い』である。

……しかもミーシャは、この外壁も元々ケーマの計画なんだろうなと思っている。

なにせ都市計画である。

とっさの思い付きで出来る手回しではないし、現にケーマの部下や同僚の四天王に壁について聞いても「マスターの計画だと思います」「村長の計画でしょう」「ソト様は立派ですね」「何も問題はない……」と言っていたし。

……まさか、全員が「パパのお手伝いですよー」と言われて『そう誤解しているだけ』なんてことはないだろう。これほど大きな話なのだから。

仮にこれがソトの独断だとしたら、とてつもない話だ。

どこの世界にちょっと留守番で権力を得たからといって、資金も人手も技術をも自分で用意し、両親が旅行している間に村を町にまで発展させてしまうイタズラっ子がいるものか。

しかもソトが権力を得たのは、『四天王のアメリアが思っていたより仕事ができなかったから』という 予測不能(・・・・) な突発的に、突然沸いた話。

その前に至る前のケーマが旅行に行く話も、ワタルによって突然もたらされた話。

あるかどうかわからないこの機会の為に、虎視眈々と用意していたということになる。

……最近生まれたばかりの 子供(コア) が? なんのために?

つまり、やっぱり「パパのお手伝い」なのだ。

「ソト様、お友達がよろこぶといいですにゃ!」

「はい! 愛の巣です!」

それの意味、わからず言ってるのだろうな。と、やはりミーシャはソトのことを微笑ましく思った。