軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

計画

「それにしても、これケーマさんもSランク冒険者になれそうですよね」

「お断りだぞ? Sランクになったらこうして無茶苦茶な依頼を受けさせられるんだろ、俺はおうちでグッスリ惰眠をむさぼりたいんだ」

無事にヤマタノオロチを倒した俺達だったが、このままでは全ての功績が俺に被せられてしまう。

なんとかワタルに功績を投げつけたいところだが、嘘発見の魔道具もあるので本当になにもしていないワタルに功績を押し付けることはできない。

ヤマタノオロチの死体を【収納】に仕舞い、どうしたもんかと悩んでいたが、特に思いつかずに村に戻ってきてしまった。

村長に達成報告する。

「おお! あのヤマタノオロチを退治してくださったのですね、ありがとうございます! さすが勇者様!」

「いえいえ、今回はこちらのケーマさんが一撃で片づけてくださいまして」

「なんと、こちらの勇者様が!?」

「いや、俺はただの魔法使いだぞ」

と、ここで思いついた。

俺が凄いのではない、あっちが実はすごくなかったのだ。

「あれはまだ幼体だったんだろうな、少しの魔法であっさり片付いたよ。拍子抜けしちゃったよなぁ。なっ、勇者ワタル様?」

「え? ああ、まぁそうですね」

「まさかあんな弱いだなんてさ。わざわざ帝国から勇者を呼ぶ必要なんてなかったんじゃないか? あ、もしかして勇者を 誘(おび) き出すのが目的だった、とか?」

「め、滅相もない! 我々では手が出せなかっただけですじゃ!」

うん知ってる。だが俺は実際凄くなかったということで! な!

「でも確かにこれだけで帰るのも心苦しいですね。村長、何か手伝えることがあれば手伝いますよ。瓦礫の撤去とか任せてください」

「おい、俺は手伝わないぞ?」

「はい、ケーマさんはもう仕事しましたし大丈夫ですよ。僕が勝手に手伝うだけです」

でもお前が居ないと俺一人で歩いて帰ることになるじゃん。

ちゃんと背負ってもらわないと何日かかるか分からん。ワタルを待たなきゃならないな。

「じゃ、俺はゴロゴロしてるわ。おやすみー」

「はい。では村長さん、瓦礫は全部吹き飛ばしちゃって大丈夫ですか?」

「あ、いえ。木材の無事なところや土台は再利用したいので全部はちょっと……」

というわけで、俺はワタルが村の手伝いを終えるまで、村長宅で昼寝して待つことにした。オフトン出して、毛布かぶって、オヤスミナサイっと。

* * *

「だぁあああ!! どうなってんのよぉおおお!!!」

「ん?」

いやーよく寝たわ。おはよう。と、あおむけに寝ている正面から赤い尻尾が迫ってきて、無音でバリアに弾かれていた。

……おおっと。赤い大蛇がいるじゃないか。しかも喋る。

「ふぁぁあ……あー……おはよう?」

「お、お、お、おはようじゃないわよッ!? ちょっとぉおおお!!!」

ここは村長宅のハズなのだが、いったいどうしてこんな喋る大蛇が村の中にいるのだろうか。

「アンタ! 695番のマスターでしょ!? 人んちに乗り込んで来て一体何考えてんのよッ!」

「おお……」

よくよく見れば、見覚えのある蛇だ。

そう、あれはたしか3回目のダンジョンバトル。帝都近くの砂浜にダンジョンを作ったあの時の、三つ巴ダンジョンバトルの、一番最初に脱落した龍王チームの。

「えーっと。確か……650番から652番のうちの一体だっけ?」

「そーよ! 第650番ダンジョンコアよッ! さっきから起こしてんのに全然起きやしないッ! 叩いても何も反応しないッ! 動かそうにも触れやしないとかッ! なんなのよコレ!!」

寝る時に『神の毛布』を使ってたからな。防御性能バッチリだぜ。起きるまでは騒音も完璧にカットしてくれていたようだ。

「あー、外すっかり暗くなってんな。目覚ましかけておけばよかったかも」

「何のんきな話してんのよ! こちとら怒ってんのよ!?」

べしべしと尻尾で床を叩く赤い大蛇、650番コア。

「まぁ久しぶりだな? 何年ぶりだ? といっても、俺とお前では直接話をしたことはなかったと思うけど」

「そーね。アタシもアンタが695番の後ろに映ってるの思い出してビックリしたくらいよ。……で! アンタのせいでっ! ウチのヤマタノオロチが成長前にッ! 大赤字なのよッ!!」

再びべしべしと尻尾で床を叩く。床に穴あかない? 大丈夫?

「いやぁ、そんなこと言われてもな。俺は冒険者として依頼を受けて、ここに仕事に来ただけだから。俺が動かなくてもツレの勇者がなんとかしただろ。むしろダンジョンコアの制圧までしなかったのを評価して欲しいね」

「くッ! この裏切者派閥のマスターがッ!」

その裏切者派閥のマスターの前に無防備にコアが出てきちゃってるのはいいんだろうか?

「って、そういえばワタルはどこいった? ツレの勇者だけど」

「あん? ああ、あの男なら宴開いて酒飲ませて寝かせたわよ。ったく」

ヤマタノオロチを倒しに来て酒飲んで寝かされる勇者か。

……逆だろそれと言いたくなるがまぁいい。それに多分俺を起こそうにも起こせなかったんだな。やっぱり目覚ましかけとけばよかったか。

「というか、この村はお前の領域だったのか?」

「そうよ。本来なら、村で油断して寝ているところを毒蛇でガブッとやるのよ。顔見知りだから今回はやめてあげたのよ?」

……まぁ、普通に考えて報復が怖かったに違いない。

「そんなら、なんでヤマタノオロチに村を襲わせたりしたんだ?」

「襲った跡がないと信じないヤツがいたのよ! そいつはヤマタノオロチで倒せたからよかったけど、……てか、フツーは様子見で一晩村で休むのよ!!」

ぷんぷん、と怒り心頭な650番。

「ああもう、龍王様から教えていただいた最高の手だったのに! ようやく村が作れたのよ!?」

「へぇ。この村自体、全部用意したのか」

なるほど、龍王、5番コアのアイディアだったのか。……ある程度以上に上限近くまで強くないとすぐ破綻するあたり、 最強種族(ドラゴン) の傲慢さが出ていると言っても良い。

むしろ俺達が仕留めてまだ良かったといえよう。

「確かに悪くない手だったとは思うけど、限界だっただろうな。こうして勇者が派遣されてるんだぞ? 勇者をどうにかできる戦力がないと普通に破綻する戦略だぞ」

「うぐう」

悔しそうに顔をゆがめる650番コア。爬虫類顔だけど、イッテツで見慣れてるから表情の違いも普通に分かるのがなんか、その、なんかアレだな。

「……おっ。そうだ、良いことを考えたぞ。もう一体ヤマタノオロチ出せないか?」

「は? なんでよ」

「ワタルに倒させれば俺の功績が減る。ついでに倒したハズが実は倒せてなかったと言えば尚下がってヨシだ」

「……??? 功績が減って評価下がるのがいいの? 何考えてるのアンタ。バカなの?」

だって偉くなると面倒な方が多いんだもん。

「まぁいいわ。そんな言うなら、アンタがDP出すなら良いわよ。できれば成体分で」

「……うーん。そこまでしたくないなぁ」

ヤマタノオロチのDP、成体でも幼体でも今の手持ちでは足りないし、一旦村に帰ってとってくるにしてもロクコに相談せず出せる額ではなさそうだ。

「……じゃあ、俺がヤマタノオロチを裏技使ってゾンビっぽく復活させるから、それをお前に譲渡するわ。いい具合に勇者にやられてくれ」

「……えぇっと。それ結局アタシに何の利益があるの?」

「いやならダンジョンを勇者に攻めさせてもいいんだぞ? あいつ、今回なんの功績もないからそれくらいはしないとなー」

「わーったわよ! 協力するわよ!」

オーケー、そうこなくっちゃ。