軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出立

荷物をまとめる必要は特にないので、しばらく村を空ける挨拶とかバイトの指名依頼を出しておくとかの手続きみたいなものを片付ければ旅の準備は終了だ。

せいぜい服装だが、前に帝都にまで行ったときと同じ冒険者の旅装で十分。むしろ『神のパジャマ』のジャージを中に着とけば快適である。ロクコは『神の毛布』で。

(ネルネの準備についてはワタルと買い物デートで揃えてもらった。勿論ワタルの奢りである)

そんなわけで旅の準備はすっかりできたところで、四天王の3人を村に迎える。

砂浜ルートでソトと配置とで、帝都からすぐにこられる辺境の村、ゴレーヌ村だ。

「つーわけで、またしばらくお世話になるにゃ! 村の平和は私が守るにゃ!」

「おう。ようこそ3人共。……一応、ミーシャには冒険者ギルド側との折衝の仕事を用意したから。副村長が。……アメリアさんは村の運営、ドルチェさんは宿の方をお願いします」

無駄にやる気のミーシャに、アメリアさんとドルチェさんにもそれぞれ仕事を割り振っておく。

「はい。ロクコ様とケーマさんが不在の穴は私達で埋めますのでご安心を」

「……なんで私を、宿? 人前に出るのは好きじゃないんだけど……」

消去法というか、ドルチェさんは潜入調査とかで人と接する事もありそうだから、かなぁ。

あと、一番仕事ができそうだというのもある。

今回ワタルと共に旅に出るのは俺、ロクコ、ネルネの三人。

そして、仕事が一番多いのは、宿である。なにせ二人分だ。であれば、一番優秀そうなドルチェさんを当てるのは自明の理。

「なんなら人に擬態できる部下を使っても良いので。その分の人件費は自腹で払ってもらうかハクさんに経費請求してもらう形になりますが」

「……よし、人化覚えてるレイス3人くらい召喚するか……私はまた教会の地下で寝ててもいいかしら……?」

おお、早速人数の不利を埋めたぞ。さすがドルチェさんだ、助かる。

「部下が十分なバイトをしてくれるなら、ですね。キヌエさんやバイトリーダーの言うことを聞いて仕事するように言っといてください。あ。それとロクコのオーナーとしての裏方仕事もお願いできれば……」

「……それなら楽勝。のんびりできる……実質休暇?」

「にゃ!? ドルチェだけずるいにゃ!?」

ずるいどころかめっちゃ仕事担当してくれてんだが?

ミーシャも部下が仕事してくれるならそれでいいんだぞ。むしろ推奨だわ。

「んにゃ! じゃあシリアっつったっけ? ここの冒険者ギルドの責任者に良いようにやっとけって丸投げすればオッケーだにゃ。なーんだ仕事完了じゃん! 楽ちーん!……つーか、私ってば一応帝都ギルドマスターなのに村のギルド出張所との折衝を任されるとか……とんでもねぇ差配ですにゃあ?」

「ミーシャに宿の接客とか任せたくないだけだよ」

「賢明ですね。さすがケーマさん。……私は部下に任せられそうにないんですが、それはどうしたら?」

村長代理はさすがに部下に丸投げというわけにもいかない。だが――

「大丈夫です。俺はお飾りの村長なんで、大した仕事はありません」

「そうなんですか。ほっ……」

「はい、せいぜいオフトン教のミサくらいですね」

「……私、白神教の重鎮でもあるんですが」

「ならむしろゲストでぜひ参加してください。大丈夫、ご存じの通り白神教とはズブズブな仲ですからね」

「それはそうですね」

よし、これで一通り仕事を割り振ったぞ。

「それで、ケーマさんの出発はいつになるのでしょう?」

「皆さん来たし、明日に出ますよ。村とダンジョンは任せました」

「…… ロクコ様(ダンジョン) もしっかり守るので、ご安心を……」

「敵が来たら全部ぶん殴ってやるにゃぁ!」

うんうん、やる気なのはいいことだ。

聖王国もなんとかなった今、もうそんなに敵来ないっぽいけどね?

とりあえず今日のところは四天王の3人に対して歓待の宴をしておこう。

当面の事、よろしくお願いしまーす。

* * *

そうして旅立ちの日。村に滞在していたワタルと村の出入り口――パヴェーラ方面のツィーア山貫通トンネル前で合流した。

「ロップさんから聞きましたよ。Bランク冒険者をバイトに、とか凄く贅沢ですねぇ」

「なに、諸経費はハクさんが補填してくれるって話だしな。俺の懐は痛まない」

出してくれなくても宿には十分稼ぎがあるし赤字にはならない。

「それじゃ、アメリア。村と、ドルチェとミーシャの事も頼むわね」

「かしこまりました、ロクコ様。……ネルネさん、ロクコ様の事をお願いします」

「はいー、お任せくださいー?」

四天王勢見送り代表、アメリアがロクコとネルネに頭を下げる。

「ワタルも、しっかりロクコ様を守るように」

「はい。アメリアさんも村をよろしくお願いします」

「ケーマさんは自分で自分を守れるので多分大丈夫です」

「んん?」

「そうですね。ネルネさんとロクコさんをバッチリ守りますので!」

防衛力があるのは否定はしないけど、放置はしないでくれよ?

で、その後ワタルがネルネと話しているのを確認しつつ、アメリアさんが俺にコソコソ小声で話しかけてきた。

「……ところで、他の方は見送りに来ないのですか?」

「あー、昨日のうちに済ませましたからね。……連絡が取れないわけでもないので、それほど大きな別れというわけでもないですし」

ソトの力で戻ってこられなかったとしても、ダンジョンマスターならメール機能もあるし、なんなら魔力を振り絞って【転移】で急いで戻ってきた、と言ってもいい。

言い張ればそれを否定することはできないし、よく考えたら実際できなくもないのだ。マナポーションも樽で出せるわけだし。神の寝具の回復もあるし。

「何かあればメールで連絡いれてください」

「わかりました。それではお気をつけて」

こうして俺達は、アメリアさんに見送られつつ、ワコークへ向けて出立した。