軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イチャコラしながら移動する一行

ドラーグ村でワタルが盛大に囲まれたりしつつも、駆け抜けるようにして俺達はパヴェーラへと向かう。

が、徒歩である。なぜかと言うと、ワタルが徒歩の方が早く、そもそも普段から馬車を使わないからだ。

俺達も日頃は村から出ないし、ダンジョンの『設置』や【転移】もあるしで馬車を使わない。

つまり、すっかり車の事を忘れていたのである。

思い出したのはツィーア山貫通トンネルの中を歩いている最中に「あれ? 俺達なんでわざわざ歩いてんの?」と思ったからだ。

……だが、気付いたからには俺達は歩いてパヴェーラまで行く気はさらさら無い!

「よし、それじゃそろそろいいかな」

「ん? どうしたんです? 立ち止まって。進みましょうよ」

「……ワタル。これから見せるのは俺の切り札のひとつだ。人に言うなよ?」

「え? なんです急に……あ、もちろん言いませんとも!」

俺はワタルにそう言ってから呪文を唱える。

「――我は求め、呼びかける。今ここに現れよ! サモン馬車!!」

と、同時に【ストーンパイル】を無詠唱で一瞬だけ発動。出現させたのはただの砂粒だが、結果として地面に魔法陣が現れて軽く発光。

そして【収納】を開いて、トンネル内でコッソリDPを使って用意し【収納】ダンジョンに置いといた馬車(馬なし)を取り出す。

その結果、呪文と相まって馬車を魔法で召喚したように見えるのだ!

「おお! 馬車を召喚する魔法ですか!? 初めて見ました!」

「ああ。俺、レオナに色々教えてもらってただろ? あいつホント色々知ってたよな」

「なるほど、レオナさんですか」

ワタルもレオナを知っているし、レオナが只者ではないことは知っているだろう。

つまり、今後なにかしらあったらレオナに理由を押し付けてやれば問題ないのだ!

(※ 勿論、レオナから教わったとは言っていない)

「あれ、でもこの馬車、馬が居ませんけど」

まぁ馬はケチったので仕方ないね。

「ワタルが引けばいいだろ? 馬より早いんだし力も有り余ってるんだしさ」

「お。了解です。超高速勇者車爆誕! ってことですね!」

「あー、なら私が御者しますねー。鞭もあるのでー」

「はい、よろしくお願いしますネルネさん……鞭!?」

「まて冗談だ冗談」

俺はノリノリで馬車を引こうとする 勇者(ワタル) と その恋人(ネルネ) を止める。

「え? 冗談なんですか?」

「さすがに勇者に引かせる訳ないだろ……」

勇者を馬車馬のように扱うのは 王様(ハクさん) だけで十分だ。

「【クリエイトゴーレム】っと」

俺は道から外れた脇の地面に魔石を投げて普通のクレイゴーレムを出す。さすがに特殊型は秘密だ。

ボコッと大穴を開けつつ出たゴーレムを、俺は本来馬がいるべき場所に移動させた。

「ああ、なんだゴーレムに引かせるんですね」

「ウチの宿ではゴーレムに仕事させるのが定番なんでな。……って、なんで残念そうなんだよワタル。そんなにネルネに御者されたかったのか?」

「いやぁ、ほんの少しだけですよ?」

えぇ……いや、ここはネルネがしっかりワタルを尻に敷いているのを褒めるべきか?

「よくやってるわねネルネ。その調子でワタルを立派な手下に調教しなさい」

「はいー! おまかせあれロクコ様ー!」

……一足先にロクコが褒めていた。

というかワタルも見てるってのに、堂々と調教しろとか言うんじゃないよ!?

「……ワタル。ウチの村の女は強いからな。まぁ、その、ガンバ?」

「いやぁ、お互いに頑張りましょうね。ケーマさんもロクコさんには頭が上がらないでしょう?」

「そ、そんなことないし。ロクコとは俺の方が主導権得てるし」

「ほら、ケーマ達も早く馬車乗りなさいよ!」

ロクコに呼ばれて、俺とワタルは馬車に乗り込んだ。

「ゴーレムだから、御者がほぼ要らないんだよな。とはいえゴーレムに適宜指示しなきゃならんから俺は御者台に座るが」

「じゃあ私も座るわ。ケーマの隣は私の席よ」

「……ロクコ、そうなると馬車の中はワタルとネルネが二人きりになるな」

「そうね」

と、ロクコが俺の隣にピタッとくっつくように座る。

「……あの、ロクコさんや? もう少し離れてくれないと手綱を使いにくいんだけど」

「別にゴーレムの指示では手綱つかわないでしょ」

「それはそうだけども」

腕がピトッとくっつく距離だ。長袖じゃなかったらやられてたぜ……!

「お、おーいワタル。そっちはどうだ?」

「だ、ダメです! これ以上は持ちません!! たすけてケーマさん!」

「あらあらー? 勇者様ともあろうものがー、この程度でーですかー?」

あ、だめそう。何やってるかは分からんけど、もうワタルはすっかり手玉に取られている模様。

一体ネルネにどんな指示をしたんだという気持ちを込めてロクコを見ると、「にしっ」とイタズラげに笑ってみせるロクコ。

「さ、ケーマ? 私達もパヴェーラにつくまで楽しみましょ?」

「御者台は外からの目があるから、ダメ」

「むぅ。御者をネルネとワタルに押し付けて、馬車の中にケーマ連れ込む方がよかったかしら」

一体お前は俺に何をするつもりだったんだ……?

そして馬車の中でワタルとネルネは一体何を……健全なお付き合いだよね?……だよね!? そうだと言ってよワタル!!

というわけで、無事パヴェーラに着いた。

正確には途中でシカが出たが、ゴーレムが普通に払いのけて何事もなかったかのように進んだのでやっぱり何もなかった。

「それにしてもー、わざわざドラーグ村を出てから馬車を出さなくても、村を出る最初から馬車を使えばよかったのではー? 乗合馬車もありましたしー」

……ハッ!? 確かに!?

そういや乗合馬車も出てんじゃん! とうっかりに額を押さえる。

「バカねネルネ。それだと馬車でイチャイチャできないわよ?」

「! な、なるほどー! 私がワタルを篭絡するのもー、マスターの計算の上でしたかー!」

すまん、何も考えてなかっただけなんだ……

ちなみにワタルの前でもネルネは俺の事をマスターと呼ぶが、意味的には『雇い主』兼『師匠』なので問題はない。

「ささ、次は船に乗りますよ! チケットはちゃんと4人分ありますからね!」

「ワコーク行きの定期便とかあるのか?」

「あ、いえ。知り合いのワコーク商人さんの船です。護衛する約束もしてるので、多分僕達の到着を今か今かと待ってますよ」

ワタルに案内されて、俺達はパヴェーラの商人のところへ向かった。