軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ワタルのお誘い

「……ケーマさん、僕、行こうと思うんですよ!」

「うん?」

話がある、と応接室にやってきたワタルが突然何か言いだした。

「どこかに出かけるのか?」

「はい! 以前から行こう行こうと思っていたんですが、この度ついにハク様からの仕事で行く機会を得まして!!」

「あー、うん? そうか。いってら?」

「ケーマさんもご一緒にいかがでしょうか!! あ、ネルネさんとロクコさんもご一緒いただければ!」

ワタルが身を乗り出すように言ってくる。近い近い近い。離れろ。

「だから、どこに行くんだよ。それが分からなきゃ良いも悪いも言えないだろ。あと近い。離れろ」

「おっと失礼。ネルネさんに浮気を疑われる距離でしたね」

と、離れるワタル。

あと男同士で浮気を疑われるとか言うんじゃない、俺とお前の間にあるのは友情だから。多分。

……いやネルネがもしやそっちの者なのか?

性癖を否定はしないが、ナマモノはやめとけよナマモノは。

「……というか勿体つけるなよ、行き先を言わないのはわざとか?」

「おっと。バレましたか、さすがケーマさん」

「こんな程度にさすがもなにもあるかよ、不自然すぎだろうが。ほらさっさと答えろ」

「おやおやせっかちですね。まぁいいですけど」

と、ワタルは一枚の紙――ハクさんからの命令書をつきつける。

「ワコークへの調査及び討伐依頼の協力、です!!」

「ほう、ワコークか」

ワコーク。和の国、という話だとかなんとか。

確かにワタルは以前より日本の情報を求めてワコークに行きたがっていたっけ。ついに念願叶ったというわけか。……そりゃ勿体つけて自慢もしたくなるわけだ。

「だがそれにネルネだけならともかく、俺やロクコを同行、っていうのはどういうことだ?」

「……ん? そこはケーマさんはともかく他2人、というところでは?」

「何言ってんだ、恋人と旅に行きたいとかそういう感じだろ?」

「まぁそうですが」

特に取り繕うことなくワタルは認め、ソファーに座る。

「ケーマさんを誘うのは、ケーマさんもワコークに興味があるんじゃないかと思いまして」

「ないと言えば嘘になるが……ワコークとなると長期だし、ネルネを出すだけでも穴がデカい。俺とロクコも、となると仕事の大穴がどうやっても塞がらないぞ?」

「そのための補填もハク様からいただいてますよ! 金貨100枚です、どうぞ」

そっとテーブルに金貨袋と手紙を置くワタル。

手紙である。封蝋には勿論、帝国皇室のマーク。ハクさんのいつものやつ。

「なにその手紙」

「……ハク様からのお手紙です。補填について書かれているそうです」

気まずそうに目を逸らしながらワタルは答えた。

……えーっとなになに。

「前払いで金貨100枚の譲渡、及び、ミーシャとドルチェさんとアメリアさんをバイトとして宿に送る……だと?」

「四天王のうち3人もこの村で働いてくれるそうですよ。これで穴埋めもバッチリですね。……金銭的な損害が出た場合は勿論追加で補填していただけるそうです。また、旅費や経費もハク様持ちですよ。お小遣いもくれるそうです」

むしろ四天王3人が抜けた穴は大丈夫なのか、と思いつつ、各組織毎で1人ずつ抜けても大丈夫な程度にはちゃんと備えられてるんだろう。

……

いやいやいや。

「ハクさん何考えてるんだ……怖っ」

「まぁ、確かにいろんな意味でやりすぎな気はしますね……? 帝都冒険者ギルドのギルドマスターやら諜報部の長やらにバイトさせるとか、色々とおかしいというか……」

「いやいやいや」

これ何かを探りに来ている。間違いない。だって人員が本気すぎる……!

村を空けるのも怖いぞ。……いや実際はソトの力でいつでも戻れるし連絡とれるわけだけど……

「できれば、凄く、断りたいんだが……?」

「既に予定の調整は終わってるそうです」

「なに、これ断れない話だった? それなら先にそう言えよワタル……」

「……いやぁ、普通に行きたいと言ってくれたら気分よく行けたかなって」

ワタルなりの気遣いだったらしい。

「微妙にいらん気遣いをしおってからに。……とりあえず、この金貨100枚から1,2枚つかって冒険者ギルドでバイトを雇うとするか」

「え? ミーシャさんとドルチェさん、アメリアさんがバイトでくるのに?」

「ワタル。お前は突然畑違いの仕事――例えば村長としての書類仕事をしろと言われて十分に働けるのか? むしろその3人より村人の方がウチの宿のバイトに詳しいぞ」

というか、現状ロクコの作ったゴレーヌ村立『勇者ワタル告白記念公園』のバイトもいるし、ウチからの仕事をこなすだけなら四天王3人より村人の方が上という可能性もある。

「ロップに指名依頼出してバイトリーダーしてもらうか」

ロップはゴゾーと合わせてウチの村の冒険者代表だ。

その目があれば、冒険者連中が協力的になること間違いなし。

「Bランクだから指名依頼だと高いが、安心して食堂を任せられる」

「さすがロップさんですね」

「ミーシャあたりが余計な事しなければ、安心だな」

「……それはちょっと不安ですね」

言うなよ。俺もちょっとそう思ってるんだから。

かくして、俺とロクコ、ワタルとネルネでワコークへ向かうことになった。