軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

公園完成

「ふふふ……完成したわね」

ロクコはニヤリと笑った。目の前に広がる憩いの大公園を前にして。

ツィーア山中腹、ダンジョン『欲望の洞窟』上にあたるゴレーヌ村と山の続きの間、台地となっている場所に広がる整備された公園。

隣のドラーグ村に貸し出している 温泉の出る魔道具(・・・・・・・・) と同等のそれにより作られた川と池もある。

森であったここを切り拓き、芝を生やし、ピクニックできる丘を作ったり道を整えたりして、象徴的な大きな樹を植えて、公園周囲を壁で囲い――それらの大規模な土木作業を経て、この公園は完成した。

ツィーアの町を囲う外壁に引けを取らないこの壁は、このツィーア山の森に出てくるモンスターであれば、ドラゴンでもない限りは安全だろう。

正直、ゴレーヌ村より広いし立派だし、ここに新たな町を作って住んでも差し支えない程だった。

「皆、よくやってくれたわ。今日の日当で最後だけど、冒険者ギルドの方にちゃんと預けてあるから忘れずに受け取って帰りなさい。気分が良いから多少色を付けてあげるわ」

目の前の公園から振り返り、後ろに並ぶ土木作業者――大工のクーサンを筆頭に、冒険者ギルドで依頼を受けた者達――に、ロクコは心からの満面の笑みを見せた。

「ああ、ついに完成してしまったんスね……少し寂しいっスけど、誇らしいっス」

「ううっ、これで終わりだなんて……感慨深い! 俺達はやり遂げたんだ!」

「うおおお、奥様! 俺達はこれから何を作ればいいんだ……ッ! 俺達は知ってしまった、整地の喜びをッ! 開拓したぁい!」

ロクコ的には終わったのだからさっさと帰れと言いたいところだった。が、まぁ皆もこの公園の完成を祝ってくれているわけで、完成したこともあって気分が良い。

「仕事だったら公園の警備員や整備の仕事とか出してあげるわよ。……あとはそうね、しばらくしたらあそこらへんに『踊る人形亭』別館でも建てましょうか。公園は良い目玉になるでしょ」

「しばらくってどのくらいっすか、奥様?」

「私とケーマがここでデートしたら、よ!」

ぐっと握りこぶしを突き上げるロクコ。

そう、この公園はロクコがケーマとデートするためだけに作られた。

尚、作業員の冒険者を動員するための依頼料はロクコのポケットマネーである。

(モンスターを召喚して働かせてもよかったが、ぶっちゃけ宿の収入でお金はいくらでもあったため冒険者ギルドに依頼を出した)

それが済めば用済みだ。村人にも存分に使わせてあげよう。

カップルが増えれば夫婦が増えて、夫婦が増えれば子供が増えて、子供が増えればDPも増える。そんな遠大な計画である!

別館の従業員も、半分くらいは村の冒険者を雇うというのもアリだろう。

ロクコの本業はダンジョンだから、別に儲かろうが儲からなかろうがどちらでもいいし。

「にしてもあの大木、どこから持ってきたんすか? このあたり森だったっすけど、あんなデカい木は無かったっすよね」

「伝説の大樹と呼びなさい。あの樹の下で告白して両想いになったカップルは幸せになれる、という伝説のある由緒正しい大木よ」

「ホントよくそんな伝説のある大木を手に入れられましたね……さすが奥様っす」

無論、そんな伝説はこれから生まれる予定である。

あるいは、両想いが成立した時点で幸せだろうので、単に当たり前のことをそれっぽく言っているだけとも言える。

だが、ロクコが帝国の超お偉いさん――ハクの妹であると知っている者達は、実際そういう伝説のある樹をどこからか手に入れて運んだのだろうと認識した。

伝説は 捏造(つく) れる。

ロクコが自信満々に言い切るが故に、この『伝説の大樹』はまさしく『伝説の大樹』となるのだ。

……この大木がダンジョンモンスター(メガトレント。お値段7000DP)なのは秘密である。

「元々、この木の下で告白したら100%、つまり確実にカップルになる、なんて噂もあるのよねぇ」

「え!? 確実にカップルになる!?……あの、奥様。そのあたり詳しく!」

ぽつりと言ったその言葉に、独り身の冒険者が食いついてきた。

「詳しくも何も、言葉のとおりよ?」

「そんな有難い木なのか……すごい。今度、レイちゃんを誘ってみるか……」

「……とはいえ、この地に馴染むまでは100%とはいかないわ。実際に成功する告白を何例もここでしてみせて、この木に覚えてもらえて初めてその伝説が有効になるのよ」

「な、なるほど!」

さすがにレイはOKしない。間違いない。

100%を 謳(うた) ってフラれたらその時点で嘘伝説だとバレてしまうので、ロクコはちょっと確率を訂正した。

「いいこと? この木の前でフラれる前提みたいな告白はするんじゃないわよ。この木が告白失敗を覚えて、告白成功率が下がったらあんたらのせいになるんだからね」

「う、ウス! 肝に銘じるっす!」

「……さて、そういえば今は丁度ワタルが来てたわね」

ロクコは思い出す。ワタルに色々と協力してもらう約束をしていたことを。

実際に公園予定地だった森林の開拓、野生モンスターの駆除を手伝わせたことを。

あとは、完成後の告白成功事例になってもらう約束を果たしてもらうだけだ。

と、本来であれば、ケーマに真っ先に告白してもらいロクコが頷くことで告白成功事例第一号になる予定であったのだが、自分で作らせたこの公園、果たして本当にいい出来なのかロクコは気になってきた。

「やっぱり先にワタルにネルネとデートさせましょう。それで不具合や改善点があったらそれを直して、それからケーマと完璧なデートをすればいいわね。ふふふ」

「奥様。その際の改善作業については、ギルドに依頼を出していただけたら駆けつけますんで!」

「良い心がけよ。その時は頼むわね」

ロクコはニヤニヤと笑った。

この公園が完成した時点でワタルが丁度来ているのも何かの采配――おそらく【超幸運】の仕業――だろう。であれば、やらせるので正解のハズだ。

「……と、折角だし今日は打ち上げといきましょうか。気分が良いから私の奢りよ!」

「やったぁああああああ!!」

「奥様万歳! 奥様万歳!! 奥様万歳!!!」

「さすが村長の奥様だァーーー!! そこに痺れる憧れるッ!」

こうして、ゴレーヌ村私設公園が完成した。

名前は募集中である。