軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

デートの約束

村長邸の応接室にて。

「というわけで、ワタルには新しくできた公園でネルネとデートして欲しいそうだ。頼めるかワタル」

「よろしくおねがいしますー」

ロクコから要請があり、ワタルに頼みごとをする俺達。

拒否権はほぼ無いといっていいし、そもそも拒否する理由が全くないどころか拒否しない理由しかない提案だ。

「ええ、デートならむしろ喜んでさせていただきますよ?」

「あー、それでですね。一つお願いがありましてー」

と、ここでネルネから追加の要求を言ってもらう。

「今回はロクコ様の作った公園での告白成功率を高めるのが目的ですのでー、デート中に私に告白してくださいねー? 伝説の木の下で告白したらとりあえずハイと答えるのでなんでもどうぞー?」

「えっ」

「? 何かー?」

キョトンと首をかしげるネルネ。

「……あの。ケーマさん達の頼みならやぶさかではないですが、ネルネさんはそれでいいんですか?」

「ロクコ様のお願いですし、拒否する理由がありませんよー?」

「いやその、そうでなくてですね」

俺はパシンッとワタルの頭を叩いた。

「黙れワタル。それ以上はここで言わせる事じゃない」

「え、で、でも」

「察せよ。そもそも嫌がるなら俺達がやらせるわけないだろ。……ネルネが拒否していない、それが全てだ」

「……!!」

そう。俺とロクコは「別に嫌だったら断っていい」と言った上でネルネに頼んだ。

つまり少なくとも、ネルネはワタルから告白されても『嫌ではない』のだ。

思考が魔法研究に吹っ切れたネルネにとって、非常に心を許しているといっていい。

やったなワタル。恋が実るぞ。

「告白内容についてはワタルに一任する。後々で後悔するような内容にはしないことだ」

「は、はい……」

こくこくと頷くワタル。……さて一体どんな告白をするんだろうか。

ちょっと楽しみだ。

「面白そうな話をしているじゃないの。私も混ぜなさい」

「げっ、レオナ!?」

――と、そんな楽しそうな雰囲気を、この村に来ているイレギュラーが見逃すはずがなかったのである。

「あ、どもですレオナさん。レオナさんも呼ばれたんですか?」

「いえ、勝手に来たのよ。面白そうな気配があったから……で、事情は聞かせてもらったわ! 愛のあるかないか分からない出来レースで満足なの?」

「そ、それは……」

おい、折角キレイに話がまとまったんだからひっくり返すんじゃない混沌神。

「だからネルネちゃんに私からプレゼントをあげましょう――そうね、私が知ってる激レア魔法のスクロールを1つあげる」

「……ほほうー?」

レオナの提案に、強い興味を向けるネルネ。

「スクロールって錬金術で作れるのよ。だから私が覚えている魔法をなんでもひとつ、スクロールにしてプレゼントしてあげる」

「それはとても魅力的ですねー? それでー、対価はー?」

錬金術でスクロールが作れるのであれば、錬金術の神である 混沌神(レオナ) が作れないスクロールはないだろう。それこそ、神級の魔法ですら。

……しかしこの流れで何の対価もなくタダでくれるはずがない。

「デートでワタルの告白を断ったら、よ!」

「なるほどー、そういうことですかー」

ふむふむ、と納得するネルネ。そしてちらっと俺を見る。

目が『告白を断ってもいいですかねー?』と言いたげだった。

「な、れ、レオナさん!? それはつまり、僕の告白とレオナさんの提供する魔法のスクロール。どちらがよりネルネさんの興味を引けるか――ということですか!?」

「そういうことよ。面白そうでしょう?」

ニヤニヤと笑うレオナ。

「……おいレオナ。ずるいだろそれは」

「あら。ケーマさんにとっても悪くない提案よね? ワタルの告白を断らせるだけで、部下が大幅パワーアップするんだから」

そう。タチが悪いのはそこだ。俺にとっても悪くない提案なのである。

なにせスクロールが一つでもあれば、ソトの【ちょい複製】によって複製ができる。

レオナの持っているレアな魔法を、ダンジョンの配下全員が習得できるのだ。

時空神のソトからもそのあたりを聞いて知っている可能性が高い。

さらに言えば「なんでも1つ」というのは『一覧』を見ないことには選べない。

レオナの持つ魔法の一覧を見ることができるというのは、今後を踏まえても知っておきたい情報である。

ただしそれは、ロクコの頼みである告白成功を投げ捨てて、ということになるわけで。

「……ぐっ……! 本当に底意地の悪い……!」

これはネルネがワタルの告白を受けるか断るかに加えて、俺がロクコの頼みを捨ててネルネに告白を断らせるかどうかという選択を迫られているのだ。

それほどに、『レオナの持つ魔法をなんでも一つスクロール化してプレゼント』は魅力的な報酬だ。

……ここで俺がとるべき選択は――

「よしわかった。その提案を受けてやる。……ネルネ、お前が告白を受けるか、断ってレオナの魔法スクロールを受け取るか決めていいぞ。デートの結果で示せ」

「ほほうー? よろしいのでー?」

――流れに丸投げ! 自分も傍観者となり運命を他人に任せるのだ。

「あら、つまらない選択ね」

「逆に考えたんだ。どっちに転んでも損がないなら、傍観してしまえばいいんだと」

「……いいわ、今回はワタルさんとネルネちゃんがメインターゲットだもの」

ふふん、とワタルを見るレオナ。

「というわけだワタル。……ネルネを落としたければ、せいぜいレオナの魔法スクロールよりも魅力的な告白をしてくれ」

「おおぅ……ええ、わかりました。わかりましたとも。むしろ望むところですよ!!」

うん、ワタルもやる気のようでなによりだ。

……ダメだったらダメで、ロクコには謝っておこう。