軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

勇者三人の飲み会

「レオナさんはどこに住んでたんですか? 僕は関東の方でして」

「あら、日本に帰ったときに会おうとかそういう感じ?」

「いやいやいや。出身地の話とか、こっちの世界の人に言っても分からないですからしたいだけですよ」

ワタルとレオナは早速酒場で意気投合していた。

尚、レオナは17歳ということになっているのでお酒ではなくジュースである。

俺も酒はあまり得意ではないのでジュースだけど。あーカラアゲうま。

ネルネについては一旦帰らせたよ。

ネルネにとっては異世界。せっかく日本の事を話せるのに、会話に混ざろうとして話の腰を折ることになるのは良くないだろうという配慮だ。

俺はいいのかって? ほら、俺は両親が日本人で日本の知識も十分あるんだよ。

あとレオナを野放しにしておきたくないから仕方ない。

「へぇ、ワタルさんは高校生の時にこの世界に来たのね」

「レオナさんはこちらの世界にきてどのくらいですか? 良ければ色々と融通しますよ、これでも帝国で公認されている勇者なので!」

えへんと胸を張るワタル。

だがそいつはお前の大先輩だ。あとで真実を知ったワタルがどういう顔をしてのたうち回るか楽しみだな。

「ふふ、大丈夫よ。私もこうみえてこの世界を堪能してるんだから。勇者スキルの力もあるし、独り立ちしてるのよ」

「……というかそもそも俺を鍛えるためにハクさんが送り込んできた刺客だぞ。間違いなく俺よりも強い、あとで手合わせしてもらったらいいよ」

「おお! そういえばそんな話でしたね。マッサージスキルでどう戦うんでしょうか。こう、自分の体をマッサージして能力を上げたり?」

「相手の弱点もよぉく見えるの。ふふふ」

そう言って目を赤く光らせるレオナ。

あ、これ【超鑑定】使ってんな。堂々と正面から。

「あれ? ということはハクさんの、帝国公認勇者ってことですよね? だったら僕と同僚ということになるんでしょうか?」

「そうねぇ、そういう事になるかしら。私がハクちゃんの所にきたのはつい最近だから、これからは顔を合わせることも増えるかもね」

くいっと果物ジュースをあおるレオナ。念話が飛んできた。

『今までは【超幸運】が情報をシャットアウトすることによって避けてたのよ。失礼しちゃうわね、まるで私と遭遇するのが不幸だと言わんばかりに』

『総合的にはそうだと思うぞ、俺も』

……俺にも【超幸運】があればよかったなぁ。

「もっと日本の話がしたいです。あの、レオナさんはどんな音楽聞いたりしてました?」

「ん? そうねぇ……えーっと……」

回答に詰まるレオナ。

『ちょっとケーマさん、なにか教えて!』

『なんだよ。覚えてる曲でも教えてやればいいじゃないか』

『500年前の事よ、もうほとんど忘れてるわ!』

そっか、レオナは日本で過ごした期間よりこっちで生きてる時間の方が圧倒的に長いもんなぁ。

仕方ないので俺は適当な懐メロを教えてやった。

「――という曲を聞いてたわね。ええ。こっちに来てからは聞いてないからうろ覚えだけど」

「へぇ、ウチの親が歌ってたのを聞いたことがあります。レオナさんもそんな感じで?」

「そっ、そうね、自分ではあまり音楽を選んで聞いたりはしてなかったのよ」

うーんジェネレーションギャップ。

『ちょっとケーマさん! もっと若い子の曲なかったの!?』

『最近の曲とか言われてもよく知らないタイプの人間なんだよ、俺』

というか、今更ながらにレオナは500年こっちの世界で過ごしているなら……500年前の人間ってことじゃないのか?

日本で500年前となると戦国時代じゃん。若い子も何もないだろうに。

『ちがうわよ? 私だって2000年代の現代日本人なのよ?』

『あー、そういえばゲームの話とかはしてたもんな』

『でしょ? あー、そうね。折角だしこっちの勇者にも教えておこうかしら』

【念話】でそう言って、パチンとレオナは手を叩いた。

「そうそう、これは知ってる? こっちの世界と日本では時間の流れが違うの。だから日本では年下だった人がこっちの世界で年上になったりすることもあるのよ」

「おお、よくご存じですね! 僕もそうじゃないかと思ってたんです。過去最も有名な勇者、食の神イシダカの話を考えるとそうなるんですよね」

「そうなのよ。あの人が生きていた当時、日本時間ではイシダカより後に召喚されたのに、こっちの世界ではイシダカより百年も前に召喚された勇者もいたらしいわ」

勇者イシダカ、召喚される際に迷子にでもなってたんだろうか? 百年くらい。

レオナが『こっちの勇者の方が詳しいじゃない』という【念話】を送ってきたが、俺はそのあたりあんまり興味なかったんだもの。仕方ないね。

「イシダカさんの作ってた料理って、どうにも馴染みのある日本の食卓に並ぶような料理だったんですよね。オムレツとか麻婆豆腐とかありましたし」

「イシダカ前後で食文化が数百年進んでたわね。米が無かった分の数のメニューは死蔵されたみたいだけど」

「お米かぁ。……ここのダンジョン、お米ドロップするんですよね。きっと何か日本と繋がってると思うんです。きっと日本に帰る手掛かりがあるはず、と考えている次第で」

ちらりと俺を見るレオナ。

そういえばレオナは宿でお米が出た事に対してはそれほど感動はしていなかった。

精米済みの米が【超錬金】で作れるそうな。1粒ずつだから非常に面倒くさいらしいが。

種籾を作ればよかったのでは? と思ったけど、そちらはなぜか作れなかったらしい。

「ワタルさんは日本に帰りたいの?」

「ああいえ、僕はもうこの世界に骨を埋める覚悟です」

ワタルは他の、日本に帰りたい勇者がいたときのために日本への帰還方法を探しているんだったよな。ご立派なこって。

『――何コイツ、いい人なの?』

『呆れるほどに善人だよ。ちなみにレオナ、日本に帰る方法とか知ってる?』

『そう呼ばれている勇者の殺害方法をいくつか知ってるわ』

500年くらい前には、用済みになった勇者を消すために色々あったらしい。

『ハクちゃんが帝国を作ってからそのあたりは記録から抹消したはずよ』

殺伐としてたんだな500年前。

……俺とワタルはそのころに召喚されなくてよかったわ。