軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レイドダンジョンバトル(9)

ボス部屋で籠城戦を開始し、アンデッドコア達にダンジョンバトルの申請をさせてから1時間。最短の準備期間を終え、ついに最初の犠牲者――695番コアへのダンジョンバトルが開始された。

聖王国に人工ダンジョンとして配置していたダンジョン達にゲートが開く。教皇として各地に作っておいたアンデッドダンジョン。いわば、10番コアが仕込み、育てていた忠実な武器達。

大事にとっておいた武器だが、ここで使わねばいつ使うというのか。相手は 10位以内(テンランカー) の89番達連合軍だ。不足はない。アンデッドダンジョンで敵を各個撃破し、89番の戦力を削ぐ。そうすれば、最後に勝つのはこちらだ。

ダンジョンを殺せば、アンデッドにしてこちらに取り込める。倒せば倒すほど、こちらの戦力が増えるのだ。時間はこちらの味方である。

「【コマンド A(オール) DB(ダンジョンバトル) : A(アタック) 】」

10番コアは、下僕であるアンデッドコア達に総攻撃開始の指令を出す。

準備については、1時間どころではない。89番に攻められ始めてから可能な限り、こちらに戦力を集めていた。

命令を下せばあとは自動だ。アンデッドなので判断力は乏しいが、皆無というわけでもない。こちらはボス部屋の籠城戦に集中できる。

「――【クリエイトアンデッド】」

魔法で侵入者――推定219番コアの 植物戦士(プランツソルジャー) を殺し、アンデッドにして返してやる。これだけで、相手は雑魚で攻めることができなくなり、攻めあぐねる。なにせ、下手に攻め込めばそれがこちらの戦力になるからだ。

故に最適解を考えれば、精鋭が集まるまで待機するしかない。

だが精鋭が集まり切ったらこちらも切り札の一つでも切って対抗すればいい。そして殺した精鋭はこちらの戦力になる。敵が精鋭であればあるほど、アンデッドにしてやった場合にこちらが得をすることになる。……実質的に、こちらの戦力は無限だ。

再度言うが、時間はこちらの味方だ。

こうして時間を稼いでいるうちに、アンデッドコア達が89番の配下を1つずつ殺していくだろう。そうすれば最終的に勝つのは間違いなくこちらだ。

そもそも奴らの侵攻速度は明らかに急いでいるものだった。最初の聖水による攻撃といい、採算度外視で速攻勝負といったところだ。あの聖水の量はかなりの出費だったに違いない。実質痛み分けといってもいい。

おそらく、時間をかけていられない理由があるに違いない。つまり、やはり時間はこちらの味方なのだ。

「それにしても、最初のぶつかり合いで一方的に押し負けたのはかなり痛かった……」

ああ、あの聖水の被害が痛かったのは間違いない。この痛みは是非とも哀れな子羊――695番に償ってもらおう。

89番が寵愛する695番コア。ああそうだ、89番のトドメは695番で刺してやろう。きっと素晴らしい顔をしてくれるに違いない。と、10番コアは暗い笑みを浮かべた。

……さて、 600番台(ラストロット) 程度のダンジョンであればそろそろ8割方は攻略できた頃合いだろうか? なにせ15コアからの同時攻撃だ。単純に物量で圧倒できる。

と、10番コアはアンデッドコア達の情報を確認する。

「【コマンド D(ダンジョン) 66 DB(ダンジョンバトル) : M(マップ) 】……む? どういうことだ、695番のマップが表示されないぞ?」

ダンジョンバトル時の敵ダンジョン地図。侵攻済みの場所が表示されるはずなのだが。なぜかマップにはゲートがある、という情報しか表示されていない。本来表示されるはずの、味方を示す緑の点すら表示されていない。

アンデッドコア側のマップでは問題なく表示されているのだが……

「不具合か? 1度にこれほどの数を使ったことは無かったからな……ふむ、そういうこともあるか」

ならば直接目を送り込むか、と10番コアは一体のゾンビをアンデッドコアのダンジョンに送り込み、ゲートへと向かわせる。元々は動物型コアだった洞窟型ダンジョン。

そこにあるゲートに、10番コアは首を傾げた。

「む? ゲートの向こうが真っ暗だ……さては、ダークゾーンか」

あらゆる視界を制限するダークゾーン。黒い霧のような、立体的な闇の空間だ。

ダンジョンバトルのマップは、攻め込んだモンスターが地形を認識した時点で更新される。そのため、ゲートの直後に視界を制限するダークゾーンがあれば、少なくともゲート越しの視界でダンジョンマップを更新されることはない。

だが、1歩でもダンジョンに足を踏み出せばその足の感覚で床が認識され、マップに反映されるはずだ。

「まさか、1歩も踏み入れられないデストラップというわけでもあるまい」

たとえトラップがあったとしても、15コア全部合わせれば1500匹を超える数で侵攻したのだ。ただでさえタフなアンデッド達で。……仲間の死骸を踏み抜いて進めるはずである。

「となれば、アンデッドコアの侵攻でマップが表示されないのは闇神のいやがらせか? フン、流石に少し派手にやりすぎたかもしれんな」

こうなれば直接、10番のゾンビで確認するしかあるまい。そう思い10番コアは自身が操るゾンビをゲートへと進ませた。

直後、真っ暗になるゾンビの視界。ダークゾーンに入ったのだから当然だが――

「―― 反応消失(ロスト) だと? 即死罠を隠していたか」

10番コアは舌打ちする。どうやら的確に殺されたらしい。再度ゾンビを召喚し、送り込む。

「……くっ、また 反応消失(ロスト) か! ええい、【コマンド A(オール) DB(ダンジョンバトル) : S(セット) 】」

再度の反応消失に、今度はアンデッドコア達にモンスターを準備させる。15コア同時に攻め入る中にそれぞれ10番コアのゾンビを紛れ込ませれば、流石にあちらに目を届けることができるだろうと。

「【コマンド A(オール) DB(ダンジョンバトル) : A(アタック) 】!」

15箇所同時侵攻。さあ防げるものなら防いでみろ――と、全部隊一斉にゲートをくぐった直後。

「……は、は? ばかな! 15隊全部が 反応消失(ロスト) だと!?」

どうなっているのだこれは。と、10番コアは頭を掻きむしる。人化したことにより生えている白髪がはらりと抜け落ちた。

「まさか、闇神の妨害!? くそっ!」

アンデッドコアという、本来のルールに反した存在を使用したことによる懲罰。10番コアはその可能性を思いつく。

ハッ、とここでダンジョンメニューを開く10番コア。そのメニューにあるGPの項目を操作し、手持ちのGPから1000ほどを闇神へと送りつける。聖王国で教皇として生活し、長年貯め込んだGPの一部だ。

そして『父よ、これで勘弁してください。せめてまともにダンジョンバトルを』というメッセージを要望として送る。

すると、数秒後に闇神からメッセージが届いた。『やぁ10番。なんのことだい? 僕は何もしていないよ』と。

「嘘をつくな! こんな事、闇神の仕込みだろう!? 他に考えられるか!!」

更に要望欄に『ダンジョンバトルのゲートに不具合があるようです。これは父の仕業でしょう』と送りつける。

……返信だ。

「『それは僕本当に何もしてないから。神に誓って、嘘はついてないよ』……だと?」

上級神である闇神が『神に誓って』と言うからには、嘘であったら自身の存在が消えても良いと言うほどの事。おそらくそれは真実なのだろう。

そして、メッセージには続きがあった。

「『1000GPも払ってくれたから教えるけど、これは不具合じゃないし君達のダンジョンバトル相手の仕業だよ』……? は? ということは、つまり…………89番の仕業か!?」

10番コアは、現在起きている現象が89番による反撃であると、そう思い至った。