軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョンバトル前日の壮行会

さて、いよいよダンジョンバトル前日。

なんやかんやで結構な準備期間があり、だいぶ冒険者たちもウサギダンジョンに馴染んだと言えよう。

ちなみに特に語ってはいないが、地味に帝都の観光とかもしてたのでわりとのんびりした準備期間であった。うん、【転移】めっちゃ使えるわ。便利。魔力もごっそり使うけどほっときゃ回復するし問題ない。

で、俺達は例によって? ハクさんの主催で壮行会を行っていた。

今回はミカンたちのダンジョンがメインなので、ハクさんの離宮とかではなく『ウサギの楽園』にケータリングする形での開催だ。なので、今回は俺達の他にもちゃんとアイディとミカン達が参加している。

ちなみに裏方ですらないスポンサーのハクさんからしてみれば、イベントの前夜祭みたいな雰囲気すらある。すっごい楽しそうにスパークリングワイン(俺提供)を傾けていた。

「正直、勝っても負けてもどちらでもいいのよ」

とか言っていた。確かにここまでお膳立てしてくれれば配下への救援としては十分だろう。むしろピンチになってから庇護を求めてきた 相手(ミカン) にはやりすぎなくらいだ。

となれば、あとはハクさんの言う通り勝っても負けてもどちらでもいいのだ。負けたところでハクさんが失うものは援助した10万DPくらいのもの。ハクさんにとってははした金ならぬはしたDPだ。

あ、このうち7万DPくらいが手つかずで残っている。うち1万DPは『サモンスケルトンのスクロール』と交換で出した『クリエイトゴーレムのスクロール』代な。……このまま使わなければ残りは俺達への報酬ということになる。勝っても負けても。

「ねぇロクコ。本当にダンジョンバトルで戦わなくて良いの? ロクコが出ないのであれば、私が敵を独り占めしてしまうわよ?」

「しないわよ。というか、さすがに独り占めは難しいでしょ、ダンジョンバトルなんだし」

「そうね、打ち漏らした分はロクコが片付けていいわ。どちらが多く 斃(たお) せたかで勝負ね」

「アイディは本当に勝負するのが好きなのねぇ。まぁしないけど。私は後ろでドンと構えてるのが性に合ってるのよ。総大将だからね!」

「ロクコ、将というのは自ら前に出て指示するものよ? 常識でしょう」

「それはアイディの考え方が狭いだけよ。これからの総大将は後方から指示出すスタイルがトレンドなの!」

「……ロクコは 偶(たま) によく 理解(わか) らない言語を話すわね。異世界語?」

「うん!」

のほほんとしたそんな会話も慣れたものだ。

準備期間を一緒に過ごしたことでアイディの 為人(ひととなり) についてもだいぶ分かってきた。

一言でいえば、脳筋。だが悪い子じゃぁないんだ。悪い子じゃ。

ただ決闘厨なだけで。

……あれ? なんかウチのダンジョンのあたりに気が合いそうなヤツが1人いるような。セツナっていうイヌとウサギのハーフ獣人なんだけど。

「おーいケーマ、食べてるきゅかー?」

テーブルの上をぴょこぴょこ駆けるオレンジウサギ、ミカンに呼ばれた。

「うん? ミカンか。食べてるよ。お前も食ってるか?」

「んきゅ! もちろんきゅよ。明日はいよいよダンジョンバトル、たくさん食べてたくさんがんばるっきゅよ! ほら、サラダ食うきゅよ」

と、ミカンはウサギな前足のくせにトングを器用に使って俺の皿にサラダを乗せた。気持ちニンジン多目だ。ウサギ用なのでタマネギ抜き。

「肉はあっちっきゅよ、ここらはボクら用にサラダスペースだから」

「ああ。ちゃんとそのあたり考慮されてるあたりさすがハクさんだよな」

「んきゅ。……ってこらー! それはスープだからあぶねーっきゅよ、あそんじゃだめー!」

「えー?」「黄色いプールじゃないの?」「だしがとれちゃうとこだった」

ちゃんとミカンのとこのイッカクウサギ達とかも参加してるのはいいけど、食べ物で遊ぶんじゃないぞー? うーん。賢さ足りてるのかな……まぁいいか。

とりあえずニクはこう肉をもぎゅもぎゅしているし、イチカはイチカで食べまくっている。前回と違って今回は【収納】と言う名の巨大タッパーがあるので余り物のお持ち帰り体勢も十分だろう。

……おおっと、ハクさんがやってきた。にこやかな笑顔が怖いです。ぷるぷる、ぼく悪いダンジョンマスターじゃないよ。

「ケーマさん」

「……はい、なんでしょうかハクさん?」

「ふふ、そう身構えなくても良いじゃないですか。それで、明日の勝算はいかほどでしょう?」

「うーん、そうですねぇ……まぁ、相手がよく分からないので5割くらいってところで」

「あら。ケーマさんならもっと大胆に『9割は勝てる』くらい言うかと思いましたが」

「はっはっは、過大評価しすぎですよ。でもこちらとしては勇者も借りれるわけですからだいぶ勝率は高いと思いますよ」

そう、明日のダンジョンバトルに合わせてワタルは既にウサギダンジョンに居る。

今日ウサギたちが接待した冒険者たちの中にちゃっかり紛れてウサギを撫でていたので間違いない。体を摺り寄せるウサギたちに「これが……庇護欲……!」とか言ってたし、明日は頑張ってダンジョンを防衛してもらおう。

「ま、勇者をぶつけられるだけでも当初の目的である『一泡吹かせる』は確実に遂行できるでしょう。なのでご安心を……といったところでしょうかね」

「ふふふ。多分、6番コアもあちらサイドで見に来ると思いますが、きっと驚くでしょうね。666番コアも戦力に数えていいんだから、折角だし勝ちなさい。私が驚くようなギミックも考えてるのでしょう? ケーマさんの発想は今から、いえ、前々から楽しみにしてたのよ」

あんまり期待されても、今回はそう大したギミックは仕込んでいないんだけど……ハードル上げないで欲しい。

「……まぁ、負ける気は無いですよ。確かに今回ちょっと試したい戦術を実験してみた感はありますけど」

「ふふふ、それでこそケーマさんです。そうですね……この戦いで勝利したら、何かご褒美をあげましょう。神の寝具の情報とかどうです? 勿論、ケーマさんの知らない情報を用意しましょう」

「……まぁ、負ける気はないので」

せいぜい頑張るとしよう。うん。やることは変わらない。

「ハク姉さま! ケーマが勝ったら私にもご褒美が欲しいです!」

「あら、それなら私も何かお 強請(ねだ) りしたい 処(ところ) よ」

ご褒美と聞いて、そんなことを言いつつロクコとアイディが割り込んできた。強欲な奴らめ。

「ふむ……まぁ私の権限で何か用意しておくわ。勝てたら、ね」

「やった! 勝つわよケーマ!」

「ふふ、私が居るのに負けるとでも? その時は指示が悪いのよ。精々上手く采配なさい、ロクコのマスター」

やれやれ。とにかくやる気なのはいいことだ、と思うことにしよう。

……

でもよく考えたらハクさんのご褒美って嫌な予感がするな?

気のせいだと良いんだが。