軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

564番コアの準備

#Side 564番コア

まったくもって面倒臭いことになった。

どうして俺様がこのようなダンジョンバトルで進退を賭けることになるのだ?

俺様はただ、魔王派閥の一員として帝国領にちょっかいをかけに行っただけなのだ。

帝都やらという、89番、ハクと父から名前を頂いていたあの裏切者がもつ人間牧場に向かう途中、落とし穴に落ちた。

平原に落とし穴。そして中にはウサギ型ダンジョンコア、629番コアが居た。

これほどの雑魚がこんな魔国領に隣接している場所で落とし穴を作っているとは。裏切者の派閥に違いない。

先に落とし穴で仕掛けたのは向こうである。であれば、これは宣戦布告だ。

さすがに629番コアは見ただけで木っ端すぎると分かるが、裏切者派閥であれば処分しても良いだろう。

こんな雑魚が全力を出したところで俺様を楽しませることができるかは微妙なところであるが、ダンジョン全てを蹂躙してやろう。とはいえ、一応裏切者に一言くらいは言っておかねばな……あるいは裏切者の手により多少は骨のあるダンジョンになるやもしれん。

……そういえば、そろそろ集会の時期か。最後の晩餐くらい食わせてやろう。よって処分はその後だ。せいぜいあがくがいい。

……そう考えたのが間違いだったのか。俺様は集会で6番コア様に呼び出された。

どうもあれは裏切者派閥ではなかったらしい。だが、今はもう裏切者派閥に入ったとなれば同じことではないか? よく分からん。叩き潰せばいいだけじゃないのか。

その話をして、6番コア様はどこか疲れたかのようにため息をつかれた。お疲れなのであれば、この集会で存分に休養をとっていただきたいところだ。

そう思っていたら、6番コア様に告げられたのだ。この勝負に勝たなければ俺様に未来はない、と!

だが6番コア様直々に「未来はない」と言われて驚いたが、そもそも相手はウサギ型コアという貧弱タイプ、それも600番台である。バフォメット型コアの500番台な俺様と比べたら天と地ほどの差があり、負けるはずもない。

実際、この程度の相手に負けるようでは実力主義の魔王派閥において未来はない。事実しか言われていなかった。

しかしそこに、お嬢――6番コア様の寵愛を受ける、666番コア――が加わった。これはお嬢が6番コア様に進言し、それに6番コア様が許可を出した形だ。

「まさか勝てないとは言うまいな?」と言う6番コア様に、俺様は頷く事しかできない。ここで退けば負けを認めるようなものだったからだ。

……同じ魔王派閥同士を競わせて、腕を磨く口実にしようというのだろうか。そして、状況は変わっても俺様の進退を賭ける事を取り下げないのは、俺様を本気にさせて、その俺様の本気をお嬢に経験させようということか。

おそらく6番コア様の思惑はそんなところだろう。

しかし、しかしだ。お嬢は魔王流でも天才、いや天災と名高い実力者。その力は既に100年は先輩である俺様と並ぶ『師範代』である。

そのお嬢が敵に加担するとなれば、俺の勝率は100%から70%くらいに下がるだろう。……油断できなくなった。

万一負けようものなら俺の未来は閉ざされる。……これでは俺様のメリットが全く無いではないか!

まぁ良い。勝てばいいのだ、勝てば。たとえお嬢が敵に回っていたとしても、むしろ敵であれば蹂躙した後に自分のモノにしたところで何の問題も無いだろう。

む? そう考えるとこれは俺様に対する褒美ともとれるのではなかろうか。あの生意気なお嬢を好きにできるという。いや、そうに違いない。なんといっても俺様は優秀な悪魔系コアなのだから!

さすがにじっくり楽しめるのは一晩が限度で、その後は6番コア様に止められるだろうが――

……ふふふ。お嬢を好きにできるのか。悪くない。いい加減配下のサキュバスにも飽きてきたしな。

そう考えればこの面倒なダンジョンバトルにもヤル気が出てくるというものだ。色んな意味で。

「564番さま、ダンジョンバトルはどうされるのですか?」

ベッドで、俺様の配下のサキュバスが俺に尋ねてきた。こいつは副官として特別に強化した俺のお気に入りでもある。最近は治りきらない傷も増えたし、少し飽きてきてもいるが。

「相手は666番さまだけではないのでしょう?」

「ククク……そうだな。油断はできん。が、666番の他は知能の低い動物よ。666番が使うサモンスケルトンには俺様のサモンスケルトンをぶつければ良いだけ。……そうだ、お前らが【魅了】してやれば簡単に裏切るんじゃないか?」

「ふふっ、それは面白そうですね。動物系は知能が低いから【魅了】がよく効きますもの」

そう、スポーンモンスターのように自我の薄いヤツを裏から操作しているなら別だが、大抵の魔物には【魅了】が刺さる。

悪魔として【魅了】を司るバフォメットである俺に、たかが動物ごときが相手になるはずもないのだ。あのウサギ型コア及びそのモンスターは敵として勘定に入れるまでもない。

「89番さまの援軍も、【魅了】で何の問題もないでしょうか?」

「……ああ、よく覚えてたな。俺様も忘れかけていたぞ。そう、たしか援軍として万年最下位として有名な695番コアも出てくるらしい。……魔王派閥のコアではないから、戦場に立つことは無いだろうというのが残念なところだな」

仮に前線に出てこようものなら見せしめに蹂躙してやったものを。人化せずに人型であるあのコアならどれほどいたぶっても人型のまま楽しめるだろうに……む? 少し寒気が。いかんな、体調不良で負けたなどとなっては洒落にならん。俺様は【ファイアーボール】を暖炉に打ち込み、部屋を少し暖めた。

こういう細かい点に注意がきく俺様は実に優秀なコアだな。6番コア様が褒美をくださるのもよく分かるというものよ。

「……無能の人型コアが出してくる魔物だ、せいぜいミノタウロスが限度だろう」

「ゴブリンとオークなんて並べて出してきたら、最高ですね」

「クハハ! それは傑作だな!」

可能性としてはあり得るな! そうなったらこちらのモンスターを1匹も使わずに勝てるかもしれん。

むしろ味方としてカウントしたいところだ。

「あと、89番さまの支援となれば、冒険者を引っ張り出してくるかもしれませんね」

「ほう。だがそれも――」

「――ええ、【魅了】のいい餌食です」

ニンゲンなどは特に、欲の深い動物だ。それを満たす幻想、つまりは【魅了】であっさりと転がる。もっとも全員が魅了耐性のマジックアイテムなり精神力を兼ね備えていたら、戦うくらいはできるだろう。

だが耐性アイテムは高価であるし、ニンゲンの精神力など所詮吹けば消える蝋燭の火のようなものだ。全員が戦えるはずもない。

つまりはこれらも敵戦力としてみなすことが馬鹿馬鹿しい。

「要するに、俺様の勝利はほぼ万全。お嬢――666番コアの対策のみに集中していればいいというだけの事よ。負けるとしたら、そこだけだろう」

「さすが564番さま。……それで、666番さまへの対策としてこうしてベッドに居るのはいいのですか?」

「クックック、最近ニンゲンどもの間でオフトン教なるものがあってな。その教えに『明日できることは今日せずともよい』という言葉があるのだよ。良い言葉だと思わぬか?」

「ふふっ、ニンゲンもたまには良いことを言うのですね」

こうして俺様はダンジョンバトルに向けて優雅に構えるのであった。