軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハクさんの離宮

ゲートを抜けると、そこは倉庫だった。

鎧があったり、壁に剣や槍などが飾られている。

棚に木箱があり、ガラクタのように剣や盾が無造作に放り込まれていたり。

……箱の中の剣ですら宝石とか埋め込まれててめっちゃ高そうなんだけど。

一足先にゲートを潜っていたロクコとハクさんがこちらを向いて待っていた。

連れてきたニクは俺の服をきゅっとつまんでいる。無事持ち込み成功したようだ。

「一応、私の趣味部屋……倉庫にゲートを繋げてもらいました。……残念ながらこちらをお貸しするのは今回のDPに計上されるので貸せませんが」

そうか、趣味部屋……となると、箱の中のもコレクションか何かか。……これ、全部魔剣か? 魔剣収集の趣味があるのかハクさん。

お手製じゃない魔剣とかすごい気になるな。借りるのとかはさておき、一度しっかり見ておきたい。

「おお、この槍見覚えあるわ。ダンジョンバトルのときにファイアウォール張ったやつですよね、ハク姉様!」

「うぐっ!……え、ええ。そうね」

さりげなく無意識に古傷をえぐるロクコ。えぐい。

「……とりあえず、寝泊まりする部屋を用意してありますので、こちらへ」

苦笑いのハクさんに連れられ、離宮を歩く。

全体的に白い、まるで神殿のようだ。崇め奉られているんだろうか。

「ここよ、ロクコちゃん」

「おお……広い!」

うちの宿のスイートルームと同じくらいの広さがあった。天蓋付きの白い、クイーンサイズなベッドだ。いいな、憧れちゃう寝具だ。薄く透けるカーテン……ヴェールっていうのかな。これまたいかにもな感じがかえってうれしい。

枕も敷布団も掛布団も、羽毛かな? ふっくらしていて、とても柔らかそうだ。ダイブしたい。そんでぐっすりすやすやしたい。

ベッドの他? ああうん、高級そうだね。よくわからんけど、照明とかも魔道具だろうしさ。あ、前に売ったマッサージ椅子もあるね。

いやしかしさすがはハクさんの用意した部屋にある寝具だ、高級な布団だと一目でわかるね。これは 寝がい(・・・) がありそうだぜ。見ただけで眠たくなってきやがる!

「あ、ケーマさんとそこの奴隷はこっちです」

え、という間もなく少し離れたところにある、殺風景な小さな部屋に迎え入れられた。

ひゅぅ、四畳一間の殺風景。荷物を出しただけの元倉庫部屋という感じだ。

布団の一つもありゃしない。枕もないとか、この世界に初めて来た時を思い出すね。

「ちょ、ちょっとハク姉様、さすがにこの扱いは……」

「あら。寝てたら仕事しないのでしょう? ケーマさんは」

「……や、えっと、そ、そんなこといったかしら?」

ロクコは、あ、そういえばそんなこと前に言ったなーって顔してた。

そうか。お前のせいかロクコ。

いや、そうでなくても俺がロクコと同等の扱いを受けられるとはこれっぽっちも期待してなかったけど。

「ねえ、さ、さすがにオフトンくらいは」

「なんなら毎日ダンジョンに帰って貰えばいいでしょう?」

そうだね、むしろハクさん的にはロクコだけおいて帰ってほしい感が出まくってるね。いいけどさ。いいんだけどさ。多少隠してくれてもいいんだよ?

「……まぁ部屋貸してもらえるだけ上等だよ、うん」

「あ、なんならうちの部屋にくる? ベッドも3人くらいなら寝れそうなサイズだったし」

「あらごめんなさいロクコちゃん、あのベッド、ダンジョンコア専用なの」

「そうなの?! うう、それじゃあ仕方ないわね……」

ロクコ、そりゃたぶん嘘だぞ。ダンジョンコア専用とか絶対ハクさんが添い寝したいだけじゃないか。

「部屋はこれでいいとして、ダンジョンはどこに作ればいいんです?」

「やる気があって嬉しいわ。それじゃあ会議室に行きましょう。地図を用意しています」

と、今度は会議室へ向かう。

やはり白を基調とした部屋であったが、その中央には立体模型の地図……帝国全土、さらには隣国……魔王領の地図も併せた地図があった。

「……精巧な地図ですね。今まで見たのはもっと大雑把な感じでしたが」

「ええ。地図は重要な戦略情報ですからね。それにクウサツ……過去の勇者がもたらした知識を参考に、ハーピィを使って空から直接記録させましたから」

異世界の知識、地味に活躍してるんだな。と感心しつつ、あらためて地図を見る。

うちのダンジョンがあるツィーア山も帝国領土内だ。山の大きさから逆算するに……うん、かなりデカイな。北海道何個分くらいあるんだ?

さらに、うち以外にも数十ヶ所のダンジョンの場所が地図に載っている。帝都付近にいくつもあるのは、全部ハクさんのダンジョンか。

「それで、ダンジョンを作るのはこのあたりでどうでしょう? 地形も豊富ですし、それを利用していろいろできます。……それに、先住モンスターの集落が近くにありますし」

ん? 先住モンスターを使うのは今回のルール的にOKなのか?

と思っていたが、ハクさんはにっこり笑う。アリらしい。

「候補は絞っておいて、あとは実際に下見して決めたほうがよさそうですね」

「ええ、今のところこの山がおすすめですよ。山なら、今まであなたたちが培ってきたテクニックも使えるでしょう?」

そう言ってハクさんは地図の、帝都から少し離れたところを指さした。

魔王領にほど近い山だ。……ああ、牽制するようなダンジョン作れって?

作ったあと見張り拠点にでもするつもりかな。ってか、今回作ったダンジョンってそのあとどうするんだろ。

「あ、今回作ったダンジョンは、勝者は後輩が貰えて、敗者は先輩が回収って形になります。なので、張り切って作ってくださいね?」

負けたらそこに見張りダンジョンができるのでOK、勝ったらそこに見張りで俺らがいけるのでそれもまたOK、と。つまり、どっちに転んでもハクさんに美味しいんだなここは。

「ねぇハク姉様。ケーマが何も言わなくても考えてることがわかるの?」

「ええ、顔を見ればわかります。私、人との交渉は慣れてますからね」

「私も頑張ればわかるようになるかしら。ケーマの考えてることくらいはわかりたいわ」

「……ロクコちゃんにはそんな技能必要ないわよ?」

ふむ、とロクコは思案した。

「つまり技能がなくてもケーマと一心同体ということ……私の考えはケーマの考え?!」

「最近のロクコちゃんはある意味考えが読めなくなってきたわね……」

「ふふふ、成長してますから」

ドヤ顔でふんすと鼻を鳴らすロクコ。うん、相変わらずでなによりだ。

ハクさんも安心顔で頷いた。

「というわけでケーマ、このあたりでいいんじゃない? ハク姉様がおすすめしてくれた場所だし」

「まぁ待て。まだ候補だ。どういうダンジョンを作るか、ってのも関係するからな」

というわけで、地図で候補を絞り込み、翌日から実地へ向かって予定地を視察することになった。

……めんどくさいが、負けるわけにもいかないので仕方ない。

ちなみにその日は、俺とニクはダンジョンに帰り、ロクコはお泊りしていくこととなった。