軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お迎え

「……マスター、私……ッ ご期待に、ぞえで、みぜまずっ!」

レイに5万DPを渡したところ、より一層の忠誠を誓われた。なんか感動で泣いてた。

そういう意図もあったにはあったので、まぁ良しとしよう。

そして翌日。

闘技場にゲートが開き、ハクさんがやってきた。

「こんにちは、ケーマさん……ふふ、なかなかに 趣(おもむき) のある部屋じゃない」

「いらっしゃいませ、ハクさん。いやぁ、こんな闘技場を作ってみたものの、モンスターは揃ってないんですよ、お恥ずかしい」

ちなみにこれ、運動場くらいの広さはあるが、お隣の『火炎窟』の隙間をぬってギリギリの大きさだ。もっと地下に掘り進めばぶつからないぞ、とイッテツは言っていたし、今後はさらに下に掘り進めて行く予定だ。

「それで、今回のチーム戦だけど……受けてくれるのよね?」

「……ええ、受けさせていただきますよ。ただ、ロクコからは聞けなかった点で確認したいところがありますが、よろしいですか?」

「せっかちね。……報酬、よね?」

ハクさんが質問の内容を先に言う。だがそれだけでは不足だ。

「それと、敗北時のペナルティについて聞かせてください」

にっこり、当然よね、とハクさんは頷いた。

ハクさんはこういう頭使うジャブを普通に打ってくるから苦手なんだよなぁ。

「ええ、当然気になってると思ったわ。……敗北時については、そうね。持ち込んだアイテムやDPが消費されるだけ、ってことかしら。今回はいわば私たちの代理戦だから、あなたたちに直接のデメリットはほぼないわね」

なにも無い? それは、つまり、負けてもいいということだろうか。

いや。そんなはずはない。だってハクさんだもの。

「私も負けたところで別に気にしないわ。気楽にやりなさい」

「そして気楽にやって負けたら、ハクさんはどうするんです?」

「……後輩を教育する許可が出るのよ、お父様から」

あ、これ勝たなきゃ。

つまり負けた時の罰則は、ハクさんに好き放題されるってことじゃねぇか。

「そして報酬ね。勝利したチームには、コア1人につきお父様が『欲しいもの』を2つ、くれるそうよ」

「……それは、なんでも2つ、ということで?」

「いいえ、お父様が選んでくださるとのことよ? 光栄ね」

『父』を知らないのでいまいち光栄なのかどうかわからないが、「大好きなアイドルから脱ぎたて靴下を手渡される」に脳内変換してみると少し気持ちが分かった気がした。きっと俺だけにしかわかるまい。

……神の寝具、とかないかな。あったら欲しいんだけど。

そんなことを考えていると、ぽん、とハクさんが手を叩いた。

「そうだ、こんな部屋なわけだし、なんなら一戦します? 冒険者として」

「遠慮しておきますよ。これからダンジョンマスターとして一仕事あるもんで」

「あらそう、残念。でもこれを上げましょう」

くすり、とハクさんは笑い、胸の谷間からカードを取り出した。

ほんのり暖かいそのカードを受け取ると、それは冒険者ギルドの身分証こと、冒険者カードだった。名義は俺になっている。

「再発行しておきました」

「……あの、なくした覚えとかないんですが?」

「私、冒険者ギルドのトップですから」

「ついでにランクがBになってるんですけど?」

「おめでとうケーマさん、貴族の仲間入りですね」

そう、そのカードで俺はランクBとなっていた。

そして冒険者はBランクから貴族、として扱われるのだ。

ただし貴族の爵位としては……公爵とか伯爵とか男爵とかあるけど、そういうののさらに下。冒険爵とかいう独自の爵位らしい。1代限りのにわか貴族ではあるが、一応貴族として扱われる。本人に実力もあるということだしね。

さらに功績を積み上げればちゃんと子供に継がせられる立派な貴族にもなるんだとか。

というか、試験とかすっとばしていいのか。いいんだろうな、トップがいいって言ってるんだから。

しかもDランクの古い冒険者カードも手元に残ってる。……うまく活用しろってことだなコレ。

「本来なら年間で金貨5枚の納金義務が発生しますが、特例で免除しておきましょう。無料が心苦しいならクリームソーダ1杯で良いですよ?」

「はぁ……あとで奢りますよ。で、なんでいきなりBランクなんですか?」

「私の家に入るにあたって、平民だと困りますから。一応貴族でないと」

ああ……そりゃ帝国の祖、ハク・ラヴェリオの離宮だもんな。日本でも昔、天皇様に謁見させるために象に貴族の身分を与えたとかあるし、似たようなもんか。

ついでにハクさんのダンジョンに潜るに際してもDランクとBランクじゃ大違いか。

「はいこれ、ロクコちゃんの分。……ああ、一応ケーマさんのパーティーメンバーの分もあるから活用なさい」

「おお、私が冒険者に……! ありがとうハク姉様!」

ロクコにカードを手渡しし、残っていたニクとイチカの分のカードをこちらに投げて渡すハクさん。というか、ロクコはハクさんの妹って触れ込みなんだから冒険者になる必要ないんじゃないか?

「ロクコちゃんに普通に爵位あげちゃうと、それはそれで面倒なことになるのよ。……私の妹だから」

ハクさんが俺の心を読んだように言う。

ああうん、普通に皇帝の血縁……皇族ってことになるもんな。相当に高い地位でないといけないし、そもそも存在自体が厄介事だ。うん、面倒把握。

「それじゃ、貴族になったことだし……私の家にご招待するわ、ロクコちゃん」

「はいっ! ほら、ぼさっとしてないで行くわよケーマ!」

そう言ってロクコはハクと手を取り合い、ゲートを潜っていった。

……うん、俺も行くとしよう。