軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ランズハーヴェストの確保

「ふーん……やっぱりあのモンスターくらいは余裕でさばけたってわけか?」

ヒカルはこっそりと回復魔法を自分に撃ち込みながら話をする。「 全能の筒(リヴォルヴァー) 」での「 爆火光線(フレイムレーザー) 」で空を飛んでからの「 業火の恩恵(フレイムゴスペル) 」による奇襲は慣れてきて落下ポイントまで今回はドンピシャだったのだが、それでも銃を撃った反動で腕に深刻なダメージがあるのは変わらなかった。世の中に作用と反作用がある限り、この問題は解消されそうにない。

ラムとレッグのふたりは武器も手にしておらず余裕たっぷりだ。

しかし、

「「ありがとう」」

と、聞き間違いもないほどに彼らが言ったのにヒカルは目をぱちぱちさせた。

「え?」

「「あのまま戦いに入ったら、防衛チームに大きな被害が出ていた可能性がある。一発で仕留められるならそのほうがいい」」

「あ、ああ……」

意外だった。高ランク冒険者で、しかも金に物を言わせて情報を集めるような行動をする男たちである。

だから「あんな鳥くらい余裕で倒せた」くらいは言われるだろうと思っていたのだ。

「いや……被害が出なくてよかった」

「「この鳥はどうする。君が持って行くのか」」

「……これは廃棄したほうがいいだろうな。汚染されている」

ヒカルがそう言うと、ラムとレッグは目を見開いた。

「「どうしてわかる?」」

「魔力を探知できるヤツはパーティー内にいないか?」

「「いる」」

ラムとレッグが呼んできたのはピンク色の髪をしたふわふわした感じの女の子——一応それでも黒い鎧を着ている、というか、着させられている女冒険者だった。

「この魔力、どう見える?」

「えと。赤です」

「黒は?」

「かすかに黒っぽく見えます」

「かすか、か……」

ヒカルの目にはかなりハッキリと黒い筋が入って見えている。

彼女のソウルボードを見てみる。

【ソウルボード】ライチ

年齢28 位階29

35

【生命力】

【自然回復力】1

【スタミナ】3

【免疫】

【疾病免疫】2

【毒素免疫】1

【魔力】

【魔力量】3

【精霊適性】

【水】2

【筋力】

【筋力量】1

【直感】

【直感】1

【探知】

【魔力探知】1

ふーむ、「魔力探知」1か……と思ったヒカルは、

「ぶほっ!?」

年齢28!? 28歳なのこの人!?

(全然見えない。僕と同じかそれ以下に見えるくらいなんだけど……)

ライチという冒険者をまじまじと見つめてしまった。

「あ、あのぅ……私がなにか?」

「ご、ごめん。なんでもない」

「「ライチに惚れたか? だがなシルバーフェイス、こいつはこう見えて年が……」」

「ラム様。レッグ様。それ以上言ったら怒りますよ〜!」

「「はははは」」

なんだか思っていた以上に仲が良さそうなパーティーである。

「……とりあえず、黒っぽさを少しでも感じたら食べないでくれ。汚染については聞いているだろ?」

ヒカルが聞くと、ラムとレッグはうなずいた。

すでにトカゲは掃討されつつあり、トカゲからは黒い魔力は感じない。トカゲは竜石でビッグサイズになったとかそういうわけではなく、もともとこれくらい大きい種族なのだろう。

(コウがいればニオイですぐに教えてくれるのに……面倒だな)

多くの船が接岸し、上陸を始めている。

「「そうだ、シルバーフェイス。君に聞きたいことが——む?」」

振り返ったラムとレッグはそこに先ほどまでいた仮面の少年がいなくなったことに気がついた。

「「すごい隠密能力だな」」

と、素直に感心ししつつも——一言こうつぶやいた。

「「……皇帝陛下が気にかけるのもうなずける」」

ヒカルはラムとレッグのソウルボードを確認していた。

【ソウルボード】ラム=ライトハウス

年齢24 位階35

2

【生命力】

【自然回復力】2

【スタミナ】3

【知覚鋭敏】

【視覚】2

【筋力】

【筋力量】2

【武装習熟】

【剣】4

【敏捷性】

【瞬発力】2

【柔軟性】2

【バランス】2

【精神力】

【心の強さ】4

【カリスマ性】4

【魅力】3

【直感】

【直感】1

【ソウルボード】レッグ=ライトハウス

年齢24 位階35

2

【生命力】

【自然回復力】2

【スタミナ】3

【知覚鋭敏】

【聴覚】2

【筋力】

【筋力量】2

【武装習熟】

【剣】4

【敏捷性】

【瞬発力】2

【柔軟性】2

【バランス】2

【精神力】

【心の強さ】4

【カリスマ性】4

【魅力】3

【直感】

【直感】1

とりあえず思ったのが、「さすが双子。間違い探しかよ」であり、次に思ったのが「『魂の位階』が意外と低いな」ということだった。

「剣」のレベルはさすがに高いが、それ以外はやはり「カリスマ性」と「魅力」だろう。

大人数のパーティーを従える力はそのあたりにありそうだ。

ヒカルは仮面を脱いで、ラヴィア、ポーラとともに上陸作業に当たっている。「ヒュージツインズ」は勝手な行動をしたとして——命令外の行動だったようだ——軍の幹部たちに怒られているがそれでもヴィレオセアンの兵士を救ったことで処罰は下されないようだ。

トカゲに飲まれた兵士は大ケガを負ったものの、死者はゼロだった。

「第1中隊、第2中隊はランズハーヴェストを占領せよ!」

『ドリームメイカーの強者たちよ、周囲に結界を展開するぞ!』

ヴィレオセアンの2中隊が廃墟と化しているランズハーヴェストに踏み込んでいく。一方でドリームメイカーの部隊は街の外郭に魔除けの結界を設置しに向かう。この結界はビオス宗主国が研究した成果で、希少な魔術触媒を使うもののモンスターを退ける効果があるという。

ランズハーヴェスト掃討作戦は一昼夜に及んだ。

その間、荷下ろしをしていたヒカルたちへと森のモンスターが襲いかかってきたが、準備万端の軍隊がそれらを退けていく。

だが巨大モンスターが出現すると手に負えないことがあり、それらは高ランクの冒険者である「極虎」や「ヒュージツインズ」が出向いて倒していく。

夜間の襲撃には「愉快痛快」のセンクンが張った罠が活躍した。地上も空中も対応するすさまじい罠で、モンスターの叫び声によって安眠を妨げられるという問題はあったものの身の安全は確保されていた。

翌日の昼になるとランズハーヴェストのモンスターは一掃され、海上の軍隊は一度、すべて地上に降り立つことができた。

『よく来てくれました、シルバーフェイス』

『疲れているんじゃないのか? ずっと質問攻めだったろう』

『それでも——希望を持てる今はすばらしいですよ』

少々疲れた顔をしているドリアーチのところへヒカルがやってきたのは、夜更けになってからだった。

そこはランズハーヴェストの広場に建てられた天幕だった。

初戦は問題なくうまくいったので、新大陸到着と戦いの勝利とでみんな興奮して酒盛り状態である。

だが軍属や指導者たちはそんな余裕もなく、実際に降り立ってみての情報を事前の情報とすりあわせるのに忙しい。

つい今し方までドリアーチは各軍の指揮官とともに会議をしていたのだ。

『それで、 おれ(・・) を呼び出した理由は?』

ドリアーチとの約束で、情報告知用の掲示板にある内容を貼り出したらそれはドリアーチからの呼び出しだということにした。

指定した暗号は「XYZ」なのだが、その意味をドリアーチは知らない。ヒカルも特に説明する気はない。

『……シルバーフェイスの意見を聞きたいのです。あなたは以前この街に来ましたね?』

ヒカルはうなずく。

あのときはコウといっしょだったが、今、彼はいない。

『そのときと比べて違いはありませんか?』

『違い? そんなことを聞きたいのか? ジンとワカマルともいっしょに来たが』

『ジンには聞きました。ワカマルさんは、ヴィル=ドリームにいますので……。ですがジンは船に残っていたのでしょう?「わからない」と言っていました』

『そうか。正直に言えば特に変わっていないと思う』

『…………』

『どうした?』

ヒカルがたずねると、ドリアーチは戸惑ったように言う。

『……あまりにあっけなくランズハーヴェストを確保できたので逆に不安に思ったのです。これほど簡単にできていいものなのか、と』

『なるほど』

『私が不安な顔を見せるわけにはいきませんが、あなたになら構わないでしょう?』

『それは……信頼されたものだね』

『大事な我が国の出資者ですから』

冗談めかして笑ったが、ドリアーチの不安は拭い切れてはいないようだ。

『……おれも気をつけてみよう。なにかあったら教える』

『ありがとうございます』

そうしてヒカルは天幕を出て行った。

(不安……か)

しかしドリアーチの不安はよそに、その2日後、最初のルーツに到達したクインブランド皇国軍は犠牲を出すもののルーツを制圧、竜石の確保に成功し、一気に「宝探し」ムードが盛り上がっていくことになる。