軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

啓き示す者

【ソウルボード】グレイヴィ

年齢62 位階28

16

【生命力】

【自然回復力】3

【スタミナ】1

【免疫】

【魔法耐性】3

【疾病免疫】4

【毒素免疫】2

【魔力】

【魔力量】9

【器用さ】

【器用さ】8

【道具習熟】

【薬器】2

【精神力】

【心の強さ】12

【信仰】

【聖】8

【回復魔法】2

【支援魔法】2

【カリスマ性】4

【直感】

【直感】6

そう表示されたソウルボード。62歳——これまでの話し方はかなり年老いた印象を受けたが、意外と若い気がした。老け込んでいるのか、あえて年老いたフリをしているのかのどちらかだろう。

「直感」が4だった冒険者ギルドのマスターであるウンケンもソウルボードを発動したヒカルを警戒していた。なんらかの反応を察知したのだ。「直感」6ともなれば常人が感じ取れない多くのものがわかるはずだ。

それにこの名前は——。

「どうした? 入らんのか」

老人に勧められ、ヒカルはラヴィア、ポーラにうなずいて見せてから——「隠密」を解除した。

「お邪魔します」

「——ほう、まだまだ子どもではないか。てっきりある程度年の行ったベテランかと思っておった」

にこにこしている老人は、むしろの敷かれた小屋の中にヒカルたちを通すと、丸太を切っただけのイスに座るよう促してくる。ヒカルたちはそこに腰を下ろすと、老人は縁の欠けたカップを差し出す。薄い茶がゆらりと湯気を上らせた。

「……ご老人、あなたは僕らが来ることを知っていたようですね」

「ふむ。その前に——そっちの、上等な修道服を着ているお嬢ちゃんは『塔』の人間かいの?」

老人に聞かれたポーラは、

「い、いいえ。私はちょっと前まで教会で育ちましたが、今は回復魔法使いとしてヒカル様と行動を共にしています」

「ヒカル——そうか、君はヒカルというのか」

「はい。彼女たちはラヴィアとポーラ。ふたりとも僕の旅の連れ合いです」

「ふむふむ」

目尻のシワを深くして老人はにこやかにうなずく。

「さ、お茶が冷めないうちに飲みなさい。君たちが来ることはな、夢に見ておったんじゃ」

「夢に?」

「新たな出会いがある、と……時折こういう夢を見る」

「そうですか。ではあなたの同僚だったスコット=フェアーズ司祭が亡くなったことは夢に見ませんでしたか?」

「!?」

老人——グレイヴィは茶の入ったカップを取り落とし、テーブルの上に茶がこぼれる。

「い、今、なんと……」

「スコット司祭は亡くなりました」

「おお、そうか……そうだったか……なんと嘆かわしい……」

立ち上がったグレイヴィ老人は小屋内をうろうろする。その間にハンカチを出したポーラがテーブルを拭いていた。

「ヒカル、スコット司祭、って……」

「ああ。僕が見つけた手帳の持ち主だよ。そこには『赤の司祭』だったグレイヴィ氏が罷免され『灰の修道』となったと書かれていた。——もっとも、地方に派遣されるはずだったグレイヴィ氏はこのスラムで啓蒙活動を行っていたようだけど」

「……君は、どこまで知っている?」

「たいしては知りませんよ?」

ヒカルは肩をすくめながら知っていることを話した——が、そのほとんどは手帳の受け売りだ。手帳そのものは別の神父に渡して欲しいとスコットの遺言にあったので、ここでグレイヴィに渡すことはできない。それに地下の研究所に忍び込んだことも、ヒカルの能力の説明になってしまうから言えない。

スコットとは、「情報提供者」の関係であり自分は冒険者だと取り繕っておいた。グレイヴィはヒカルの説明を素直に受け取ったようだ——彼は最初からヒカルを疑おうとしていない。「夢」とやらのせいかもしれない。

「むむ……スコット司祭は敬虔なる信徒であったからこそ、不確かであることが許せなかったのだろうな……」

「あなたはどうしてアギアポールに?」

「この町からはみ出した者たちのことを、ワシは知っていた。彼らを導く人間が必要ではないか」

「その行為は『塔』の主の意に背くことになるのでは?」

「覚悟の上……老い先短い人生じゃ、これまで信仰に生きてきた。今さらどうして変えられよう」

重い覚悟だ、とヒカルは思った。これほどの思いを持っている人間がいるというのに、教会は妙な方向に行こうとしている。

彼が老け込んで見えるのは身元をカムフラージュするためかもしれない。

「しかし君は、どうしてワシの名前を知っておる?」

「まあ、勘のようなものです」

「勘……?」

「——それより、あなたが話していた説法は、教会が広めているそれとは違うようですが」

ヒカルが言うと、ポーラも食いついてくる。

「そうです! 私、あのようなお話は聞いたことがありませんでした」

「ふむ……君も教会の信徒かね? ワシの知っている内容は、ワシが子どものころに教わっていた内容じゃよ。それが今の教皇聖下に変わられてから教本が変わったのじゃ」

「教本が変わった?」

「この世界の成り立ちには不可思議な点が多い。それを、あるがままの史実を記したのが旧来の教本、教会なりに解釈したのが現在の教本だと言えようの」

現在の教皇は、なにかを隠す、あるいは信者の視線を別のところに向けさせるために教本を改編したのだろうか?

「ひょっとして『天ノ遣』系職業を探すようになったのも今の教皇になってからですか?」

「いや、それは昔からじゃな。正確に言えば先代教皇聖下は『天ノ遣』を持っている人物を客人として招待して、様々な話を聞いていたという。かごの鳥のように囲うようになったのは現教皇聖下からじゃが」

「なるほど……」

現在の教皇は、世界の成り立ちの根幹にある「神」について強い興味がある。「天ノ遣」は明らかに「神」「龍」に関する職業だからだ。地下で行われている聖魔武具や封印の研究も根っこは同じなのかもしれない。

問題は、その知識を使って なに(・・) をなそうとしているのか——。

(ろくなことじゃなさそうだな)

ヒカルが推測していると、

「それで……ヒカルくん、スコット司祭はどのように亡くなったのだろうか」

「詳しくはわかりません。ですが、『塔』の地下にある研究施設に潜り込んだようです。スコット司祭が存命であれば稼働している魔導具が、稼働しなくなり、僕は彼の死を知りました」

「……研究施設、か」

「グレイヴィさんもご存じですか」

「いや……それとなくスコット司祭が教えてくれたことがあったんじゃが、ワシは彼には『近寄らないほうがいい』としか言われんかった」

それからグレイヴィと話をした。グレイヴィの知っている「教え」について知りたければ過去の教本がいちばんよく、残念ながらここにはない。教本は教会図書館にあるはずだが、アギアポールの図書館や古い田舎の教会くらいにしか残っていないだろうと教えてくれた。

「ヒカルくん。君たちは若い……危険なことにはあまり首を突っ込まぬようにな。アギアポールにはそもそも人が住むべきではないのじゃ。聖ルザルカも、聖ビヨンドも……他の聖人たちもみな高い魔力を持った特殊な人々だったのだ。アギアポールから信者を遠ざけようとしたが、信者は聖人のそばで暮らしたいからと街を作ってしまった」

「そう……なんですか?」

「これは『塔』の中でも一部の者しか知らぬ話ではあるがな……」

確かに聖ルザルカの話で、信者がルザルカについていきたがったがルザルカはそれを断ったとあった。その後、信者は結局ついてきてしまうのだが、それは信仰の深さをアピールする話にすり替わっている。

聖ルザルカの意図が「危険だから近づくな」という意味だったとしたら——。

なぜ、危険なのか?

(地下の魔法陣)

あれが、気になる。

「さて、そろそろ君らも帰りなさい。朝食が終わればここに人が来ることもあろう」

「はい、様々なお話ありがとうございました」

「構わんよ。もっと話していたいくらいじゃ……君らからは不思議な空気が感じられる。貴く、それでいて、無垢なる気配が……」

龍であり神に近いコウのことだろうか?

「ここを支援してくれる人もあるが、ここも長くはないとワシは思う。やがてこの場は露見し、街から離れよと駆逐されるかもしれぬ」

「……わかりました。では、お元気で」

「君たちの未来に祝福があらんことを……」

ヒカルは「集団遮断」を使い、ラヴィア、ポーラとともにグレイヴィの前を去った。彼がヒカルたちを早く帰そうとし、他の者に会わせなかったのは、この場所が危険だからということもあるのだろう。

この集落は、アギアポールから追い出された者たちのたまり場なのだ。中には罪を犯して逃げてきた者もいる——。

「お兄ちゃん、ここのスープ、結構おいしいよ」

「そうだな。来てみてよかったかも」

街へと戻る途中、新たにやってきたらしい2人の兄妹を見かけた。兄のほうは少々傷を負っているようだったが元気そのものだった。浮浪児のように見えるそのふたりが、シューヴァの目撃した、虐げられていた子どもだとはヒカルは知らない。

歩きながらヒカルは決意する。

地下空洞の断層——「青の騎士」は魔法陣を通り抜け、潜っていった。モンスターと戦ったというようなことを教皇の秘書官に話していた。

魔法陣の下にはなにかがあるのだ。

それがなんなのかを確認するには——。

(僕が潜るしかない)