軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

春編5話「合同依頼」

レオ兄さんへ

今日は同じくソロで冒険者をやっているルカと依頼を受けに行きました。

ルカとは色々と共通点もあって、一緒にいてすごい気が楽だしいいやつです。

連れている従魔の犬も、もふもふで大人しくてめっちゃかわいい!

*──*──*──*──*

『ルカー、ギルド行くけど一緒にどう?』

客間のルカは朝が早いのか黙々と装備の手入れをしていたが、こちらを向いて微笑む。

『行く』

簡単な朝食を摂って出掛ける……けど、昨夜も思ったけどルカは元々の出自がけっこういいのかもしれない。

貴族かそれに近しいところか。仕草だけを見るとそのへんの冒険者と同じなんだけど、立てる音の数と大きさが極端に違う。

これは幼い時から身に付けた動作なんだろうな。散々覚え直しをさせられた貴族名鑑にもいないし、訳アリか。

そうだとしたら少しは警戒もしとかないとな。悪いやつではなさそうだけど、貴族繋がりがあれば大体が面倒なことになる。

『ありがとう、リシアン。こんな風に誰かと一緒にギルドに行ったことがないから、すごくうれしい』

誰か少しでもルカのことを疑った俺を殴ってくれ。

これは純真な生き物だ。血縁だとか言い出す変な貴族が湧いたら潰しとこう、と決意する。守らないといけない、この笑顔。

討伐と採取ならどちらが得意かなどと話しながらギルドへ向かう。

ルカはわりと討伐メインで俺は採取がメイン……たまに魔獣素材がほしいときに討伐はついで扱いだもんなぁ。

どうしようかな、と思っていたらルカが俺に合わせてくれると言う。

初めて来たギルドだし、流れが掴めたら依頼は何でもいいとのことでお言葉に甘える。

ポツポツ話しながら決めていたけど視線がうるさい。

「何なの、お前ら」

ジロリと見ると固まる冒険者たち。早く仕事をしろ。こっち見てる暇はないだろ。

「……いや、聞いたことがない言語が気になってな?」

「孤高のソロは分かるが、何でリシアンも?」

やらかした。誤魔化さないといけない。

「……古代言語の一種で、俺は少ししか分からない。ルカは色んな国を回ってるからじゃね?」

「確かになぁ。知り合いから聞いたけど、孤高のソロは北方から帝国まで渡り歩いたらしいもんなぁ……すげぇよ」

よっし、誤魔化せた。ルカには先にギルドを出てもらおう。

「で?リシアンはどこで?」

誤魔化せてなかった。

「……貴族の嗜みっ」

ポカンとする冒険者を背に俺もギルドから出る。

咄嗟に出たのは懇意にしている王弟の口癖である「王族の嗜み」に似たもので……。便利っちゃあ便利だな、うん。今後もたまに使わせてもらおうと思った。

ルカと二人乗りをしてまだ雪の残る山奥へと進んで行く。深層部とも違うこの場所は、基本的に誰も通らない道だ。

しんと冷たい空気にシルフィーが楽しげに吐く息が白い。

『リシアン?地図にも載ってない道だけど、どこに向かっているの?』

『竜の墓場』

そう答えると目を見開いていた。

切り立った崖に挟まれたその場所だけに、丸い空間がぽつんとある。

遠目から見ると雪とは区別がつかない真っ白な谷間は近付くと歪な何かが積み重なっている。

風魔法で積もった雪を払い除けると、ポツポツと黒い固まりが現れる。

今冬に、力尽きた魔獣だ。

「竜の墓場」は終わりの近さを悟った魔獣たちが集まって出来た自然の墓場。竜なんて大層なものはいないけれど。

同じような場所は各地にあり、これは薬師たちがつけた通称。

ここで朽ちて化石化したものを竜骨と呼び、薬の原料にしている。

今年はいつもより多い魔獣を一処に集める。本格的に春になり、雪解けすると腐敗が始まるから……その前に燃やしておかないといけない。

そうしないと冬眠明けの飢えた魔獣に荒らされてしまうからな。

「火乃」

火属性の精霊を呼び出して、そっと炎で包ませる。

『雑っ魚だなー、もっと派手に燃やせば一瞬で終わるのにな!』

そしてお前のことは呼んでない。

「うるせぇ、そんなことしたら素材の価値がなくなるっての」

ルカの契約精霊だがそこは鷲掴みにして黙らせる。

『トゥーリの、手伝いはいる?』

何か出来ることはないかと目を輝かせているルカ。

高温だと後に素材として使い物にならなくなること、この燃やす匂いにつられた魔獣が出る可能性があることを伝える。

それを聞いて

『討伐なら任せて。トゥーリ、シルフィー、魔獣が近くにいたら教えて』

と張り切っている。

『あ、いた』

耳をピクリと動かしたシルフィーを追ってルカも駆け出す。足音一つしない見事な走りっぷりを見送る俺たち。

「……何か、いた?」

音に敏い風乃もゴルディも揃って首を横に振る。ソロのBランクってすげぇなと思いながら燃やすことに注力した。

作業が終わる頃にはホクホクとした笑顔のルカが帰って来た。

目当ての鳥型魔獣の魔石も採れたとのこと。

俺も目当ての竜骨の採掘も終わったことだし、お互いに目的は達成した感じ。

『パーティーを組むと効率がいいね、リシアン』

と笑顔のルカだが、俺はそっちの手伝いはしてないんだけど。

そう伝えたら『誘き寄せてくれたのはリシアンだから』だって。

なるほどと思って依頼用紙と成果とをギルドへ一緒に提出したらフツーに却下された。

「何で?!」

「何でじゃないだろう、お前ら!」

怒られているのは伝わっただろうルカも首を傾げている。

「あのな、お前らがやったのはただの単独行動だからな?近くにいただけで合同でやったこととは見做さない」

ギルド長は今日も声がデカい。

「いやいや、俺は燃やしている間に寄ってくる魔獣をルカが討伐してくれたから。お陰でそっちは気にしなくてよくて楽だったんだよ?」

いそいそとルカも

「リシアンが魔獣を誘き寄せた。探す手間が省けた」

そう書いた板を見せている。

「……お前らは」

グッと何かを言おうとして口を噤む。しばらくブツブツ言ってるかと思えば、カウンターの中へ連れ込まれた。

「上に行くぞ。本来Bランクにすることではないが、冒険者のパーティーとは何かを学んでもらう」

「はぁ?!俺そろそろ店開ける時間なんだけど!」

ズルズルと逞しいギルド長に引きずられる俺を、ルカは何だか楽しそうに見ながら着いてきていた。

◇──◇──◇──◇──◇

『ひどい目にあった……』

薬店の仕事もあるのに、謎の座学まであって超疲れた。

『そう?俺は楽しかった』

満足そうにしているルカを見るとボヤくのも憚られる。

ルカが聴こえないこともギルド長にだけ伝えられたのはよかったけどさぁ。

あまり他の人には知られたくないっぽいし。

他の冒険者ギルドにいた時は、基本的に筆談で過ごしていたそう。不思議な空気感を纏うルカだから、ほぼ話さなくても……話したそれが謎言語でもスルーされる。

ここのギルド長はグイグイくるタイプだからな。ルカに感じた違和感を直球で聞いてた。

そして本格的な板書での座学が始まった。いや、この部屋って……有事のときに地図を張り出して作戦会議するとこじゃん。何てムダな使い方をしてんだよ。

広い部屋に三人。逃げ場もなく……パーティーとは何かを叩き込まれた。

他の冒険者が「今日は薬店、開いてないのか?」とギルドに聞きに来て助かった。

『今度はちゃんと合同依頼、受けようね』

笑顔で言ってくるルカに了解と身振りで伝えて、薬店に急ぐ。

「リシアン、孤高のソロのルカとは随分と気が合うみたいだな?」

冒険者からそう聞かれて確かに同じやつと連日、行動をともにすることってあんまりないなと思う。

ルカは穏やかだし、喋り方も何だかおっとりしていて……

「あ、兄上にちょっと似てるのかもしんない」

と言ったら「また兄上かよ」と笑われた。うるせぇな、あの手のタイプにどうも弱いらしいから仕方ない。

「それにしてもルカってやつは噂では聞いてたけどすごいな……どうやって 銀影狼(シルフルウールフ) を従魔にしたんだか」

「待って。今、何て言った?」

聞き逃がせない単語が出てきた。

「?いや、リシアンはよく撫でてるよな。銀影狼だよ、あの伝説とも言われる北国の魔獣。よく気軽に撫でたりするよな。俺はお前のこともいっそ怖ぇよ」

……銀影狼はさすがに知ってる。あの、北国に棲息している魔獣でこっちでいうところのお蚕さん的存在。北国の守護獣だと貴族教育で習った。

「……魔犬という可能性は?」

「ない。犬と狼はさすがに別モンだろ、見りゃ分かる」

*──*──*──*──*

レオ兄さん、追記事項です。

ルカの連れてる従魔が、犬だと思っていたら狼でした。狼は辺境にはいない動物なので、どう接すればいいか分かりません。王都なら資料も探しやすいと思います。いくつか見繕ってくれない?

*──*──*──*──*

果たして狼にはどう接するのが正解なのだろうか……。

わしゃわしゃ撫でてもされるがままだし、ルカも「シルフィー、よかったね」なんて言いながら止めないし大丈夫だと思ってた。おやつとして色々あげたけど、犬はよくても狼はダメかもしんないし。

困った時のレオ兄さん。王都なら狼についての資料もこっちより探しやすいだろう……送ってもらおう。

「その咆哮、魔を退ける。鋭い眼光と牙を持つ北国の守護獣」そう伝えられている銀影狼がまさかもふもふのシルフィーのことだとは誰も思わないって……。