軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40 相変わらずの仲間達

「ああよかった! フィストさん、目が覚めたんですね!」

「流石の回復力ね。思ったより起きるのが早いわ」

フィストの絶叫を聞いて、続いて現われたのはヴァーシプとリルスだった。

セーラの後ろから顔を覗かせた二人は、それぞれ水の張ったタライと包帯などの治療用具を持って居る。

「お前達、いつの間に。西の残党は?」

「あ、アイアリスさんから、聞いたんですか」

「あの子いなくなったと思ったらやっぱりフィストの所へ行っていたのねぇ」

そんなのあっさり潰してきたわよと、リルスが楽しげに笑う。

ルミネを抱っこしたセーラは、何故か扉の前で立ち止まったままだ。

「わたくしたちがこの村に着いたのは、数時間ほど前の事です」

「アンタがねんねしていたのと同じくらいねぇ」

セーラを追い越して、するりとフィストに近付いたリルスが、断わりなくフィストの上着をひん剥いた。

同時に、アスターが声にならない声を上げて額を壁にぶつけた。突然の脱衣に顔を逸らした結果、勢いがよすぎてぶつけたらしい。

「おい何すんだ一声かけろ」

「いいじゃない鍛えられた素敵な筋肉よ? どこに出しても恥ずかしくない身体している癖に勿体ぶっちゃって……ああ、勿体ぶってなかったわね。うふふ。この身体を撫で回して貪った男がいるなんて、うふ。うふふ。昂ぶるわぁ」

「おいこの変態放り出せ。私が殴る前に」

人に見せる為に鍛えた身体ではない。同性だからって撫で回す許可も出していない。

あと触り方が卑猥で不快だった。

「ち、治療の邪魔ですリルスさん!」

タライを置いたヴァーシプがリルスを追いやり、フィストに巻かれた包帯を解いた。リルスに上着を剥ぎ取られて気付いたが、左の脇腹にも傷がある。しかしそちらも引きつる感覚はあるが、今日負った傷の感覚はない。

この感覚は馴染み深い物だった。

そう、旅の中で聖女の奇跡に助けられた時と同じ。

ヴァーシプに包帯を替えられながら、セーラを見上げる。彼女は慈悲深く微笑んだ。

「怪我も治療も、解毒も済んでいます。矢傷なので内部の損傷を優先して治療しました。表面がまだ塞がっていませんが、動きに問題はありませんわ」

フィストは腹の底から息を吐いて、深く頭を下げた。

「助かった。ありがとう」

「お気になさらず。救いの手を差し伸べるのがわたくしの役目です」

――本当に、聖女らしい聖女だ。

「フィスト起きたの? 俺もそっち行きたい」

――勇者が関わらなければ。

居間から聞こえた声に、場が凍る。

真っ先に動いたのはアスターだった。慌てて壁伝いに移動して、声の主が部屋に入る前に扉を閉める。途中で革の鞄を蹴飛ばして転びそうになっていたが、転がるように部屋の外に出た。

(――あの鞄)

床に放置された鞄は、恐らくアスターの。

大事な荷物だろうに蹴飛ばして飛び出したアスターは、急ぎすぎて自分の髪を扉に挟んでいた。

「何すんの? フィスト起きたんでしょ? 退いてよ」

「治療中だからダメだ。あとここから先は 俺(夫) 以外の男は入れられない!」

「良いじゃん顔見るくらい。退いてよ」

「ダメだ!」

しつこくフィストに会おうとする勇者に、微笑むセーラの目が凍る。

その腕には、艶やかな金髪にご執心なルミネがいるので、フィストは心底ハラハラした。

(こいつらがいるなら勇者もいるとは思っていたけど、どうなってるんだマジで。タイミングよく助けられたのはわかったが、なんでセーラがルミネを抱っこしているんだ!)

流石に、彼らがいるという事は、敵の制圧は終わっている。繰り返すが能力は確かなので。

助かった。それは確かだ。

しかし何故、ヤンデレがルミネを抱っこしている。

誰か止めろと思ったが、勇者を引き留めるアスターくらいしか止め役がいない。無理だ。

「おお、終わりました。これでもう、だ、大丈夫、です」

「おう、ありがとな……」

そんな空気の中で真面目に包帯を巻いていたヴァーシプが満足げに頷く。上着を着たフィストはゆっくり立ち上がり、動作確認した。多少引きつるが、問題ない。

そんなフィストを見て、セーラはにっこり微笑んだ。

「では、 表に出ろ(お話をしましょう) 。フィストさん」

「ははっ」

顔は盛大に引きつった。

そしてフィストはそのまま、家の外へと連行された。

居間に留まらなかったのは、単純に人数が多くて入りきらなかったからだ。

いつの間にか家の前には簡易的なテーブルと椅子が並べられ、テーブルには温かなお茶と果物が並んでいる。フィストの家に果物はなかったので、村からの貢ぎ物だとすぐにわかった。

という事は、これを用意したのも村人達だろう。

勇者達が来たとびっくりして、大歓迎した姿が目に浮かぶ。

きっとセーラは聖女として、フィストの治療をしながら村の治療もしただろう。

病魔は落ち着いたが、ぶり返す不安は残っていた。そこに聖女が現われて治療して行けば、村人達は素直に感謝して歓待したに違いない。

「色々聞きたい事はありますが、まずは襲撃についての詳細をお話しましょう。フィストさんを襲撃していた者達は、わたくし達で捕らえましたわ」

セーラの説明に、フィストはだろうなと頷いた。頷いたフィストの頬を、セーラから返されたルミネが叩く。

部屋を出てすぐ喜色満面で飛びついてきたリンジを見て、セーラが即座にフィストにルミネを抱っこさせた。その瞬間、リンジと目の合ったルミネが大号泣。

フィストとアスターが慌ててあやし、リンジはふてくされた顔をして離れていった。そんなリンジを確保して、セーラは満足そうに彼の隣に座る。

珍しい事に、ルミネはリンジに人見知りをしていた。

目が合えば泣き喚くので、リンジはルミネに近付かないようにしていたらしい。

そんなリンジの行動を見て、セーラはリンジがフィストに近付かないよう、抱っこしながら寝室の前に待機していたようだ。

赤子の相手は、孤児院などを訪問する事の多い聖女ならばお手のもの。リンジには泣くがセーラには泣かなかったので、ルミネは彼女に抱っこされてご機嫌だった。

(――そこ、懐くのか)

フィストはとても複雑だった。

ちなみに、ルミネはリルスにも泣くので、セーラはリンジとリルスの距離が近付いた瞬間リルスにルミネをパスしていた。ヴァーシプには無反応らしい。

(おい。うちの娘を勇者の女避けに使うな)

フィストはげんなりしながら、彼らが勇者を見て泣くなど無礼だと言い出さないヤンデレと狂信者でよかったと心から思った。