軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

男子、三日会わざれば刮目して見よ

ブロイドワン帝国軍・本隊間近

安定の死屍累々だ。

たかが中型を含んだぐらいのドラゴンじゃノイエの敵じゃない。

運が悪いことにノイエさんが僕にカッコイイ姿を見せようとノリノリで暴れたから、どれもこれもがモザイク無しじゃ見られない状態になっている。

これだったら僕の祝福を渡して消してもらった方が良かった。

「アルグ様」

「お~良し良し」

「んっ」

アホ毛をフリフリさせながらノイエが頬を赤くする。

ここか? ここが良いのか?

「ダメ」

「ん~」

「そこは」

「んん~」

コショコショとノイエの耳をくすぐっていたら彼女の頬が増々赤くなる。

うんやはりノイエは愛らしい。この無表情なのに頬を赤らめて恥じらう様子がたまらなく僕の心を刺激するのです。

と、耳をくすぐる僕の腕をノイエが掴んだ。

「……する?」

「ここは外です。敵国の内です」

「む」

やりすぎたのかノイエがその気になってしまった。

これは僕を自由に走らせすぎるノイエが悪いのだと思います。

「何よりここでするのはね?」

「平気」

こらこらノイエさん? 現状をちゃんと把握しましょうね?

僕がチラチラと辺りの様子に視線を向けるが、何故かノイエはギュッと胸の前で拳を作る。

「全部投げ捨てる」

「止めてやれ。辺りが増々大惨事になる」

「むぅ」

若干頬を膨らませてノイエが拗ねた。

こんな時は膨らんだ頬にキスすれば……ほら簡単に元通りです。

「やっぱりする」

「落ち着けノイエ~」

「大丈夫」

「大丈夫くない~」

慌ててノイエから離れようとするが、彼女が背後から抱きついてくる。

どういうことだ? 逃げようとしてもノイエの体に張り付いたかのように僕の体が動かない。実はノイエは体術の達人だったのか? 違うか。

「魔法を使ってまでとは卑怯な!」

「平気」

「何が?」

「このまま一緒」

「それはそれで色々と怖いんですけど!」

背後に居るノイエは何をする気なの? ねえ? 立ち位置的に逆だよね? とか本当にノイエですか? ノイエの振りをしたホリーお姉ちゃんじゃないの?

ジタバタと抵抗をしているとそっとノイエが僕から離れた。突然支えを失い倒れそうになっても、事前にノイエが僕の前に回り込んでいて抱きしめてくれた。

「危ないだろうに……」

「ごめんなさい」

「ん? ノイエ?」

僕を支えて謝って来るけれどノイエの視線をこっちを見ていない。

彼女が殴り殺した中型ドラゴンの屍の先を見つめている。

「どうかしたの?」

「……あれ嫌い」

「ノイエ?」

珍しいくらいにノイエが拒絶反応を示す。

これは冗談で夕飯を野菜尽くしにした時と同じぐらいに怒っている。

あの時は拗ねたノイエを宥めるのに凄い時間がかかった。僕の体を餌にしても中々食い付かず……食い付いたら丸ごと食べられたけどね。

それに大豆ミート的な物がどれほどの味なのか試してみたかったんだ。

肥満に悩む貴族たちに広めれば意外と感謝されるかと思ったんだけど、確かに美味しいんだけど結果としてソースが肝だと気付かされた。そして美味しいソースはカロリーが高いとも気づいた。

ポーラは喜んで食べてくれたけどノイエはやはりお肉が良いらしい。

どうしてウチのお嫁さんはここまで肉にこだわるのだろうか?

全力でノイエが不機嫌になりそうな理由を思い出したが、現状該当する物はないな。

と、ドラゴンの屍を避けてそれが姿を現した。まさかの帝国軍師だ。

前回の会談の時に見せた弓型のたぶん魔道具を手にしている。

「そんな矢の無い道具で僕らに勝てるとでも?」

「勝てるわ」

凄い自信だな? そんな大層な魔道具には見えないけど?

「何よりこの場所に貴方たちが姿を現した時点で私の勝ちなのよ」

クスリと笑い彼女は引き絞った弓の弦から指を放す。

「死になさい。ユニバンスのドラゴンスレイヤー」

「「っ!」」

僕を庇おうとしたノイエと共に後方へと、違う。ノイエと別れ左右別々に斜め後方へと吹き飛ばされる。

ああ。グローディアがあれは攻撃の武器じゃないって言ってたっけか!

先に地面に着地したノイエが僕の方を向く。

そのスチャッとした奇麗な着地を僕も見習いたい。だって……げふっ!

案の定着地に失敗して尻から着地してからの後方への回転でございます。いつもと同じ程度転がっております。

いい加減受け身でも覚えようかな? いつもこうやって地面を転がるのも辛いのよ本当に。

グデッと地面の上で軽く伸びながら気づく。

ノイエが先に着地したのに僕を抱きかかえに来なかった事実をだ。

おかしい。僕が怪我をする可能性があればノイエは自分の身がどうなろうと必ず来る。

改めて確認するとノイエは僕に向かい進んでいた。けれどその動きは驚くほどに遅い。

「あ~ははっ! どんなに強い力を持っていてもそれが発揮できなければ無意味よね!」

「何をしたっ!」

高笑いしてみせる軍師に起き上がりながら視線を向ける。

先日の残念っぷりは本当に演技だったのか、帝国軍師が余裕綽々と言った感じで僕に笑みを見せた。

「魔法よ。減速の魔法を使ったのよ……分かるかしら?」

「減速?」

言葉のニュアンス的に対象の物体を遅くする。もしくはブレーキをかける感じか? それなら必死に動こうとしているのに遅々として進まないノイエの様子が理解できる。

「前回の会談でそれに魔法が通じることの確認が取れた」

部下が暴走したとか言ったあの時か!

「ならそれは魔法で動きを止めることが出来る」

「確かにね。でもノイエの動きを止められるほどの大魔法をずっと使えないだろう?」

何よりノイエの祝福はぶっちゃけチートだ。今の状況で彼女を殺すことはたぶん不可能だ。

ノイエの祝福は魔法に阻害されないはずだから傷つけられてもすぐに治る。

「ええ無理よ。だからこっちは物量戦よ」

「マジか?」

僕らを囲うようにゾロゾロと帝国兵が姿を現す。ただし兵と言ってもその装備からして魔法使いだ。

魔法使い全てを、この戦場に居る魔法使い全てをノイエの足止めに投入したのか?

「正気か?」

「ええ」

クスクスと笑い帝国軍師が手にしていた弓を投げ捨てる。

「私の敵はドラゴンスレイヤーよ。それを全て殺せばドラゴンを使役する私の敵は居なくなる」

「だからここでノイエを?」

「ええ。それに貴方もでしょう? それとあのオーガもよ」

「そうか」

話は見えた。けれどこの馬鹿はやっぱり馬鹿だ。

「ウチにはそれ以外にもドラゴンスレイヤーが居るけど?」

残念侍モミジさんがまだ居る。それにその一族郎党もだ。

けれど軍師の余裕は崩れない。

「ええ知っているわ。けれどそれらは全て人でしょう?」

「なに?」

優雅に彼女はノイエを指さす。

「そこに居る人の形をした化け物と姿かたちも化け物のオーガ。その2人だけは普通に殺す方法が思いつかないからこうやって大掛かりな狩場を設けたのよ」

「それ以外なら簡単に殺せるって?」

「ええ」

なるほどね。

僕は笑って改めて剣を抜いた。

信じるからな……エウリンカ!

「あら? 貴方の剣の腕前は王弟ハーフレンがゴミ以下だと評価したとか?」

「だからお前は馬鹿なんだよ」

「ん?」

若干イラついた声を発して軍師が僕を睨む。

「男子、三日会わざれば刮目して見よって言葉を知らないのか?」

「何よそれ?」

詳しい意味は知らないけど、

「男っていう奴は、3日もあれば成長するんだよ!」

魔剣で得る仮初ですけどね。

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