軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 6

~これはアルグスタたちが初めて自治領に転移した時の話である~

コンコンッ

いつもなら夜明けと共に起きだしてくるポーラ様が今日は起きて来ません。

昨日お兄様とお姉様にあたるアルグスタ様たちが前線に赴き、留守番を命じられてから様子がおかしくなりました。きっと御二人のことが心配なのでしょう。本当にお優しい人ですから。

ですがここは私がちゃんと行動で示すべきです。

メイドたるもの何があっても動じてはいけません。

主人がご命じになられたのですから誰から見られても恥ずかしくない行動を取り、確りとこのお屋敷を守らなければいけないのです。

それがメイドでありドラグナイト家の末妹であるポーラ様のお役目なのです。

何度かノックをしてみますが中で動きが感じられません。

きっとシーツを頭からかぶりベッドの上で丸まっているのでしょう。

普段はそのようなことをしないのですが、ポーラ様は辛いことがあると丸まって寝る癖があるようです。ご自身の身を守るかのようにギュッと丸くなる……その様子からやはりこの屋敷に来る前は大変だったのでしょうね。

ドラグナイト邸で働く先任の同僚たちに聞けば、最初やって来た時はボロボロでガリガリで傷だらけだったとか。それを聞いた瞬間私は良く屋敷を飛び出しその集落を滅亡へ誘わなかったものだと思います。やはりメイドは自制心が大切です。

仮にポーラ様がご命じになれば、出来うる限りの方法を使い生きてきたことを懺悔しながら惨たらしく滅ぼすのですが。

やはりご返事がありません。

仕方なくもう一度ノックをしてからポーラ様の部屋に入ります。

「失礼します。ポーラ様」

一礼をし、部屋の中を進むと……やはりベッドにこんもりとした山が。

膝を抱いて丸まり寝ているのでしょう。

失礼とは分かっていますが、私はベッドに歩み寄り……そしてシーツを剥ぎました。

『残念。はずれ』

「……」

置かれた枕と1枚の紙に私は言葉を失います。

確かに人の気配があったはずですが……シーツを剥いだら霧散しました。

そしてこの置手紙は一体?

「ポーラ様?」

余りのことで一瞬気が動転してしまいました。

きっと御二人と引き離されたことで、ポーラ様は少し正気を失ったのでしょう。

こんな悪戯をして私の反応を覗いて……ですが部屋にポーラ様の気配はありません。いくら探しても気配どころかご本人が居ないのです。

「ポッ、ポーラさまっ!」

慌てて私は捜索の範囲を広げます。

部屋から屋敷へと広げ、必要ならば天井裏から床下までくまなく探します。

ですが居ません。居ないのです。

「ポーラさま~!」

急ぎ馬車の準備をして私はお城へと向かいました。

「ポーラ様は何処ですかっ!」

「ふにゃ~です~! 何事です?」

強襲した王妃様の私室には、ちっさい王妃しかいません。

いいえ。もしかしたらまだポーラ様が悪戯心を発揮して、この王妃と手を組み私から隠れている可能性もあります。ですから捜索です。

「失礼します」

「ちょっとなのです~! そっちはダメです~!」

捜索を開始した私に対し、小さな王妃が両手を広げて制止しようとしてきます。

はっきり言って邪魔です。先生を見習い邪魔者の頭を掴んでベッドに投げ捨てます。

顔から突撃した様子ですが、ベッドの上に人が居る様子は無かったのでポーラ様は隠れていないでしょう。何よりこの王妃はどうしてそのような似合いもしない紫の下着など……まさか最近ポーラ様のお部屋に卑猥な下着が増えているのは、この王妃が原因なのでしょうか?

後で調査して場合によっては強制的に排除することも考えましょう。

ポーラ様を汚す存在は悪です。

制止する邪魔者が居なくなったので心置きなく捜索が出来ます。

クローゼットの中には大量の菓子箱が。

全て邪魔ですので引っ張り出して……すると大量の卑猥な下着や衣装が出てきました。

これも邪魔です。それとやはり王妃は悪です。ポーラ様の教育に良くありません。

くまなくクローゼットを捜索し、ついでタンスや本棚など全て調べつくします。

が、やはりポーラ様は居りません。

「う~。目が回ったです~。ってわたしの秘密がいっぱい晒されているです~! にゃがっ!」

ベッドの上の邪魔者が動き出したので、ちょうど手にしていたサイズ違いのブラを投げて黙らせました。

自分が身に付けるサイズも分からないとは笑止です。あの大きさでは私ですら余ります。

「……居ません」

探し尽くしましたがポーラ様はこの部屋ではなさそうです。

ならば次はアルグスタ様の私室でしょうか?

「失礼します」

何故か呆然と私を見ているメイドたちに一礼をし、王妃の部屋を出て急ぎます。

後日聞いた話では……そのあと直ぐに陛下が部屋の前を通りかかり、王妃様はしばらくお説教を受けたとか。

いちメイドである私からすれば、普段から正しい行いをしていれば怒られることはないと思いますが。

お城の中には一応アルグスタ様のお部屋があります。

彼は王族であり何より元第三王子です。ですから部屋があるのですが……何故かハーフレン様の意向でこの城にある尖塔の1つに存在しています。

「失礼します」

部屋の前で待機しているメイドに鍵を借りて入ってみれば……どうして?

慌てて後ろ手でドアを閉じます。

外で待機していたメイドは同じ場所の出身ですから心配いりませんが、このお方は知っている人以外はお姿を見られるわけにはいかないのです。

「ミネルバじゃないの? どうかしたの?」

「……ラインリア様」

屈託のない笑みを浮かべ、ベッドを椅子代わりにして座っていられました。

小さな石造りの部屋にはベッドと机と椅子だけが置かれています。

はっきり言えば罪を犯した王家王族に関する物を幽閉する部屋として存在しているので、必要最低限しか置かれていないのです。

そのような場所に何故か前王妃様であらせられるラインリア様が居りました。

「何をしているのですか?」

「今日は体調が良かったから、少しお城の様子を見に来たの」

ポンと胸の前で手を叩いてラインリア様が少女のように微笑みます。

「それにこの部屋をアルグスタは使ってないし、何より高い場所だからノイエの姿も良く見えるのよ。けど今朝から見ているのにノイエが姿を現さないの……今日はお休みかしら?」

「ノイエ様とアルグスタ様でしたら、昨日より北西の新自治領にお出かけに」

「えっ?」

音を立ててラインリア様が凍り付きました。

「冗談でしょう?」

「事実です」

「……そんな話聞いてないわよ~! スィークのばか~!」

怒れるラインリア様は唯一部屋に存在する窓の枠に手をかけ足を乗せると、私が制止する間も貰えないほどの速度で外へと飛び出していきました。

慌てて窓に駆け寄り外を確認しますが……その姿を見つけることはできません。

きっとスィーク様の所にご不満をおっしゃりに行ったのでしょう。

部屋の中を確認し、ポーラ様が隠れていないことを知ると外に出ました。

「……ラインリア様はいつも?」

「時々やって来てはあの場所からお城の様子を眺めています」

孤児の出で私の後輩にあたるメイドがそう教えてくれました。

彼女はこの尖塔付きのメイドの1人で、何でもスィーク様の命令で待機しているとか。

「分かりました。私は何も見聞きしなかったことにします」

「そう願います」

一礼してくる後輩に軽い笑みを見せ、私は次なる場所へ向かいます。

そろそろ時刻は昼過ぎ。アルグスタ様たちが戻ってくる頃ですから。

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