軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

殺して良いよな。あの糞は?

日長一日……誰とも接点なく暮らすと言うのは実質無理だ。

何よりこの場所には、2人も昔からの知り合いが居る。見知っている程度なら何人か居る。

お陰でアイルローゼは1日に何度かそういった者たちと接触をする。不本意ではあるが。

「私が子供嫌いだと知らないの?」

「リグを可愛がってたから大丈夫だと思ってたけど?」

「あれは研究材料よ。生きた標本」

言い捨ててアイルローゼはやって来た2人から視線を離す。

1人は学院の頃からの知り合いだ。ミャンと言う幼馴染に素直に告白できない同性愛者だ。

もう1人は……この場に似合わない能天気な笑みを浮かべる子供だ。興味すら湧かない。

「お姉ちゃん?」

「寄らないでくれる。子供は嫌いなの」

「……」

ピシャッと頭ごなしに言われ少女……ノイエは頭を引っ込める。

隣に立つミャンは頭を掻きながら目の前に居る魔女を見た。

昔からこの気紛れな天才は人付き合いが下手くそなのだ。

子供の頃から天才と呼ばれ自分自身もそれを認めているからこそ起こる弊害なのかもしれないが、慣れればもう少し気軽に会話が出来るようになる。

と幼馴染であるシュシュは常々言っていた。

問題はそんなシュシュが、人見知りとは無縁でフワフワと相手の領域に入り込んで行ってしまう性格なのだが。

「アイルローゼ」

「……何よ?」

「ノイエが貴女に頼みがあるそうよ」

言ってミャンは怯えている少女の背を軽く押す。

ビクッと震えたノイエはミャンを見上げて……ゆっくりと口を開いた。

「直して欲しいの」

「……」

「お姉ちゃんの両腕。プレートを」

ギュッと胸の前で両手を拳にしてノイエはアイルローゼを真っすぐ見つめる。

チラリと視線を向けた魔女は面倒臭そうに深く息を吐いた。

「無理よ」

「どうして?」

「分からないの?」

イラッとした様子でアイルローゼは立ち上がると、本当に何も理解していない少女の額に右手の人差し指を立ててそれで突いた。

「少しは考えなさい。その頭は飾りなの?」

「誰もが貴女みたいな天才じゃないわよ」

そっと手を伸ばし、ミャンはノイエの額に触れている魔女の指を掴んだ。

「なら貴女が教えてあげなさい。この子がどれほど酷いことを言っているのかを」

「ええ。けどノイエは言っても分からない」

「……馬鹿なの?」

「否定できない時もあるけど、この子は常に真っすぐで真剣なんだ」

そっとノイエの背後に回りミャンは少女の肩に手を置く。

「だから真っすぐお前の所に来る」

「迷惑ね」

本当に迷惑でしかない。

救いたいから手を貸せと言い、その方法は丸投げだと言う。

アイルローゼは心底呆れてノイエと言う少女を見た。

こんな年端も行かない少女が真剣だとは到底信じられない。

どうせ漠然と救いたいから手を貸してと言っているに違いない。それだって自分は人の後ろに隠れて応援している振りをする酷い所業でだ。

正直に言えばいけ好かない。

「手を貸す気は無いわ」

「どうして?」

首を傾げて自分を見つめる少女にアイルローゼははっきりと告げる。

「自分は痛い思いもしないでそれを他者に押し付けるのが許せないのよ。分かる? ねえ?」

手を伸ばし少女の顎を掴んでアイルローゼはその碧眼を覗き込む。

「両腕のプレート? それを直せって? だったら貴女がそのプレートを抉り取って、ここに持って来なさい。そうしたら私が直してあげるわよ。それが出来ないなら2度と近づかないでくれる? 分かったかしら?」

思いっきり突き放そうとしたが、事前に察知していたミャンがノイエの背後に立っていて出来ない。

諦めてアイルローゼは少女の顎から手を離して……スタスタとその場から離れるのだった。

「殺して良いよな。あの糞は?」

「落ち着きなさいカミュー」

凶悪な気配を発する元暗殺者に、月のあれで顔色を悪くしているグローディアが諫める。

気持ちは分かる。自分だって本当ならこのまま出て行ってあの魔女の尻を思いっきり蹴り飛ばしたいぐらいだ。

まあそれは軽い挨拶で、後は気が済むまで殴る蹴るをするだろうが。

「今回は確かにノイエの考えなしな部分が強すぎるわ」

「だからってあの子にあんな態度とか……」

「気持ちは痛いほど分かるけど落ち着きなさい」

怒り狂う狂犬を思わせる相手にグローディアはため息を吐く。

昔は……少なくとも王妃の元に居た頃は、大人しくて真面目な傍仕えだと思っていたのだが、本当の意味で猫を被っていたのかもしれない。

何よりあの伯母を前にしたら狂犬だって牙を抜かれることだろう。

「問題はノイエがこんなことで諦めないってことよ」

「それは分かるが……」

一応心を沈めカミューは自分の髪を掻き上げた。

あのノイエが一度脅されたぐらいで諦める訳がない。

問題はどうすればあのファシーの両腕からプレートを取り出し治すことが出来るかだ。

「何か良い方法でもあるのか? お姫様」

「無いわ。私の専門は召喚だから」

告げてグローディアは姿を隠していた物陰から出る。

一瞬ノイエの元に向かうことも考えたが、今はミャンと言う女性が傍に居て慰めているから問題はない。後で抱きしめて撫でてやれば十分だ。

「だからその手の問題解決の専門家に知恵を絞らせなさい」

「……ホリーか。あれに依頼すると高くつくぞ?」

「だったら『ノイエが泣き叫んでも良いのね。とんだお姉ちゃんだわ』と言えば解決よ。それでも拒絶するならあれにノイエの姉を自称することを今後私が許さないから」

「確かにな」

軽く首を鳴らしてカミューはその場を離れる。

今頃あの殺人鬼はこっそりと隠れて秘密の仕事をしているはずだ。

離れるカミューを見送りグローディアも歩き出す。

向かう先は共犯者の元だ。

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