軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あの魔女は嫌いだわ

「む~」

「どうしたノイエ?」

「む~」

座って部屋の隅を睨むように見つめるノイエは不満げだ。

その様子に愛らしさを感じ軽く胸の中をキュンキュン言わせてカミューはノイエを背中から抱きしめる。

今ならラインリア王妃の気持ちが理解出来る。あの人はいつもこんな気持ちで居たのだろう。

「ならお前はもう諦めるのか?」

「いや」

「だったらもう少し頑張ってみると良い」

「はい」

ギュッと拳を作ってノイエはやる気を見せる。

とは言え流石のホリーですら解決策を見いだすことが出来なかった。

『人と道具が揃っていれば出来るわよ。でもその両方が無いの。いくら私でも両方が不足した状態での解決策なんて無理よ』

グローディアの入れ知恵を使ってまで引き出した答えだから、その通りなのだろう。

ただしその後は作業を忘れてずっと何か考えていたから明日には別の方法を考えだすかもしれない。あれがもし普通に知識を学んでいれば、名を残す逸材になっていたのかもしれないのだから。

「良し。今日はもう寝るぞ」

「はい」

「懲りないわね」

「……」

今日も懲りずにやって来たノイエにアイルローゼはため息を吐く。

「言ったわよね? プレートをどうにかしたいのなら貴女がプレートを抉り出して持って来なさいと」

「……」

怒った猫が相手に唸るようなそんな雰囲気を見せるノイエの後ろに居るのはファシーだ。

周りの視線を気にして彼女は腕を抱いて身を丸くしている。

チラリと視線を向けてアイルローゼはため息を吐く。

どうしてここにはこんなにも不幸を体現したような者しか居ないのだろうか?

あの監視から聞かされた限り、ここは不幸を味わう場所では無かったはずだ。

「分かるかしら? いくら私でも見えないプレートをどうにかするなんて出来ない」

「でも」

「出来ないのよ」

バッサリと斬り捨ててアイルローゼは明確に拒絶する。

どんなに足掻いても限界を越えることなど人には出来ないのだから。

奇跡でも起きない限り……奇跡が起きても不可能なことはあるのだから。

「その腕からプレートを出したら来なさい。その時は見てあげるわ」

鼻で笑いアイルローゼは涙目の少女から視線を逸らした。

「良し殺そう」

「落ち着いてホリー」

今にも殴りに行きそうなホリーを必死にパーパシは押さえる。

普段触られるだけで怒りだすホリーが、触れられても怒らないと余程頭に来ているのだろう。

「あはは~。やるなら手伝うよ?」

「レニーラも」

正直パーパシだってあの魔女の態度には頭に来る部分もある。

それでも怪我人が出たら自分が対応するしかない。リグが居ない分だけ余計にだ。

笑いながら魔女を殴りに行きそうな舞姫に対して、パーパシは秘密にしている祝福まで使い2人を制した。

「ホリー。何かあの女をギャフンと言わせる方法は無いの?」

「無くはないけど道具と人が足らない」

「つまりリグと?」

「医薬品よ。それも薬草の類じゃなくてちゃんとした薬よ」

まだ荒れた様子を見せているが、ホリーは座り込んで自分の考えを口にする。

「ノイエの望みを叶えるなら、まず腕を割いてプレートを取り出す。それからプレートを直すまで傷口を開いたまま維持して、直したプレートを元に戻して縫う必要がある」

「無理よ。出血が多くてファシーの体が耐えられない」

祝福を解いたパーパシの言葉にホリーは頷く。

「でも出来るのよ」

「それは?」

「シュシュの魔法ならね」

こっちもまだ荒れているがレニーラも座り込んでホリーの話に付き合う。

若干空腹に目を回すパーパシは、干し草を噛んで空腹を誤魔化そうとしていた。

「シュシュの魔法で傷口を封じてしまう。そうすれば出血は理論上止まるはずよ」

「それから魔女がプレートを直して埋める?」

「そう。そしてリグが縫合して終わり」

会話をするホリーとレニーラは流石に苦笑した。

道具と人もそうだが、根本的な問題がある。魔力封じの首輪をどうにかしないと不可能なのだ。

「絶対に無理?」

「首輪だけでもどうにか出来れば可能よ。少なくとも誰かが大怪我をすればリグはあの中央の建物から解放されてこっちに来るのだから」

ホリーの答えは間違えていない。

問題は自分たちではどうしようも出来ないことなのだ。

「そうなるとあの魔女って変ね」

干し草を噛んでも空腹は紛らわせられないと悟り、畑からまだ実の小さな野菜を回収して来てそれを齧りながら、パーパシはまだ魔女に対して食い下がるノイエを見た。

「何が?」

「だってホリーが無理と言ってるのよ?」

「無理ではない。足らない物が多いだけ」

「それを普通無理と言うのよ」

変に負けず嫌いな面を見せる彼女に呆れつつ、パーパシはその目を少女に向ける。

あの頃の少年たちのように必死に頑張るノイエの姿を見ていると……つい心の何かが緩んでしまう。自分のあの子の為に頑張ってあげたいと思ってしまう。

「だったらノイエに『出来ない』と言ってしまえばいいの。だって出来ないのだから」

「「……」」

言われて2人は魔女を見る。

彼女は『プレートを抉り出しなさい』としか言っていない。

「……冗談でしょ?」

「何が?」

気づいたホリーは戦慄した。

あり得ない。出来る訳がない。けれど……そっと自分の首に巻かれている物に触れてホリーはもう一度思案する。

頭の中の盤に存在していなかった。最初から除外していた『可能性の駒』を追加してもう一度思考する。

「あはは……分かったわ」

「だから何が?」

再度のレニーラの問いにホリーは答えず立ち上がる。

パンパンとスカートについた埃を払って視線を魔女に向けて睨みつけた。

「私、あの魔女は嫌いだわ」

「だから何が?」

「その内分かるわよ。フンッ」

肩を怒らせ立ち去るホリーの背からレニーラは視線をパーパシに向ける。

しかし向けられた朱色の視線にパーパシも軽く肩を竦めるだけだった。

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