軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

やれば出来るって!

《ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ。ごめんなさい。もう嫌だ……》

茂みに隠れ、ファシーはずっと自分の頭を抱え震える。

何をしても上手く出来ない。

自分が本当に頭が悪くて愚かだからこそ、こうして何度も同じ過ちを繰り返してしまう。

馬鹿な自分なんてあの処刑台で首を吊って死んでいれば良かったのに……そうすれば誰も傷つけなくて済むのに、往生際も悪く生きているからまた問題を起こす。

言いようの無いどす黒い感情を胸の中に広げ、それを必死に抑え込んでファシーは耐える。

自分が悪いのだから。全ては自分が悪いのだから。

「見つけた」

「……」

明るい声にファシーは震える。

あの子は自分と違い誰からも好かれる。優しくて元気で笑顔が眩しい少女だ。

「泣いてるの?」

優しい声と背中に触れる手。その手は小さいのにどこか暖かい。

「ダメ。触らないで」

「平気」

「ダメっ」

背中を撫でてくれる手を払い、ファシーは涙が溢れて止まらない顔を少女へと向けた。

払われた右手を左手で包み首を傾げるノイエは、泣いている相手を見て慌てて駆け寄って来た。

「大丈夫?」

「……」

本当に辛い。自分だってこの子のように振る舞えたらと……心の奥底から思う。

けれど出来ない。自分はこの少女と違い純粋じゃない。

育ててくれた先生を笑って殺した酷い人間なのだから。

《ノイエだってわたしと同じ目に合ってれば……》

ゾクッと背筋を震わせたファシーは、ギュッと自分の二の腕を掴んだ。

爪が食い込み肉を割いても強く握りしめて我慢する。

目の前の少女にだけは、こんなどす黒く汚い感情を向けたくない。

ただの嫉妬だ。

自分に出来ないことをする相手に嫉妬しているだけなのだから。

と、ノイエはファシーの手前で両膝を着いてその手を伸ばし抱き付いて来る。

ギュッと抱きしめられたファシーはノイエの顔を見た。

「平気だよ」

「ノイエ?」

「お姉ちゃんは優しいから」

サスサスとノイエがファシーの背を撫でる。

「動物に好かれる人は優しい人なんだよ。ノーフェお姉ちゃんが言ってた」

「ノイエ……」

抱きしめ返そうとするファシーの手が震える。

ダメだ。このまま甘えてこの子が近くに居たらまた傷つけてしまう。ノイエを傷つけてしまう。

「放して」

「大丈夫」

「ダメ。ノイエに怪我を」

「平気」

ギュッと全力でノイエは抱き付いて来る。

「わたしは怪我しても治るから平気」

「ノイエ?」

「お姉ちゃんの怪我が治るまで近くに居る」

怪我? その言葉にファシーは心の中で首を傾げる。

自分は怪我などしていない。しいて言えば今、強く腕を握り少し傷ついて血が滲んでするけど……これだったら薬草の軟膏を塗ればそのうちに治る。

「ノイエ。わたしは怪我なんて」

「してるよ。胸の中をいっぱい」

「……」

言葉に詰まった。

自分よりも幼いノイエは本当に理解していたのだ。

少し力を緩めてノイエはファシーの顔を見る。

前髪で目元を隠している彼女の表情は分かりにくいけれど、頬を流れる涙で察することは出来る。

悲しくて辛くて泣いていることを。

「お姉ちゃんの胸が痛くならなくなるまで傍に居るよ」

「ノイエ?」

本当にこの子は不思議な子だ。

誰にも優しくて誰にも奇跡を見せる。

けれどファシーはその優しい奇跡を受け入れられない。自分には呪われた両腕があるから。

「この腕のプレートがある限り無理なんだよ。わたしは人を傷つけるから」

「……」

魔力を流すだけで暴発してしまうプレート。

それが両腕に宿るファシーは、やはり人の近くに居ることは出来ない。

傷つけてしまうから。そうすればまた自分は居る場所を失ってしまうから。

「プレートをどうにかすれば良いの?」

「出来ないよ」

「どうして?」

首を傾げる少女にファシーは告げる。

「こんなの天才の魔女でも無いと直せない。けれどあの人は他人に興味がないから」

姿を現した術式の魔女は誰とも関わらず1人で日々過ごしている。

魔法使いであるから最近始められた格闘訓練などにも参加せず、日長一日切り株に座っては遠い何かを見つめて居るのだ。

誰かが近寄れば立ち上がり遠ざかる。

人との接触を極力避ける彼女にファシーは自分の腕の問題など告げることは出来ない。きっと相手にすらされないと分かっているから。

「分かった」

「……」

ギュッと胸の前で拳を握り、ノイエはそのまま立ち上がった。

「わたしがその人を呼んで来る。そうしたらお姉ちゃんも直るんだよね?」

「……無理だよノイエ。出来ないよ」

「出来ないことはない!」

少し怒ってノイエが吠えた。

目の端に涙を浮かべ少女はファシーを見る。

「ノーフェお姉ちゃんもカミューも言ってた。やれば出来るって!」

見事なまでの根性論だ。

年長として何か告げるべきかと悩むファシーを尻目に、放たれた矢のようにノイエは走っていく。

目指すは……あれだ。あの綺麗な人であってるはずだ。

テトテトと走り続けるノイエは、しばらくして迷子になって泣いてるところをミャンに拾われた。

(c) 2020 甲斐八雲