軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

噂に聞く破壊神?

「で?」

腕を組んで立ちはだかる存在に、地面の上に座るミャンとシュシュは身を小さくした。

2人とも土に汚れボロボロになっている。

だがそれを見下ろす彼女……カミューからすればどうでも良い話だ。

問題はどうしてこの2人の喧嘩にノイエが巻き込まれ、一緒に泥だらけになったのか?

その一点だ。

「あれよ」

「あれだね~」

「どれ?」

取り付く島もないと言うのはこのことか。

バッサリと斬り捨てて来るカミューの様子は結論ありきの様子に見える。

「私たちの喧嘩にノイエが仲裁に入って」

「でも~2人とも~感情的に~なってた~から~」

「……」

フワフワしているシュシュの頭を掴み、カミューは彼女の揺れを強制的に止める。

「で?」

「「ごめんなさい!」」

揃って地面に向かい頭を下げる。

だが謝って済むならこの世に争いなど生じないのも事実だ。

「良く考えろ。謝って済むなら最初からこんな場所に座らせるわけが無いだろう?」

「「やっぱりか!」」

幼馴染なだけあって息はピッタリだ。

同時に立ち上がりミャンとシュシュはダッシュで逃げ出す。

しかしカミューとて元は名うての暗殺者だ。狙って獲物を逃がす訳がない。

拳を硬く握り不敵な笑みを浮かべ全力で駆け出して行った。

「あら? カミューは?」

「ミャンとシュシュを始末しにあっちに」

「そう」

プルプルと否定するように頭を振っているノイエに対し、しかめっ面をしながらも口元だけが笑っていると器用な表情を見せるグローディアから視線を逸らし、レニーラは手にしていた布を少女の頭に掛けた。

「ほらノイエ。ゴシゴシしてあげるよ」

「はい」

何故か頭に掛けられた布で自分の首を絞めそうな動きを見せているノイエに、レニーラは手を伸ばす。

テトテトと歩いて来た少女は、横合いから伸びてきた腕に掴まり方向転換した。

「拭いてあげるわ」

「はい」

グローディアの手によりノイエの髪が拭かれて行く。

よく分からないが元王女様はこの少女を恐ろしいほど溺愛している。

理由を知る者は誰も居ない。

何より恐れを知らないノイエは誰が相手でも気やすく近づき声をかける。そして甘える。

髪を拭かれながらも元王女に甘えられるノイエはやはり凄い。

服が濡れることなど気にせずグローディアも少女をそっと抱き寄せてその髪を拭いていた。

と、何故か髪を拭く手を止め、グローディアがノイエを抱き寄せ庇うような仕草を見せる。

「お久しぶりね。お姫様?」

「ええ。ようやく解放されたの?」

スッと王女の顔つきに戻り、グローディアは目の前に来た人物を睨む。

近くに居たレニーラはその人物を知らない。

長い綺麗な赤い髪と意志の強そうな赤い瞳。同性の自分が見ても驚くほどの美貌は、厳しい目つきのせいでとても冷たく冷ややかに見える。

スラリとして手足は細く……そして胸の膨らみは微々たるものだ。

「それで王女様。どうしてそんな少女の相手を?」

「……一緒に居る仲間よ。この子は」

「そう」

ノイエを一瞥し、冷たい美人はゆっくりと歩いて行く。

本当に挨拶に来た様子だが……それにしては怖すぎる。

「で、あれって誰?」

「知らないわよ」

近くに居るパーパシにレニーラは聞いたが答えは得られない。

少なくともここに来るのだから有名人であるはずだ。

「もしかして……アイルローゼ?」

「ふぇ?」

背後から聞こえた声にレニーラは振り向くと、木の裏に隠れていたファシーに気づく。

本当に気配を発しない子だなと思いながら……レニーラは慌てて遠ざかる人物に目を向けた。

赤毛の天才魔女。術式の魔女と呼ばれる彼女は超が付く有名人だ。

「噂に聞く破壊神?」

「何よそれ?」

レニーラの声にパーパシが呆れながら声をかける。

「何でも魔法学院を破壊して回ってたとかそんな噂を聞いたよ?」

「私が聞いたのは『術式の魔女は人体実験をして投獄された』って話ね」

「……作っちゃいけない魔法を作ったって」

パーパシの言葉もファシーの言葉も良くない噂みたいだ。

そんな恐ろしい人物がこの場所に解き放たれたと言うことは……絶対に問題が起きるとレニーラは睨んだ。

具体的に言えば血の気の多いジャルスが動く。次いでカミーラか。

「お姫様~?」

「何かしら」

またノイエの髪を拭く行為に戻っていたグローディアは、自分を呼ぶレニーラを見た。

「絶対に騒動が起きそうなんだけど?」

「起こしたければ起せばいいのよ」

軽く手櫛を通し拭いたノイエの髪を整えながら、グローディアはもう見えなくなった魔女が行った方を見る。

「私たちは仲良しでは無いのだから」

「そうだけどね」

ただ慌ただしいのは嫌だな~と思いながらレニーラは自身の頭を掻くのだった。

「カミュー」

「どうした?」

今日は逃げ続ける2人の馬鹿を追い回し、確りと殴り飛ばすまでやってから夕飯を作ったカミューは、ちょっと疲れ気味の視線を甘えて来る少女に向けた。

本当に愛らしくて可愛らしいノイエを見ているだけで一日の疲れを忘れられる。

「今日すごくきれいな人を見た」

「……へぇ~」

何となく噂は聞いていた。あの有名な術式の魔女が姿を現したとか。

その存在がこの施設に居ることはリグから聞いていた。けれどどうして今という気持ちはある。

「わたしもあんな風になれる?」

「ノイエは馬鹿だな」

クスッと笑いカミューは優しく少女の頭を撫でた。

「ノイエの方が綺麗になるに決まっている」

「……はい」

正面から見つめられて断言されたノイエは頷くことしか出来なかった。

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