軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

揉まれると大きくなるって

ちょっとした事故で魔剣を作る人間が行動不能となった。

ならば別の方法で……と言うことで、スハは訓練用の木剣をノイエに手渡し振るわせる。

「ビックリするほど才能が無い」

「だね」

一緒に見学していたシュシュから見ても、ノイエに剣の才能があるようには見えない。

おっかなびっくりで剣を振るう様子がしばらく続き……以降成長が見られない。

基本優し過ぎる性格の少女だから剣を振るうという行為ですら常に周りを気にするのだ。

「やっぱり魔剣を握らせてずっと攻撃させていた方がいい気がするんだ」

「だね」

それだったら低級の魔法を覚えさせてずっと使わせている方がいい気もする。

スハはそう思い横に居る魔法使いに目を向けた。

「ノイエって魔法はどうなんだ?」

「壊滅的」

「壊滅? どう言う意味だ?」

眉間に皺を寄せるスハに、シュシュは軽く視線を迷わせる。

「私たち魔法使いは魔法語を綴り魔法を使うんだよね」

「まあな」

「でもノイエの場合はそもそも魔法の才能が全くないんだよね」

「……だが魔力は凄いのだろう? そう聞いたぞ?」

「うん」

それは事実だ。だからノイエの首には特別製の首輪が巻かれている。

それがあっても魔力が垂れ流されるのだからあの存在を"魔女"が見たらどんな反応を示すかシュシュですら想像出来ない。

「どう言えばいいのかな? 私も専門じゃないから見た感じでしか説明できないんだけど……ああ。そうか」

ポンと手を打ちシュシュは良い説明を思いついた。

「とある歌姫はこの国で一番歌が上手なんだけど自分では声が出せないみたいな?」

「それで説明した気か?」

「無理?」

「言いたいことは分かるが、なら誰がその歌を上手いと判断した?」

「……そっか~」

自分では上手い説明かと思ったが、そう言われたらその通りだ。

「魔力は道具を使えば測定できるが、ノイエはその優れた才能を使えないと?」

「使えなくはないと思う。ただ扱い方を知らない感じかな? 私たちは無意識に立って歩いているけど、ノイエの場合は常にそれを考えて実行している感じ?」

「私に聞くな」

「だって~。私もそう言う説明は苦手なんだよ~」

魔法学院では優秀な生徒らしかった相手を見つめてスハは息を吐いた。

シュシュでは無くミャンの方が講師を務める訳だ。

こんな先生など教えられる生徒に同情しか出来ない。

「アイルローゼが居れば一発解決なんだけどね」

「術式の魔女か」

良くない噂ばかり聞く魔女だが、この場所に居ないことを知るスハとしては彼女はあの日に狂うことが無かったのだろうと思っていた。

「どこで何をしているんだか」

「あそこで魔道具を作ってるよ?」

「へっ?」

素で驚いた。

何気なく指し示すシュシュの指先は監視たちの居る中央に向けられている。

「本当か? 本当なのか?」

「だね。一度あそこで会ったしね」

苦笑しシュシュはスハを見る。

「たぶんリグが連れて行かれたのは、アイルローゼが何かしたのかもね。アイルローゼはリグの保護者っぽいことをしていたから、それを理由に何かさせられているのかも」

「だからお前たちはあの小さいのが連れて行かれる時に暴れなかったんだな?」

合点がいった。

仲間が連れ攫われるのに何ら抵抗しなかったシュシュたちを、スハは心の中で『薄情者』と思っていた。

けれど連れ攫われた先に保護者が居るなら話は変わる。

「あの小さいのは捕らわれたことを幸いに寝てるだろうな」

「だね。それでまた大きくしてたりして?」

「……なあシュシュ?」

チラッと向けられたスハの視線に、シュシュは黙って肩を竦めた。

「何度も聞いたよ。私だってもう少し大きくしたいって願望はあるから」

「そうだな」

スハも自分の物を見て確認する。

決してシュシュより劣っていないと信じているが、たぶん同じぐらいかもしれない。

「リグが言うには『母親が大きかったのかもね。会ったこと無いけど』だったよ」

「確認のしようのない言葉だな」

「あとは揉まれると大きくなるって」

「……相手が誰か聞きたくなるな」

胸さえ見なければ幼く見えるリグの胸を揉む存在。

若干一名該当者が居るが、リグは日々ミャンの魔の手から逃れていた。

「それにしても……ノイエは剣の才能が全く無いな」

「だね」

朝からずっと木剣を振るっているノイエだが、完全に腰が引けた状態でやっているから姿勢も悪い。

「何よりあれは覚えが悪い」

「それは仕方ないよ」

そこを怒るのはノイエに対して失礼だ。

話しのネタになっていたリグの見立てでは、たぶん川で父親に殺されかけた時にノイエの頭に障害が残ったらしいとのことだ。

それは彼女の祝福でも癒されることの無い、目に見えない傷跡なのかもしれない。

「さてと。ノイエ」

「はい」

「もう少し背筋を伸ばせ」

「はい」

文句は多いがスハは何だかんだで親切だ。

もう何度目か分からない指導を最初からちゃんと説明している。

スハの指導を真剣に聞くノイエだが、やはり何度やっても腰が引けてしまい……剣の才能は皆無のようだ。

後日指導を諦めて万歳したスハは、ノイエの保護者の元に行き『お前が甘やかすからノイエが成長しない』と文句を言って大喧嘩に発展した。

カミューの殴り合いの大立ち回りを見ていたノイエは、今度はカミューに弟子入りをして殴り合いの方法を教わるようになる。

それを眺めていたシュシュは気付いた。

基本ノイエは格好良い物が好きなのだと。

意外と子供らしい一面を覗かせる少女に……シュシュは自然とクスクスと笑っていた。

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