作品タイトル不明
そうしたら後は僕の仕事だ
いやだぁ~。もういやだょ~。
北の空に存在するのはキングな三頭竜だ。あれを倒せるのはゴ〇ラ先生ぐらいだ。
日本でもアメリカでも先生はあれを倒している。しかし何故かメカになって戻って来る。メカって何さ? 何なのさ?
僕の視界を覆い付くす勢いで来たあれは大き過ぎる。全長は30mはあるのかな? 比べる物が無いから分かりませんっ!
唯一の救いは北側は王国軍や近衛の野外練兵場所となっているので広い荒野が広がっている。
どんなに暴れても被害は少ない。ここから先に進まれたら即終了だけど。
さあ思い出せ。三頭竜の攻撃は何だった? 口からビーム的な物を吐かれたら即終了だ。って終了リスクが多過ぎるだろうがっ!
『うっきゃ~!』と奇声を上げて……ひとまずスッキリした。
問題は敵が空に居るので攻撃が届きません。
「どうやって攻撃すれば良いのさっ!」
一瞬降りて来るのを待つかと思ったら、あのキング……足が無いんです。つまり常に浮いて移動するのね。
今まで何処で何してたのか聞きたいんですけど~!
「石じゃ届かないよね~」
試しに足元の石を拾って投げてみたけど……放物線を描いて地面に落ちた。
僕の肩じゃレーザービームばりの遠投は無理だな。知ってたよ。
「矢とか届くのかね?」
「理論上は届きますが、ただ暴れでもしたら王都の被害は甚大でしょう」
「……」
声に振り返ると普通に叔母様が居た。
「何で居るの?」
「馬鹿な問いを。貴方が4日間と言ったでしょうに」
「でもその足はもう?」
「それは貴方が気にすることではありませんよ。アルグスタ」
スッと顔を上げて叔母様が真っすぐ僕を見た。
「もし貴方がこれからも大切な物を護り戦うと言うのであれば、失う覚悟も必要でしょう。ですがこのわたくしが簡単に屈するとでも? 冗談は頭上の馬鹿げた存在だけになさい」
「……そうっすか」
痒くもないけど頭を掻いたらため息が出た。
「叔母様って本当に素晴らしい女性ですね」
「今頃気づいたのですか?」
「いいえ。再確認しただけです」
前からスィーク叔母様の素晴らしさは知ってたさ。何よりこの人は本当に強い。
「叔母様」
「何か?」
「もし僕があれに負けたらそのまま撤収して下さい」
「理由は?」
「僕が負けたら『消す』との約束なので」
「……詳しいことは聞かないでおきましょう。ですがアルグスタ。貴方は勘違いをしています」
はい? 勘違いですか?
「分かっていないようですが、貴方と王都とでは貴方の方が重要なのですよ」
またまた~。そんなこと……無いよね?
「本当に分かってませんね」
コクコクと全力で頷くと叔母様が額を押さえて呆れ果てた。
「貴方の祝福は他人をドラゴンスレイヤーに出来る恐ろしい物です。片や王都など資金と人手があれば復興できるものです。
支配者がその2つを天秤にかけた時……どちらが重いか分かりますか?」
「いえいえ。そんな~。……本当に?」
「ええ」
呆れたまま叔母様が軽く頷いた。
「貴方の祝福がこの国に現れる確率を計算したことはあって? ある人物が言うには砂浜で投げ捨てた砂粒を一発で拾うぐらいの奇跡だとか。それほど貴方の祝福は貴重なのですよ」
叔母様は軽く鼻で笑う。
「わたくしの足など捨てることになっても、最終的には貴方を生きたまま連れて逃げる……それがこのスィークの役目なのです」
「自分そんなに凄くない生き物のはずだったんですけどね」
「諦めなさい。そうなってしまったのですから」
嫌だわ~。認めたくないわ~。
しかしそう言う認定を受けてしまったと言うことは、やっぱ死ねないわけです。
「ならあれを地面に落としてこれで仕留めます」
ここで最後の期待がエウリンカの魔剣とかどんな嫌がらせだよ。
「問題はどう落すかですが?」
「そんなの……弓矢でどうにかするしかないっすよね?」
「……どうとは?」
ジト目で見て来る叔母様は分かっていないのかな?
たぶん不幸な騎士が……ほら来たよ。
メッツェ君が操る馬の背に居るのはユニバンスが誇るおっぱい射手だ。祝福有りの。
「何だか呼吸が……胸が苦しいです……」
「大丈夫。まだ生きてるから」
思わずツッコんだ。
止まった馬から降りたルッテの顔色は正直良くない。
まあシャツのボタンの所から包帯が見えるほどの怪我人だしな。仕方ない。
メッツェ君に別れを告げて歩み寄って来たルッテに僕は問う。
「ルッテ。爆裂の矢は?」
「残り5本とあとキルイーツ先生から貰った矢が1本です」
「それであの化け物の羽根を落とせる?」
「遠くから良く見えましたけど……本当に大きいですね」
ゆっくり移動して来るキング様はまだ到着に時間がかかりそうだ。
と言うかあの速度のまま王都に突っ込んで来るのを倒せと言うのが課題なんだろうな。
「なら……」
言いかけて一度口を閉じる。
あの賢者はこっちの手の内を読んで魔改造を施すタイプだ。
つまりルッテが再合流して僕が矢を使うことぐらいは想定済みだろう。
「ルッテ」
「はい?」
「爆裂の矢を貸して」
「はい」
手渡された矢筒の中には6本の矢があり、内5本が爆裂の矢だ。
矢じりの部分についている円筒形の部品の中にプレートが仕込まれていて、それが当たった衝撃で中でプレートが動いて爆裂の術式が発動する。
爆裂に使う魔力は内蔵されていてプレートが正しい形になると流れて破裂する仕掛けだ。
簡単に考えてプレートが正しい形になればどこでも爆発はする。
「叔母様」
「何か?」
「一度だけあの高さにまで飛べますか?」
視線を向けた叔母様は薄く笑ってこっちを見た。
「誰に何を言っているのか自覚はあるのかしら? アルグスタ?」
「いいえ。叔母様ならこれくらい笑い飛ばしてくれるかと」
「良いでしょう」
彼女は爆裂の矢を受け取ると、それを束ねて1つにした。
「ルッテはこれで」
「……1本ですよ」
「どうせ1回か2回ぐらいしか弓を引けないでしょう?」
今だって額に脂汗を浮かべてるんだし。
「片翼を落とす。そうしたら後は僕の仕事だ」
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