軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

怪獣王が居なくても退治してやらあ!

遠くとも近いとも言えない距離で見える巨躯のドラゴンに、ポーラは隣りに立つ姉の手を掴む。

「大丈夫よ。ここは結界が張ってあるから」

先ほどまで食べていたパンの姿がなくなっていた。

はしたなく指を舐めている姉は、姉の姿をした彼女はクスリと笑う。

「良い作戦だとは思うんだけど……私がここから見ていることを忘れてるわよね」

舐めていた指を宙で動かし文字を綴って魔法とする。指で弾けば行使される。

「また?」

「ええ。私は甘やかさないから」

クスクスと笑う姉は、左目に不思議な模様を浮かべ空に居る三頭竜に目を向けた。

完璧なビジュアルだ。ここ数百年で最高傑作と言って良い。やはりオリジナリティーを求めると変な物ばかり出来る。著作権など無い世界であればそのままが一番ベストなのだ。

「あれを見ていると本当に思うわ」

「なにを?」

「人間って失敗を糧に成長する生き物なのだと……」

不意にポーラの頭の中に数多くの失敗作の造形が流れ込んで来る。

軽い頭痛を覚えながら……少女はあることに気づいた。

「しっぱいしたのは?」

「はい?」

問われた言葉に刻印の魔女は視線を少女へと向けた。

クリっと愛らしい瞳で見つめて来る少女の右目には、くっきりと五芒星の形が金色の線で浮かんでいた。

「しっぱいしたのはどうしたの?」

「……」

ふと視線を遠くに向け、刻印の魔女は思考を巡らせる。

『失敗だ~。まっ次よね次』と言う言葉が思い浮かぶが、そもそもその後どうしただろう?

大きく頷き魔女はしゃがむと相手を見る。

「小さなことを気にしたら良い女にはなれないのよ」

「……」

しかしポーラの頭の中には魔女の思考が垂れ流し状態だ。

『うん。大丈夫よ。やっはり動物は自然に返すべきだし……きっと誰かが退治してくれたわよね。うんうん。平気平気。それに私は過去を振り返らない女だしね』

ジトッとした目で見て来る少女に口笛を吹いて誤魔化し、魔女は立ち上がると戦場に目を向けた。

「さあ貴女のお兄様が頑張るわよ? その右目なら見えるはずだからちゃんと見てあげなさい」

「……」

信頼を得るのは大変だが失うのは一瞬だ。

ポーラに醒めた視線を向けられた魔女は、耐えられなくなってノイエと入れ替わるのだった。

アルグスタが立てた作戦はシンプルな物だった。

ルッテは痛みで震える体に鞭を打ち、矢を番え弓の弦を引いていた。

胸が痛み息苦しさを覚えるがそれでも引いて……放った。

真っすぐ飛んだ矢は三頭竜の真ん中の頭に、眉間に突き刺さる。

妨害は無い。それを確認しスィークは地を蹴り巻いた紙片を踏み台に宙を舞う。手にしているのは爆裂の矢を5本束ねた物だ。それをドラゴンの右翼に向かい投擲する。

と……変化が起きた。三頭の1つが反応し、爆裂の矢を咥えた。

口内で爆発が起き、閉じた口から煙と鮮血が溢れ出る。

「最後ですっ!」

全身から脂汗を流しルッテは矢を放った。キルイーツから得たたった1本の矢だ。

狙うはもう一度の右翼。防がれることを想定し3段重ねの作戦は……口から煙を吐く頭が反応して飛んで来た矢を咥え込んだ。

「「「ウルギィヤァァァアアアア~!」」」

三頭が同時に吠えた。

矢を咥えたドラゴンの頭部がボコボコと水ぶくれのように皮を膨らませ……そして弾けた。

『過治癒の矢』

リグの魔法を基に造られたその矢は、キルイーツが魔法使いを殺す為に作った……出来てしまった物だ。

相手に突き刺さり、相手の魔力を使い治癒魔法を掛け続ける。

だからこそアルグスタはそれをルッテに預けた。

古くから大型のドラゴンには一定の魔力が宿っていると言われている。巨体を維持する為や、誕生時に魔力が関係して居るなど色々と言われているが理由は分かっていない。

ただ魔力はあるはずなのだ。その魔力を使い回復させられ過ぎたドラゴンの頭が吹き飛んだ。

「って、2回も防御とか詐欺だろう~!」

今起きたことを見て、思わず僕は全力で叫んでいた。

3段重ねに対応されたら終わりなんですけど! と言うか1発目の後の叔母様の攻撃に『まだまだっ!』とか言いながら反応して、で3発目を食らって落ちて来いよ! 世のベタなシナリオを打破するなって!

宙に居るツインヘッドになったキング様がこっちを見る。

ヤベ~。完全にロックオンされたっ!

「ルッテ! 死んだか?」

「生きて……ひゅ~」

変な声が帰って来たんですけど!

魔剣を持って急いで向かえば、ルッテは蹲りガタガタと震えていた。

苦しそうな様子で呼吸が上手く出来ていない様子だ。

「叔母……なぁ~!」

呼びかけた言葉を無理やり叫びに変える。

叔母様だってもう限界だ。あの足で大ジャンプをして無事な訳が無い。

せめて2人を逃がさないと。でも……。

「プルル」

「……何故に居る?」

聞き慣れた声に顔を上げたらナガトが居た。

どうやらその背には叔母様が抱き付いていた。

「任せたぞナガト」

「プルル」

ルッテもナガトの背に上げる。

「叔母様……とりあえず撤退で」

「アルグスタ?」

「僕はもう一発かましてから逃げます」

「そう言う訳にはっ!」

バシッと叔母様の足を叩いて黙らせる。

分かっている。説明は聞いたからこの国に僕の祝福がどれ程必要か。

「ナガト。行け」

「……」

鼻先で僕の額を突いて我が家の愛馬は駆けて行く。

あんにゃろう……絶対にご主人様を格下扱いしてやがるな?

でもそれで良い。それで良いから2人を連れて行け。

クルッと槍を回して僕はキング様を見る。

分かってる。でも僕の祝福よりもノイエの家族を取り戻す方が大切なんだ。

「ギャーギャー騒いでないでさっさと来いよ! お前なんて怪獣王が居なくても退治してやらあ!」

家族の為なら神様にだって喧嘩を売ってやるさ。

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