軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その人の力を使っても良いわよ

話し合いが終わりシュニットはイールアムを政務室へと呼び出した。

「貴方があれの弁護をするとは思いませんでしたが?」

「ええ。自分もその気は無かったのですが……まあウチには決して逆らえない存在が居まして」

「確かに」

納得するしかない。

スィークを知る者が彼女に逆らうなどという命知らずなことは原則しない。若干1名しているが。

向かい合うようにソファーに座り、シュニットは久しぶりに会う従兄弟と話を続ける。

「今回貴方の母君は?」

「ええ。先ほど診療所から連絡が来まして無理が祟り両足を痛めたそうです」

「あのスィークが?」

国王としての表情などを剥し、シュニットは素直に問い返していた。

「ええ。何でも前々から足を痛めていたそうで」

「そうか。そんな状態で」

「はい。それもあってあの馬鹿者たちの言葉に少々腹が立ちましてね」

軽く笑うイールアムは亡き叔父に似てとても穏やかな人だ。

能力は決して低くない。アルグスタの留守を預かり対ドラゴン小隊を確りと運営してみせたのだ。

シュニットが言葉を発する前に察したイールアムは、笑みを苦笑に変化させた。

「陛下。自分は欲の無い人間なので役職など要りません」

「そうは言っても前王が残した負の遺産が多くてな……手助けが欲しい」

「手伝い程度なら喜んで。ですが役職は正直」

「使える者ほどどうしてこう無欲なのか?」

「欲の強い野心家は陛下のその椅子を狙うでしょうか」

「それ程座り心地の良い椅子では無いのだがな」

今度はシュニットが苦笑して頭を振った。

「それに義母から言われております」

「何と?」

「ええ。『きっとしばらくはアルグスタが悪さをするでしょうから、代わりを務められるようにしておきなさい』と。ですからもうしばらくはこのままで」

「そうか」

スィークを知る者として彼女の指示には逆らえない。

「ならばもう数年して国が落ち着いたら役に付いて貰おう」

「……余程人材が居ないのであれば」

「案ずるな。居ないから今困っている」

「……」

「椅子はそうだな……宰相で良いか?」

本当に軽く言って来る言葉に今度はイールアムが頭を振った。

「陛下それは……」

「案ずるな。貴方なら出来る」

「評価されていると思いましょう」

苦笑いをし、イールアムは返事を先延ばしにした。

ナガトの背で横になり空を見上げる。

遂に1人になったな。最悪は王都に居る王国軍と近衛を総動員してノーマルドラゴンの相手をさせてモミジさんを引っ張って来るか?

その可能性をあの性悪賢者が計算してないとか無いな。何よりリスクと被害を考えたら選べない。なら僕が命がけで相打ちに持ち込んだ方がまだマシだ。

問題は出会い頭に一撃死とかしたら色々と終る。これは帰宅してからあの馬鹿と要相談だ。

勝てば良いんだけど……結局僕は戦うことをノイエに任せて来てたからな。その罰が今か。

「ナガト~」

「プルル」

「ゆっくりで良いぞ~」

分厚い雲が増えてきたからそろそろ雨期のはずだ。

明日が無事に済んだら……ノイエを捕まえて甘々な生活を送ってやる。

うむ。こっそりと特注したミニスカメイド服をノイエに着せてご奉仕だな。誰を呼び出して辱めてやろうか? お姉ちゃんとかレニーラとかノリノリでご奉仕してくれそうだけど搾られるから却下だ。ミニスカを恥じらう人物が良い。やはりファシーか。自殺覚悟で先生とか?

「あ~。妄想してもやっぱ怖いんですけど~!」

暴れるとナガトが振り落とすので我慢する。

明日命がけの戦いをしますって……そんなの無理だよ。怖いし。

泣きながら逃げ出したいけど、でもその気持ち以上にやっぱ皆を取り戻したい。

映画とかで『みんなの為に自分が!』と立候補するシーンとか観て、『凄いな~』と感心することはあったけどそれを自分がする日が来るなんてな。

正直怖くて全身の震えが止まらない。

「でもするんだ」

家族を取り戻すとノイエに誓ったんだから。

「うっし!」

横たえていた体を起こして前を見る。もう屋敷の傍やん。

「全部終わらせてノイエにミニスカメイド服を着せて濃厚なキスをして貰う。うん。明日1日を乗り切る理由としたらそれで十分だ」

死ぬとか生きるとか今考えても仕方ない。

だったら明日の終わりを、ご褒美を思い浮かべて僕は頑張るのみだ。

「ナガト~」

「プルル」

「ノイエが待ってる。行け~」

軽くお腹を蹴ったらドカドカと走り出し暴走しやがった。

「まあまあ」

報告を受けたラインリアが嬉しそうに手を叩いている。

その姿を見つめながら、フレアは背筋が凍る思いをしていた。

あのスィークが戦線離脱したのだ。残るはアルグスタただ1人。

ソファーに横たえている体を起こし立ち上がろうとしたら、小柄な人物が飛んで来た。

「ダメです~」

「キャミリー王妃」

抱き付いて来たのは現王妃だ。お陰でフレアは立てなくなった。

「そうよフレア。貴女に何かがあったらお母さん悲しくて大暴れしちゃうわ」

「……」

喉まで出かけた悲鳴をフレアは飲み込んだ。そんなことをされたら王都が無くなってしまう。

「それにアルグスタが頑張っているのよ」

クスクスと笑いラインリアはキャミリーを呼ぶ。

元気に駆けて行った王妃は彼女に抱き付くと甘えだした。

「夫が妻の為に頑張っているだなんて素晴らしいじゃないの」

「……ですが」

「ええ。確かに危ないわ」

そっとキャミリーを抱いてラインリアは柔らかく笑う。

「でもアルグスタは頑張っているの。とても頑張っているの」

胸の内をキュンキュンさせながら彼女は笑う。

「だから私たちはここから見ててあげましょう。もしそれでもと言うなら……」

スッと目を細め、ラインリアはソファーに座る人物を見た。

「貴女の裁量で8人目だったかしら? その人の力を使っても良いわよ」

「……」

静かに息を吐いてフレアは視線を巡らせた。

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