軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

正直限界だろう

南門の内側に待機させていたナガトに飛び乗りお城へ向かう。

今回に限りナガトがらしく無いほど言うことを聞いてくれたのですんなりと城へ到着し、馬房掃除をしていたメッツェ君を捕まえ向かう先はキルイーツ先生の元だ。

「アルグスタ様っ! まだ仕事がっ!」

無理やり乗せたメッツェ君が背後で騒ぐが詳しい理由は後だ。

「ルッテが怪我をしたっ!」

「……えっ?」

「かなり危ない状況らしいっ!」

それだけで彼は静かになった。

だけど振り落とされないように僕の腰に回している腕が凄く小刻みに震えていて……心が痛くなった。

「ナガト! 大人しく待ってろよ!」

到着するなりナガトに待機命令を出し、急いで治療院へと駆け込む。

メッツェ君が膝から崩れ落ちそうになっているけれど、首根っこを捕まえて無理やり立たせて引き摺って行く。

勝手知ったる何とやらで扉を開いて突撃したら、診察室は無人だった。

チッ! 病室かっ!

急いで病室の扉を開け続け……で居た。

「アルグスタ様?」

困った様子のナーファの表情は……何か前にこんなことがあった気がするな。

「済まん。急いでいたから慌てた。で、ルッテは?」

「えっと……」

両手に包帯を持ちこちらを伺うナーファの目が『またですか?』と言いたげだ。

と言うか今回は言い訳しても良いだろう。押っ取り刀で駆け付けたわけだしね。

ただ上半身裸のルッテは僕が首根っこを掴んでいるメッツェ君を見て完全に凍り付いている。

メッツェ君もルッテの凶悪な兵器を直視して凍り付いている。

そもそもルッテが危ないと聞いたんだけど? ねえ?

「えっと……ルッテの怪我の具合は?」

「はい。肋骨が8本折れて2本が肺に。お父さんが治療して骨は元の位置に。肺は一応穴を塞ぎましたがしばらくは激しい運動は禁止です」

「そうですか」

と言うか大怪我だけど命に別状はないような?

「大変です。アルグスタ」

「のあっ! 叔母様?」

突然横に現れたのはスィーク叔母様だ。

「あのような凶悪な胸がこの世に存在しているとは……大変危険で大変危ないので、お見合い相手やご両親を呼んで理解して頂かないと」

「……その結果ここでちょっとした事故が起きてますが? それと僕も巻き添えに?」

「はて? 『おばさん』と呼ばれたわたくしはどうやら耳が遠くなってしまったようで……」

しれっと叔母様が視線を遠くに。

言いましたか? 僕ってば叔母様のことを叔母さんとか呼んじゃいましたかねえ? と言うかそんなことでこんなことをするとかどうなのよ?

フッと笑ったスィーク叔母様は僕の肩にポンと手を置いた。

「貴方が言った通りその娘は今日で終わりです。ならば貴方は何をするべきですか?」

もう一度僕の肩を叩いて叔母様が廊下へ向かい歩き出す。

「こちらに先に来たので彼女の両親に声をかけ忘れました。事情を説明して連れて来ますので、アルグスタも明日の準備をなさい」

そう言葉を残して叔母様はスマートな女性の姿を見せるのでした。

「何だかな~」

もうそう言うしかないわ。

頑張ったルッテへのご褒美ならケーキをホールで良い気もするけどね。

「で、アルグスタ様」

「はい?」

呼ばれて顔を向けたら……ナーファがとても穏やかな様子で微笑んでいた。

「いつまで女性の裸を見ている気ですか? 少なくともルッテさんは嫁入り前ですよ?」

「ああ。それだったらこれが結婚相手の最有力なんで」

「……ならこの場に居て一番不都合な人物は誰でしょうか?」

「あはは。ちょっと先生と話して来ます」

メッツェ君を投げ捨てて、僕は全力でその場から逃げ出した。

「幸運と言うわけだろうな。革鎧のお陰で密度を濃くしていたあの胸がクッションとなり、偶然にも即死を免れたと思う。そうしておこう」

どうやら小便に行っていたらしい先生は診察室に戻っていた。

ルッテがどうして助かったのかは……まあそうしておこう。面倒臭いから。

「それにしても貴殿の所は本当に面白い人材が集まるな?」

「優秀ならどうでも良いんです。馬鹿は困りますけどね」

椅子に座って脱力しながら話を聞く。

まだ2日目だ。それなのに予言通りこっちは2人も戦力外になった。

後は僕と叔母様だけだ。と言うか叔母様が下手を打つような気がしないから……明日アウトになるのって、もしかしたら僕じゃない?

「にしても2日連続で見たことも無い化け物が王都に迫って来たとか?」

「あはは。ここだけの話なんですけど、後2日続きます」

「……死に急いでいるな。貴殿は」

今日は服装は普通だけど口調がお侍さんチックなパターンだ。

「出来たらもう1人くらい強力な人材が欲しいんですけど、誰か知りません?」

「強力か……居たらこの国は人材不足で困らんだろう?」

「ですよね」

人材不足が痛々しいユニバンス王国なのです。

「まあ強いて上げるとすれば、王宮魔術師のケインズ氏ぐらいか。でも彼は引退したとか?」

「はい。就任する時に『現場仕事はもうやらん。それで良いなら』と条件を出しているらしいんで」

だから強者揃いのクロストパージュ家の人材なのに戦力に出来ない。

出来るんなら貸してるお金を帳消しと言うことで口説き落としたわ!

「ならば後2日……お主が頑張るしかないな」

「それとスィーク叔母さんとですね」

たった2人でドラゴンと言う名の魔改造生物とのバトルだよ。

と、先生が軽く眉をしかめた。

「スィーク氏は正直限界だろう」

「はい?」

えっ? あの無敵超人の叔母様が限界とかって何さ?

腕を組んで先生は渋い表情を浮かべる。

「あの人の祝福はとにかく足を酷使する。ここ最近多用していると聞いて先ほど見たが……本来なら立って歩いているのも限界なほどだ。医者としてならしばらくの安静を命じたいのだがな」

「……」

えっ? ならどうして叔母様は?

すると、ポンと先生が僕の肩を叩いた。

「そんな顔をするな。我ら年寄りは若者の為に老体に鞭打つことなど苦でも無い」

言いながら彼は寂しそうに笑う。

「何より我らが失敗し過ぎたからこそ、若い者たちに苦労を背負わせているのだからな」

本当に重い言葉だった。

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