軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

かなり危ない状況です

太陽が昇り、しばらくして動きがあった。

本日は玄武と言うことで王都の北では無く南だ。玄武なのに南だ。

賢者に『玄武は北の守護獣だよね?』と指摘したら、『あれ? マジで?』とか素な感じで驚いていた。たぶん本気で間違えたのだろう。だが修正はしないそうだ。まあ良い。

『クルクルと回りながら何か来ます』と言うので街道を見つめていると、確かにそれはやって来た。

見た限り巨大な独楽だ。5階建てぐらいのビルが横を向いてグルグル回りながらこっちに来る感じだ。

「街道に穴を掘ったらタコ殴りに出来たな」

「突貫でも無理だと思いますし、する前もした後も大変ですよ?」

正論を吐くルッテとかイラッとするな。しかしその通りだ。

「では本日も無意味であろう第一射をルッテさん……お願いします」

「無意味って言っちゃいましたね?」

祝福を纏わせた矢を渡しルッテが射るが……外皮らしい石に弾かれてどこかに飛んで行った。

「はい終了~」

「諦めないで下さいよっ!」

諦めたんじゃない。この無理ゲーに対して運営に文句を言いたくなったんだ。

「爆裂の矢をあの軸となっている部分に撃ちなさい」

「はい」

叔母様の命令でルッテが巨大駒の軸に向かって矢を射る。

ボンッと矢が弾けてグラグラと駒が揺れ動く。

「効果はありそうですね。何度か続けて転ばせなさい。特に地面との接地点を狙うのです」

「……」

ルッテが半泣きで弓を構える。

流石に今の指示は射手泣かせだと弓に詳しくない僕でも分かる。

それでも弓の弦をキリキリと引き絞ったルッテが爆裂の矢を連射する。

1発2発と……流石に地面との接地点を狙い撃つのは不可能らしい。

「同じ場所に重ねるとは良い腕ですね」

叔母様からお褒めの言葉だと?

確かにルッテの矢は連続して同じ場所に当たり続け、揺れ動く幅が大きくなって巨大な独楽は地面に触れてゴロゴロと回って止まった。

と言うかそろそろ問いたい。ドラゴンの定義って何? どこぞの魔剣馬鹿のように槍を魔剣と言い張るのか?

ちなみにそんな槍は奥の手として持って来ているけど手にしてない。

たぶんあの賢者のことだ。絶対に最終日にとんでもない化け物を持って来るはずだ。

「倒しましたよ? 倒しましたよね?」

「倒れてはいるな」

地面に転がる巨大な独楽。

よくよく見ると駒じゃ無くカタツムリだ。独楽だと思ったのはカタツムリの殻だね。

あれ? カタツムリって……確か殻の中に本体が?

しばらく見ていると殻の中からグニャっとした感じの本体が出て来た。

ナメクジにも見えるあれだね。

僕は幼い頃、カタツムリの殻が取れた物がナメクジだと信じていた。遠き日の思い出だ。

フッと叔母様が僕に体当たりをして来て吹き飛ばされた。

「いたっ」

強かに腰を打って顔をしかめていると、カタツムリが角を、槍を出した。目玉だ。

「目玉で攻撃して来るって何さっ!」

「ですがあれならば貴方の祝福も通じるでしょう」

「確かに!」

物は試しと落ちている石を拾って祝福を与える。全力で投げたら本体を抉った。

「通じはしたけどちょっと大きいかな?」

「ならこれに」

叔母様がエプロンの裏から一本の矢を取り出した。

もうそのエプロンの裏がどうなっているのか僕は聞かない。全力でスルーだ。

「これは?」

「学院で作った試作品とか。名は破裂の矢」

受け取った矢は矢じりの部分が丸い。

破裂と言うことは……この丸がくす玉みたいに破裂するのかな?

「ルッテ生きてる?」

「生きてますから! 絶対に死にませんから!」

あれだけフラグを立てておきながら無傷とは流石ルッテだ。

かなり多めに祝福を与えて破裂の矢をルッテに渡す。

それをキリキリと引き絞ったルッテは放った。

ピィィィィ~と凄い音を発して飛んで行った矢がカタツムリの本体に当たると破裂した。ついでに僕の祝福の効果もあってかなりエグイぐらいに半分ほど抉れてる。

と言うかドラゴンっていったい? 魔改造し過ぎだろう?

半分ほどの体を失ってカタツムリがゆっくりと倒れた。

「どうですか! ちゃんと倒しましたよ!」

弓を抱えてルッテが飛び跳ね喜んでいる。

あれ? これってよくホラー映画とかで見るあれじゃない?

「ルッテ!」

「ふえ?」

慌てた僕の呼びかけに、ルッテが間抜け面をしたまま横移動する。

その口から赤い物を吐き出しつつ、胸に抱いていた弓ごとを押し潰す攻撃は……カタツムリの残った目だ。

「叔母さんっ!」

僕の声と同時にスィーク叔母様が走り、ルッテの襟首を掴んで投げる。

進行方向に存在した岩への一撃は回避したが、あの角度だとルッテの奴……大丈夫か?

意外と落ち着きながら2日連続で走馬灯チックな時の流れを味わいつつ、腰の袋に手を突っ込んで小石を掴んでそれに祝福を与える。

「往生せいやっ!」

全力で小石を投げつけてはまた掴んでと何度も繰り返す。

空腹で目が回りだした頃には膝から崩れ落ちて地面に座り込んだ。

「あ~っ!」

フラグに気を取られ過ぎてルッテへの配慮が疎かになり過ぎた。

本体を半分失って動くとか本当にあれはドラゴンかよ?

空を見上げて空腹で目を回していると、スッと叔母様が戻って来た。

「ルッテは?」

「命に別状は無いと思いますが、ろっ骨をかなりやられていますね」

そうすると肺が危ない。ルッテの奴は血まで吐いてたし。

「大至急キルイーツ先生の所に。代金は僕に回しておいて」

「ええ。なら情けない表情を戻しこれを食べて、ちゃんと敵が死んでいるか確認なさい」

「……はい」

その通りだ。僕が油断したからルッテが怪我をした。

受け取ったパンを齧り続けて空腹を紛らわし、僕は何度か石を投げつけ……殻の奥まで完全に滅した。

とどめを刺し終えて軽く休憩していると、音も立てずにスィーク叔母様がやって来る。

「アルグスタ。問題発生です」

「はい?」

「あのルッテと言う娘がかなり危ない状況です」

淡々と告げられる言葉に僕の背筋が凍った。

「わたくしは彼女の両親を呼びに行きますので、貴方は彼女のお見合い相手を」

「わっ分かった」

空腹で震える足を動かし、僕は急いでお城の馬房へと向かった。

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