軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

する。だからください

ポーラは大人しかったけどノイエの抵抗は酷かった。

『一緒に行く』とずっと言ってくれたけど、今の彼女は異世界召喚が使えるただの女の子だ。一般的な基準だとそれでも規格外だろうが、でも今のノイエは普通なのだ。

だからポーラと同じで戦場には連れて行けない。

ギュッとノイエを抱きしめて僕は求める。『今夜帰ったら膝枕してね』ってね。

だって僕は無事に帰って来るし、そして最終日まで勝って終わるのだから。

夜が明ける前に出かけて行ったアルグスタを見送り、ポーラはノイエがベッドで眠るのを確認してから自分の部屋に逃げ込んだ。

怖かった。髪の毛の色を変えてアルグスタと言い争っているノイエが。

何より彼女がアルグスタを苦しめている存在なのだと理解出来た。

大好きなノイエなのにとても怖くなって……ポーラはベッドの上で膝を抱えて涙する。

どんなに考えても何も分からない。自分が弱いから、幼いから、結局何も出来ない。

大好きな兄も大好きな姉も……あんなに苦しんで頑張っているのに、自分はこうして膝を抱いて泣いているだけなのだ。

「ぐすっ……ぐすっ……」

分かっている。泣いても何も解決しないと。分かっているのに……涙が止まらない。

「わたしもまほうとかつかえたら……」

望むのは力だ。大好きな兄や姉の手助けが出来る力が欲しい。

「なら貴女にとっておきの力を教えてあげようかしら?」

不意に耳に届いた声に視線を向けると、いつの間にかに椅子に腰かけた女性が居た。

初めて見る人だ。栗色の髪をした……目を閉じた女性だ。

「貴女が望むならとっておきの力をあげる」

「ちから?」

「そう。それがあれば大好きなお兄ちゃんやお姉ちゃんも護れる力よ。欲しくない?」

「ほしい」

迷わなかった。ポーラは抱きしめていた膝を解いて相手に詰め寄る。

「ほしい。わたしは……なにもできないから」

「ええ。今は何も出来ないけれど、私と契約してくれるならとっておきの力をあげる」

「する。だからください」

「良いの?」

「はいっ!」

真っすぐで純粋な視線に自然と頬が緩む。

自分はユーアのように子供など産まなかったが、もし子供が産まれていたらこの子のような娘が欲しかった。

ただの無いもの強請りと分かっていても。

「なら契約……と言うよりも約束ね」

「やくそく?」

「ええ」

ゆっくりと瞼を開いて……刻印の魔女はポーラを見る。

「私の正体を家族以外には決して口にしないこと。そうしたら貴女に 魔眼(とっておき) をあげるわ」

「いわない。だから」

「良い答えね。ならこれから少しずつ貴女に力を授けてあげる」

「はい」

ユニバンス王国王都・"南門"

「アルグスタ様?」

「何かルッテには、名前を呼ばれてばかりな気がするな」

「そう言われても……」

「あれだよ。変化を求める」

「……面倒臭い」

「あん?」

視線を向けたら全力で顔を背けやがった。

出会った頃のルッテはもう少し素朴だった気がするが、すっかりミシュに毒されて。

「ってミシュとマツバさんは?」

「昨日の閉門前に南部に向かったそうですよ」

「……逃がしたかっ!」

大失敗だよ! ミシュは仕方ないとしてもマツバさんなら交渉次第で戦力に出来たのに!

実家の許可を得る以外の交渉は……あれだ。中世の世にあったと言う処女税だな。映画で見た。

領主が領内の女性の処女を奪うというクレージーな奴だ。それをマツバさんにミシュ限定で……縛れたよな? 大後悔だよ!

まあこっちはその権利を与えるだけで、ミシュが拒否して逃げたら僕のせいでは無いのでスルーすれば良いしな。

誰かが言ってたしな。『勝てば良いのだよ勝てば』と。今回は手段など選んでいられない。

「そんな訳でルッテがたぶん死ぬかもだけど最低でも相打ちで!」

「嫌ですよ!」

何故か全力で拒否して来たよ。この子は。

「だって私はこれが終わったらメッツェさんとお見合いをして告白されるんです! そうしたら結婚です! 結婚して幸せになるんです! 明るくて幸せな家庭を作るんです!」

全力で死亡フラグを立ててる気がするけど……まあルッテだ。死にはしないと思いたい。

と、荷物を抱えた叔母様が姿を現した。

「遅かったですね?」

「ええ。学院に国王命令でこれの製造を」

そう言ってスィーク叔母様が差し出して来たのは爆裂の矢だ。たぶん。

「つまりアーネス君たちが徹夜で作ってくれたんだ」

感謝だな。恋人のモミジさんは馬車馬のように働いているからこれが終わるまでは逢うことも出来ないしな。

ただ今回は本当に僕の我が儘だ。と言うかウチの家族の問題だしな。

それに巻き込まれた人たちには終わってから感謝しつつ何かしらのパーティーでも実施だな。

肉か。肉だな。リクエストもあったしな。

「ルッテさんや?」

「何ですか? 死なないですからね!」

「君のおっぱいクッションなら敵の攻撃も弾くだろう」

「って最近露骨ですよ!」

「そう騒ぐな」

露骨と言うか出会った頃から比べると、ルッテの胸が2回りくらい大きくなった気がするんだよね。

「今回のこれが終わったら盛大な焼き肉祭りを開催しようと思っているのだが、ルッテの伝手で牛とか豚とか手に入らない?」

「牛ですか?」

「そう」

「……休みを頂ければ狩って来ますけど?」

はて? 今の言葉は絶対に『買って』じゃないよな? 買うなら休みなど要らんはずだ。

「君の休みは終わってから要相談だな」

「何でですか!」

頭に血が上り過ぎてて忘れているだろう?

「お見合いを後回しにして良いの? だったら」

「もうアルグスタ様ったら~。お見合いが最優先ですよ」

ルンルンと踊り出したルッテは放置しておこう。

で、異様に静かだと思った叔母様は何を?

「スィーク叔母様? さっきから何を?」

「ええ。後世の為にわたくしの自伝を残そうかと思い、最近はこうして書き留めているのです」

どれどれ。

『アルグスタは、胸の大きな娘をたぶらかし、言葉巧みに働かせるのでした』

「この自伝は編集して表現を柔らかくして頂けますか?」

「要相談ですね。主に金銭的な意味合いで」

「言い値で良いです」

「分かりました。アルグスタの部分は表現を柔らかくしておきましょう」

斬新な脅しを受けつつも僕らは2戦目の朝を迎えた。

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