軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

にいさま? だれと?

本日ノイエとポーラは自宅に居るので、馬車では無くてナガトの背に乗り帰宅する。

砦っぽい屋敷の外には近衛の小隊が護衛のために駐留しており、ウチのメイドさんが食事などを振る舞っていた。

《まっ無事に終わった》

玄関前でナガトから降り、鞍を外された我が家の馬は勝手に馬小屋へと行くのだ。

ノイエの躾の賜物だが……まあ良い。最近は僕の本気を感じてかあの駄馬も静かだから許そう。今度何かやったら絶対に去勢して騙馬にしちゃる。

「ただい」

「にいさまっ」

「ま~?」

玄関開けたらポーラが突撃して来た。

真っすぐ鳩尾に額が、頭突きがね……軽く咽ていると、ポカポカとポーラが僕を叩いて来るのです。

何故でしょう?

「どうしたポーラ?」

「……ぐすんっ」

泣きながら叩いて来る様子から今日の一件がバレたか。

と言うことは……ゆっくりと顔を上げて廊下を見ると、ボロボロと涙をこぼすノイエが居た。

アウチ。明日もあるのに……神よ。僕は何か悪いことでもしましたか?

ぐずぐずと泣くポーラの手を引いてノイエの元へと向かう。

優しくて心配性なノイエだけど流石に何も言わずに厄介なドラゴンと戦ったのは怒ったかな? 良し。一発ぐらいなら殴られよう。

覚悟を決めてノイエの前に立つと、彼女はそっと僕の胸に寄りかかって来た。

「いや……」

ブルブルと肩を震わせ、ノイエが弱々しい声を放つ。

「どうして……」

ゆっくりと上がった顔は完全な泣き顔だ。

泣き顔が表情だと言うなら今のノイエは僕に表情を見せている。

好きな人ならば一番させたくない表情だけど。

「アルグ様……消えちゃいや」

腕を伸ばし僕の背中に手を当てたノイエが顔を押し付けて泣く。

消えちゃいやか……確かにノイエから見れば全てが消えて無くなったように見えるのかもな。

家族も、家族から貰った力も、何もかもが。

掴んでいたポーラの手を離しノイエを抱きしめる。

「ノイエ」

「……」

「大丈夫。本気のアルグ様は強いんだから!」

ギュッと抱きしめて断言する。

「ちょいとドラゴンをぶっ飛ばして、ついでにノイエの家族も取り戻すから」

抱きしめていた腕を解いて彼女の頬を両側から包むように手を当てる。

軽くノイエの顔を上げて、正面から彼女を見る。

「全部終わったらノイエは笑顔で僕にキスしてくれれば良いよ。それが最高のご褒美です」

だから今日はそっとノイエの額にキスして我慢です。

「信じてノイエ。僕は消えないから」

「……みんなも」

「大丈夫。ノイエの家族は僕が取り戻すから。絶対に」

「……はい」

まだノイエの涙は止まらない。

分かってる。ノイエはずっと悲しみを……絶望を抱えて来たんだ。

信じていた。大好きだった家族が消えて、悲しくて悲しくて。

それでも魔眼には家族みんなの魔法があった。それを頼りに頑張って来たんだ。

「大丈夫。あと3日でノイエの家族を取り戻すから」

僕の中では決定事項だ。どんな無茶をしても叶えてやる。

ノイエとポーラが無言で甘えて来るのは何と言うか心に来るものがある。

それでも泣きつかれて大人しく寝てくれたから、

「出てこいや。この嘘吐きがっ!」

「あら酷い」

スッとノイエの髪が栗色になって、彼女は抱いていたポーラを離して起き上がった。

「強かったでしょう?」

「ドラゴンは? ドラゴンと言う言葉は何処に消えたの?」

「はぁ? でっかい爬虫類なんてドラゴンみたいな物じゃないの?」

呆れながらもクスクスと笑う相手が無性に腹立たしい。

静かにハリセンを出して僕は振りかぶった。

「ってっ! ちょっとっ! あれよっ! 軽いっ! 冗談っ! だってっ!」

「……」

「と言うかっ! 滅竜がっ! あるのはっ! 知ってるっ! からっ! その対策にっ!」

「……」

「ねえっ! 聞いてるっ! あの~っ! 無言でっ! 叩かれるっ! のってっ! ちょっとっ!」

「……」

「何かっ! ごめんっ! あれはっ! 今日だけっ! だからっ! 無言でっ! 殴りっ! 続けっ! 無いでよっ!」

それからしばらく無言で殴っていたら相手が膝を抱いて泣き出した。

別にハリセンが痛かったとかは無い。相手の体がノイエの物だからソフトタッチで叩き続けただけだ。

「ちょっとした冗談じゃないのよ。ちょっとはやり過ぎたかもだけど、でもそっちの手の内は分かってるから対策しただけなのに……グスグス」

「泣き真似は良いから答えろや。明日もドラゴンじゃないとか言ったら無言ハリセン再びすっからな?」

「……明日からはちゃんとドラゴンよ」

やはり泣き真似だった。

涙1つ溢しもしていない顔を見せた。

「ただしそっちの祝福と仲間にするであろう人は予想してたから対策はバッチリだけどね!」

「おい。まさかドラゴンと言う名の別物じゃ無いだろうな?」

全力で顔を背けて口笛を吹き始めやがった。全力で殴っても良いだろうか?

「倒せる物なんだろうな?」

「ちゃんと倒せるわよ? 知恵と勇気と努力と根性と少しの友情があればだけど」

クスクスと笑い賢者は僕に指を向ける。

「でもこの手の戦いって仲間が1人ずつ倒れて行くのが醍醐味だと思うの!」

「最終日に一騎打ちをさせる気か?」

「うんうん。だから頑張って魔改造した逸品を準備したのだから頑張ってね!」

良し決めた。

「……なあ」

「何かしら?」

「全部終わったら1回出て来い。全力で、グーで殴ってやる」

「キャ~。襲われる~」

ベッドの上をコロコロと転がる相手が憎たらしい。

と、彼女は起き上がり余裕な様子でクスッと笑う。

「明日は玄武。装甲の厚いタイプ」

「なら装甲ごと」

「装甲は全てただの岩だから」

はい終了です! だから僕の滅竜は石とか挟まれると通じないんだよ!

「頑張って倒してみせなさい。それとも命惜しさに諦める? それならこの左目の中を全て消し去るだけで許してあげるわ」

「ふざけるな!」

そっと右手を伸ばし相手の襟首を掴む。

「ノイエの家族は僕が救う。それは決定事項だ!」

「そう。なら精々頑張りなさい」

冷ややかに笑いノイエから色が抜けた。

眠っているノイエを抱きしめてその耳元に口を寄せる。

「ノイエの家族は絶対に取り戻すからな」

そっと目を閉じて震えてしまいそうな何かを我慢する。

《にいさま? だれと?》

今見聞きしたことは何だったのか……ポーラには分からなかった。

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