軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

寂しげに……とても寂しそうに

「おいちょっと待て。何がどうしたら僕の役職が増えて面倒臭いことになるのか説明を求む」

「知りませんよ~」

チラチラとこっちを見るクレアがとっても気楽な返事を寄こす。このお子様がっ!

だが怒っても仕方ない。これは決定事項だ。変更は無い。

「まあ良い。ぶっちゃけ現状上司が陛下ただ1人となる状況は決して悪くない。考えようによってはかなり無茶が出来るから悪くない。むしろ好都合か?」

国軍と近衛を好きに動かせるとは……ふはははっ! これならばノイエが活動不能のこの状況下でも上手いことやりくりできるかもしれない。むしろ好機ととらえよう。

ここでもう一度ノイエ不在の状況をどうやり過ごすのかをじっくりたっぷり味わっておけば、彼女が妊娠した時に問題無く産休に入れるってことだ。

「良く分からんがやる気出て来た~」

滾るぞ! 今の僕なら一晩どころでは無く二晩だってお嫁さんを愛でることが出来るだろう!

「そんな訳でノイエ」

「……はい」

「今夜から開き直って子作りを頑張ろうと思います。どうでしょうか?」

「……」

僕の膝の上に座っているノイエは何も言わずに抱き付いて来る。

普段の鎧姿ではなく、貴族の夫人として恥ずかしくない程度のドレス姿だ。

本当ならいつものワンピースでも良いかなって思ったんだけど、陛下に会う可能性もあったからドレスにした。

ただ彼女はずっと僕に抱き付いて離れない。時折涙を溢しては体を震わせて抱き付いて来る。

今まで存在していた物が無くなり、何よりドラゴン退治が出来なくなったこともあって……パンクしてもおかしくないぐらいにノイエは追い詰められていた。

「さてと。陛下から厄介な任命書を受け取ったことだし、お仕事しますか」

ウリウリとノイエを撫でて書類の山に目を向ける。

現在国軍は『ノイエ不在時』に定められている動きをしている。

ドラゴンの死体……素材置き場に兵を派遣し防御を固める。で、一か所だけドラゴンの死体を焼いてその臭いと煙で他のドラゴンを集める。後は頑張れモミジさんだ。

彼女なら今日ぐらい頑張ってくれると信じている。

『ドラゴンを全部狩ったら尻が腫れ上がるまで鞭打ちの刑ね』と伝えてあるし、あの変態なら間違い無く頑張ってくれるはずだ。ちなみに刑の執行はアーネス君に任せる。鞭も彼に送り付けた。

《近衛の方は王都の巡回と王城の警護で問題はないね。普段通りの運用で良いはずだ》

サラサラと書類にペンを走らせて書き上げた物を近衛の団長室に運ばせる。

《国軍も様子を見ながらこれで良いな。明日から僕も現場に向かうから、ルッテたちには待機所の警護に人を割いて貰って、残りはモミジさんと一緒に僕とドラゴン退治だな》

共和国に向かう前の経験がここで生きるとは。流石僕だ。

『実はこのことも想定済みだったのだよ!』とか言えたら格好良いのかもしれないけど。

グスッと鼻を鳴らしてまた泣き出したノイエが抱き付いて来る。

良し良しと頭を撫でてやるけど……不安げな彼女は泣き止まない。

「大丈夫だよノイエ」

耳元に口を寄せて彼女に言う。

「必ず元に戻すから。信じて」

「……はい」

鼻を啜り彼女がギュッと抱き付いて来た。

ここまでノイエを泣かせるなんて、あの過保護な家族たちは何をしてるんだか。

心の中でそう思い、もう一度ノイエを抱きしめる。

その可能性が頭の中を横切っては、僕は無視する。

絶対に無い。ノイエをこんなに泣かせると分かっているのに、あの過保護たちが黙って消えたりするものか。たぶん喧嘩でもしているのか、それとも共和国で無茶し過ぎて不具合が出たか……きっとそんな感じだ。そうに決まっている。

《絶対に許さんぞ。あれだな。これが終わったら全員でご奉仕して貰ってハーレムごっことかも悪くない。うむ。何かやる気が出て来た~!》

「お仕事終わらせて今夜はのんびりするぞ~!」

やる気が満ち溢れて止まりませんな。

ノイエが悲しんでいるけれど、でも僕が頑張ってその悲しみを補えば良いだけのことだ。

「あはは~。仕事持ってこ~い」

「アルグスタ様」

「何だ。クレア?」

「邪な笑みを浮かべて何を考えてるんですか?」

失礼だな。僕は常に前向きに物事を考えるポジティブな人間なだけです。

「最初は女の子が良いと良く聞くけどさ……どうなんだろうね?」

「女系で有名なウチにそれを聞きますか?」

「聞く相手を間違えたな。うん」

クレアが『むきぃ~』と怒りだすが、それまでだ。

いつものように突進して来ないのは僕の膝の上に居る存在を見ていられないからだ。

どんなに笑い話をしようとしても、ノイエは泣いたままで……寂しげなままなのだ。

「なまはげが後1体か。サンタも同じね。少しこの中の人間を侮ってたかな」

膝に肘を乗せ、目の前に浮かぶ人形の残数をピンッと指で弾いて消した。

「でも残りの人数はたったの4人。残念だけどこれでお終いね」

クスクスクスと笑い刻印の魔女は目の前に集まる者に目を向ける。

人形を破壊する為に道連れとなり、バラバラにされてしまった者もその魔力から一括りにし封印している。何も預かり知らない所で勝手にバラバラになっていた者も居たが、ここではそれが普通らしいので魔女は気にしないことにした。

「もう少し根性を見せてくれると楽しいのだけど……旦那様の仲間もこれだと難しいかもしれないわね」

そっと息を吐いて刻印の魔女は自身の膝を抱いた。

大陸の北には厄介な竜が居る。それを相手にするくらいならここに居るメンバーでも十分だろう。だがそれ以上に厄介な存在が控えている。

この大陸を、この世界を呪い……異形に姿を変えた親友が待っている。

「待っててねユーア。今度こそ私が貴女を殺す存在を連れて行くから」

呟き魔女は笑った。

寂しげに……とても寂しそうに。

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