軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

めり~くりすま~す

「めり~くりすま~す」

赤い服を着た髭面のそれは、床に転がっている相手に元気良く声をかけた。

だが、むにゃむにゃと口を動かしゴロンと転がった褐色の肌を持つ少女……にしては大き過ぎる胸を持つ彼女はまた寝返りを打って横を向く。

仰向けになると胸が圧し掛かり息が詰まるので横を向くのが自然の動きなのだ。

「ほっほっほっ」

何度か髭面のそれは声をかけるが起きる気配が無いので、少し悲し気な笑い声をあげながら床に転がっている人物を背負う白い袋の中に放り込んだ。

「誰が残ってる?」

問いかけに反応する者は少ない。

それでものそりと起き上がった者を見て、彼女……ジャルスは苦笑いを浮かべた。

やれやれと肩を竦め、立ち上がった女性は妖艶な美女に目を向ける。

「最低ね」

「気にするんじゃないよ」

「本当に……自分の運の無さが嫌になる」

クシャクシャと自身の頭を掻いて、魔剣使いと呼ばれたスハはため息を吐いた。

前の上司は"串刺し"で、今の相棒が"破壊魔"とは……本当に自分の運を疑いたくなった。

「ジャルス」

「何だい?」

「魔剣が無い私はただの役立たずだ」

「分かっている」

答える破壊魔とて左腕を失った状態だ。それでも自分より戦えるとスハは確信した。

ならばすることは決まっている。迷いがない分落ち着いて周りを見ることが出来た。

化け物揃いと言われていた仲間たちが一方的に狩られている現状に唾棄しそうになる。

最初に気づいたのは魔眼の中枢に"対して"魔法を使っている者たちだった。中枢で何かがあってあの魔女が仕掛けた守備的な魔法が解けたのだ。

中枢の様子が明るみになり、その場に居た者たちが無力化されたと知った。

その報は一気に魔眼の中に流れ、深部で腐っていた者たちですら重い腰を上げた。

ノイエの危機は自分たちの危機だからだ。

「敵の数は?」

「最初は6体と3体だったみたいだけど……最後に聞いたのは3体と2体よ」

「流石は化け物揃いと言うべきか?」

「こっちは半数以上食われている。正直じり貧ね」

現状の把握には定評のあるスハだ。

ジャルスはそんな魔剣使いの部隊運営に関しては一目置いていた。

「ならここで敵の数を1つは減らさないといけないみたいね」

「任せた」

言ってスハは足を進める。

真っすぐな通路を歩いて来たのは、藁らしき物を纏った覆面姿の化け物だ。手には包丁らしき物を持っている。

「わるいごはおらんか~」

「あはは……」

紫の髪を振るってジャルスはやって来た化け物に対して笑い出した。

「ここに居るのは全員人殺しの悪い子ばかりだよ! 笑わすなっ!」

声を上げて踏み込んだジャルスは、右腕で掲げるこん棒を頭上へと動かす。

反応した藁の化け物は……横から来た人物に抱き付かれ動きを邪魔される。それでも包丁を振るい抱き付いたスハの背中に刃を突き立てた。

「やりなさい」

「言われなくてもっ!」

ジャルスが振り下ろしたこん棒によって、藁の化け物とスハが一緒に砕かれた。

「あはは……やってられないわね。本当に」

床に座り込んで息を吐く。残って居るのはもう自分1人だ。

一緒に抵抗していたパーパシは、最後の力を振り絞り祝福を使って藁の化け物に抱き付いて仕事をした。

フッと息を吐いて床に転がるパーパシの残骸に目を向ける。しばらくは復活しないだろう。

疲れた体に鞭を打ち……彼女、ミャンは立ち上がった。膝が笑うが掌で叩いて活を入れる。

通路の奥からまた新しい敵が来た。赤い服を着た髭面の化け物だ。

「めり~くりすま~す」

「知らないわよ。何よそれ?」

苦笑しミャンは、胸の前でパンッと両手を合わせて音を鳴らせる。

『ほっほっほっ』と笑う髭の化け物は、ミャンに目を向けず床に転がっている仲間たちを拾い集め、背負っている白い袋へと放り込んで行く。

《なるほどね。それぞれで仕事が決まっているわけか》

そっと手を動かし身に纏う服の一部を破いてそれに焦げ目をつけて暗号を刻む。狙うなら髭と。

生地を床に落としてミャンは残る魔力を振り絞る。

どんな強敵が徘徊していても彼女ならフワッと逃げ出しやって来ると信じている。

だってあの子は天才なのだから……と、ミャンは澄んだ笑みを浮かべた。

「私の仲間を拾い集めて何をする気?」

「ほっほっほっ」

「答えないならそれでも良いわ」

もう一度胸の前で手を叩いて、ミャンはその指をプレートの上を滑らせた。

「舐めるんじゃっ」

「ほっほっほっ!」

魔法を放つ前に髭の化け物は一瞬で移動し、ミャンの下あごを掴んで片腕で持ち上げる。

必死にミャンも抵抗し、相手を腕や足で打ち据えるが……バキッと顎が砕ける音を聞いた。

「あっがっ……」

「ほっほっほっ」

笑いながら白い袋を開いたそれは、ミャンを頭から放り込んで回収するのだった。

「わるいこは~」

「……」

藁を身に纏った仮面をしたそれは……何となく床に存在するバラバラ死体を包丁の先で突いた。

自分がするよりも酷過ぎる所業に何とも言えないリアクションを見せる。

半分崩れた顔に存在する碧眼が動き、藁の化け物をジロッと見つめる。

余りにも凄惨すぎる様子とそれでも動く相手の迫力に圧倒され、藁の化け物は一瞬退いた。

「ほっほっほっ」

笑いながらやって来たのは赤い服を着た髭面だ。

これ幸いと藁の化け物は、やって来た相手に事後を託してその場から立ち去る。

残された髭の化け物は、笑うことを忘れて凄惨な死体……では無くグローディアを見つめた。

本当に嫌そうな動きでグチョッとしているそれを袋に入れると、陽気に笑っていた姿をどこかに捨て去ったかのように肩を落とし、髭の化け物はトボトボと歩き出した。

「あら? 予想よりも抵抗が激しいわね~」

自身が放った捕獲用の人形たちの残数を確認し、刻印の魔女はクスッと笑う。

「それに表も思いがけない方法で彼の援護をして来るし……」

ここまで思い通りに進まないのはいつ以来か思い出してみる。

召喚の魔女と決別して以来かもしれない。

「楽しいわね本当に」

『よいしょ』と声を発して立ち上がり、魔女は改めて顎に手を当てた。

「少し登場の言葉の変更が必要ね。うん」

頷きまた思案しだす。

周りの必死さなど気にせず、彼女はただ暇を持て余していた。

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