軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

言い得て妙だよ

《あの子なら十分に考えられる。でも……》

もしそうならば、ノイエは自分たちが魔眼の中に居ると気付いていることになる。

誰が教えた? 誰も教えていないはずだ。もし教えたのならばセシリーンが気づくはず。

チラリとアイルローゼは床に寝そべる歌姫を見る。

まだ完治していない彼女ではあるが、ゆっくりと眠そうな顔を向け静かに頭を左右に振った。

彼女が認めないなら誰もノイエに告げていないことに……アイルローゼはその可能性に気づいた。

「1人だけ居たわね。私たちに気づかれずにノイエに真実を告げられる存在が」

「……カミューね」

ホリーも気づき相槌を打つ。

「そうよ。あの女なら"神託"を使いノイエに言葉を届けることが出来る。つまりはあれがノイエに教えたと考えれば」

「それはどうかな~」

否定的な声を上げたのはレニーラだ。

「あれがノイエに私たちのことを全部言うとは思わないわ~」

「どうして?」

「だってカミューだよ? あの嘘吐きが素直に教える?」

問われてアイルローゼも一瞬『無いわね』と即答しかけた。

自分の手の内を晒さず、何より最後に全員を騙してみせた性悪女だ。

いくらノイエを護るために……そう言うことか。

「分かったわ」

「アイルローゼとたぶん同意見」

ほぼ同時に気づいたらしいホリーも面白くなさそうな表情を作る。

「何が~?」

「ユーリカの時よ」

レニーラに促されアイルローゼは言葉を続けた。

「ノイエが"拒絶"して外に出れなくなった時があった。たぶんその時にノイエを救うためにあの女が神託を使ってノイエに吹き込んだのよ。『仲間は傍に居る』とか『家族は近くに居る』とか」

「あ~。それを真に受けたノイエが、拒絶するのを止めたお陰でカミーラが外に出れたってこと?」

「そう考えれば辻褄は合う。何よりあの子の場合、馬鹿弟子を救いたいって言う気持ちもあったでしょうから、その言葉を真に受けた。結果として馬鹿弟子が助かった。ならノイエはどうする?」

「『カミューの言った通り、旦那君が助かった~。みんなありがと~』だね。で、いつも通り自分が渡せるものは好きなだけ持って行って状態だ」

他人の為なら一生懸命。自分のことは無頓着。それがノイエだ。

「そう考えると、ここ最近の魔力供給の多さは納得かな~」

「ええ。ただノイエは漠然とお礼をしているだけで、誰に対してとかの認識は無いでしょうけど」

「あはは~。ノイエらしいな~」

そう考えると本当にノイエらしい。

「あっ! アイルローゼ」

素っ頓狂な声を上げたレニーラに驚き、1人を除いて全員の目が向く。

「何よ?」

「前に私たちの体をノイエの魔眼に取り込んだって聞いたんだけど」

「ええ」

「……アイルローゼがカミューのことをどこか毛嫌いしてるのって、ノイエ以外にも関係してる?」

恐る恐る問いかけて来るレニーラに対し、アイルローゼはそれはそれはとても穏やかな表情を向けた。

「どうしてそう思ったのかしら?」

「あ~うん。だってノイエ……ここに居ない人の魔法とか術式とかも使うよね? だからかな」

好奇心より恐怖が勝ったレニーラはそれ以上の言葉を止めた。

とてもとても穏やかに微笑むアイルローゼが恐ろしくなったのだ。

「魔眼の能力ね」

頭を掻きながら、ホリーはつまらなそうに口を開く。

その様子は施設に居た頃と変わらない。ホリーは家族以外の者に対して基本心を開かない。

「本来の魔眼は魔法を奪い食らう物。そう私たちはカミューに教えられた」

「あ~うん。そうだね~」

「でも実際は何でも食らう物だった」

そっとレニーラに目を向けホリーは口を開く。

「魔眼は私たちを肉体ごと食らった。その魔法や術式、体内のプレートに刻まれた全てに至る『魔法』に関するモノ全てをね」

確かに魔眼は魔法に関する全てを食らったとも言える。

ただ範囲に『肉体ごと』と言う規格外のことが含まれていたが。

「でも食らわない者も居た。食らう必要のない者も居た。こればかりはカミューじゃないと、どう取捨選択したのかは分からない。

ただ普通に考えれば私やレニーラは本来ここに必要のない存在のはずなのよ」

中途半端な魔法を使うホリーと魔法すら使えないレニーラ。それ以外にも魔法以外の能力に優れているセシリーンなども『魔法』との関係から見れば要らない存在だ。

「それでホリーはどんな可能性を導き出したのかしら?」

「つまらない答えよ。術式の魔女」

クスクスと笑い彼女……ホリーはその表情を冷たくする。

「カミューもノイエも選んでいない。誰を食らうかなんてね」

「……」

「食われた私たちの方が望んだのよ。しいて言えば未練かな?」

苦笑しホリーは小さく息を吐いた。

「あの日あの時……私たちはカミューの申し出を飲んだ。それしか選択肢が無かった。

だけどあの場でどれほどの人間が『これからも生きたい』と願った? 死にたくないと願った者も居るだろうし、何より1人残るノイエの身を案じた者も多いはずだ」

チラリと視線を巡らし、ホリーはずっと静かな化け物……エウリンカを見る。

涎を頬に走らせ眠る彼女はたぶんどちらにも該当しない。

「生きて自分の欲望を満たしたいと願った者も居るはずだ」

どちらにも該当しないが、『凄い物を作りたいんだ!』が口癖だったエウリンカなどは未練の塊だった。

「たぶんあの日魔眼に飲まれなかった者は、素直に旅立つことを望んだ者たちだ。だから魔眼は彼ら彼女らの『魔法』を食らい、そして未練ある者はそのまま食らった」

鋭く息を吐きホリーはやれやれと肩を竦める。

「カミューの言う通りだよ。『最低だけど最悪ではない方法』だね。言い得て妙だよ」

アイルローゼもその呟きに苦笑して軽く頷いた。

自分が望み残ったのだ。ノイエの魔眼では無く、この世と言う場所に。

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