軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

頑張れ大きなお兄ちゃんです~

「今日も天気が良いです~」

「そうだな」

「シュニット様は元気が無いです~」

「そうだな」

苦笑し政務室に向かい歩く彼の横を、ちょこちょこと王妃が付きまとう。

普段なら一緒に朝食を摂ってから、彼女は壁に隠された隠し扉を開いてどこかに行くのだが、今朝は一緒に政務室へ向かう。

普段の口調や立ち振る舞いから王妃キャミリーの評価はとにかく低い。

『お飾りの王妃』や『名ばかりの王妃』など何も知らない者たちは彼女のことを陰でそう言う。

本当の彼女を知れば全員が震え上がるであろうが。

政務室に入り、シュニットはまず人払いをした。

護衛である者たちに出入り口を護らせ、彼女と2人きりの空間を作ったのだ。

「お前が朝からこちらに来ると言うことは……ハーフレンの仕込みが終わったのか?」

『コホン』と小さく咳払いをした少女は、その目に穏やかだが冷たい知性の色を湛える。

「副官のコンスーロが頑張ったご様子で。途中からメイド長が抜けたのが響きましたが、アルグスタ様の部下であるイネルにこっそりと仕事を回しどうにか」

「アルグスタがそれを知れば嫌がらせを受けるだろうに?」

「ですがどうにか準備は整ったみたいです」

丁寧な手つきで紅茶の支度をし、キャミリーは夫の為に茶を淹れる。

洗練された立ち振る舞いは普段の彼女では無く、ユニバンス王国王妃として恥ずかしくない姿だ。

「なあキャミリーよ」

「はい」

「今回のハーフレンの行動は、国内の 貴族たち(ばかもの) の視線が集まると思うか?」

「思います。何より彼が申し出た通り、一度確りと貴族たちの調査をするべきです」

「確かにな。ただ近衛の職務として考えれば逸脱しているが?」

「それは仕方ありません。ですが彼はとても便利な肩書を持っています」

「"王弟"か」

「はい」

ソーサーに乗せたカップを机の上に置き、夫の元に来た王妃は迷うことなく彼の膝の上に座った。

「国外からの賞金稼ぎと暗殺者は日々狩られているらしいな?」

「そう報告が上がっています」

「まさかあのエバーヘッケの問題児が猟犬とはな」

アルグスタの部下である彼女を使う為にハーフレンはその正体をシュニットに伝えた。知ってしまえば近衛団長からの申し出を断ることが出来ず、現在ミシュは『国王命』で活動している。

「騙されましたか? シュニット様?」

「ああ。女とは本当に恐ろしい生き物だ」

「……その言葉は少し傷つきます」

「そうだな」

少し頬を膨らませ夫である彼に体を預けた王妃は、そっと小声を発する。

「アルグスタ様はまだ何か隠しています」

「そうか」

「……御存じなのですか?」

「知っていることもあるが、知らないこともある。その程度だよ」

「そうですか」

柔らかく笑い体勢を変え、キャミリーはそっと夫の頬に唇を寄せた。

「では私はいつも通り"仕事"をしてから彼の元に」

「そうか」

夫から離れると彼女は小さく咳払いをし、いつも通りの屈託のない笑みを浮かべた。

「今日こそは祝福を持った人を見つけるです~」

「頑張ると良い」

「はいです~」

元気に駆けだし政務室を飛び出して行った。

その背を見送ったシュニットは、今一度女の恐ろしさを噛み締め……仕事を開始した。

「ふぇ?」

何だかとっても嫌な言葉が耳に届いたよ?

「あの馬鹿兄貴。最近そんなことの仕込みをしてたの?」

「そうです」

一緒にソファーに座りケーキを食べているイネル君の話に、僕としてはため息しか出ない。

王国の南部は独立志向の強い貴族が何故か多い。

その貴族たちを相手に『調査』だなんて、下手したら山盛りで暗殺者を送り込まれるぞ?

「暗殺者に怯える生活とか息苦しいだけだけどね……馬鹿なんだろうな」

「共和国から過去最高額の懸賞が掛けられている人の発言には重みが……いふぁい」

クレアが失礼なことを言うのでハリセンボンバーを一発お見舞いしておいた。

迷うことなくクレアは隣りに座る夫に甘えだすがいつものことなのでスルーしておく。

「でもでもシュニット様も乗り気だったです~。頑張れ大きなお兄ちゃんです~」

いつもながらに勝手に混ざってケーキを食べている安定のチビ姫だ。

「にいさま」

「ん?」

「なにをするのですか?」

会話についていけないと言うか、内容がまだ把握しきれないポーラが小さく首を傾げている。

それでも質問して学ぶ意欲が強いだけに聞かれると嬉しくなる。

「近衛は分かるね?」

「はい」

「それを動かして南部の貴族たちの色々な状況を調べるんだよ」

「あんさつしゃはなぜですか?」

僕が襲われる可能性があると知ってから彼女の剣術と魔法の鍛錬は凄まじい。

最近はこうしてお茶の時間に誘わないとずっと何かしらの鍛錬をしている。

ただその質問にはどう答えれば良いのか悩まされる。

「悪いことをしていると、それを暴かれたくないでしょ?」

「はい」

「だから隠したいと思っている人からすれば、馬鹿兄貴の行動はとても嫌なことなんだよね。だからそんな馬鹿なことをする人が居なくなれば……と言うことで暗殺者を差し向けるのです」

「分かりました」

納得してポーラはまたロールケーキと戦いだす。

「南部だと噂に聞くフルストラー家が一番抵抗しそうだな」

「ですです~。それにミルンヒッツァ家もやらない訳には行かないので、後で家庭内で揉めそうです~」

何故かゴシップネタを嬉々として語るチビ姫です。

夫婦間がギクシャクするのって本当に大変なんだからね?

「まあ僕らは関係ないしのんびりしましょう」

うんうん。頑張れ近衛。ウチは外から応援、

「何を言ってるです~? アルグスタおにーちゃんも仕事が増えるです~?」

耳の下を叩いてノイエを呼び出し、向かう先は近衛の執務室だ。

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