軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

君たちは何気に仲が良いね

「……」

あれ? おかしいぞ?

こっちを見つめて来る小さなメイド……ポーラが見えない尻尾を振っている感じに思える。

今日も今日とて軟禁では無くお仕事ということで執務室に籠っていると、ポーラが一生懸命に魔法語の書き取りとかしている姿が見えた。

何気なく『ポーラ。どれぐらい書けているかお兄ちゃんが見てやろう』とか先輩風を吹かせて言ってみた訳だ。で渡された物を見て僕の背中の冷や汗が止まらない。僕より巧いだと?

「どうですか?」

「アア。ヨクデキテルヨ」

「ほんとうですか」

嬉しそうに笑うキラキラとした瞳のポーラの真っすぐな視線に僕は耐えられない。

違う。これはあれだ。才能とかそう言った物があれしてこれしてそれした結果だ。

つまりポーラは天才なのだ。ならば仕方ない。だって天才だもの。

「これならイーリナさんだっけ? 彼女も弟子入りを許してくれるんじゃないかな?」

「……」

でもポーラはシュンとなる。

「メイドちょうさんが、『まだまだ』って」

「あそこの流派はスパルタだから。決して甘い言葉など」

ゾクッ

急な寒気に後ろを振り返ると、窓の向こう側……遠い所で宙に居るノイエの目がこっちを見てた。

大丈夫。色はいつも通りだし、それにファシーが言うには最近アイルローゼは奥に引っ込んで調査だかしていると言ってた。だから気のせいだ。気のせいなのだ。

「まあメイド長の魔法基礎はこの国でも上位に入ると言うしね。もっと頑張ると良いよ」

「はい。がんばります」

キラキラと目を輝かせてポーラが凄いやる気を見せる。

ヤバい。最近色々とサボり過ぎてて僕の鍛錬も疎かだ。

やらねばならん。命が惜しいなら死ぬ気でやらねばならん。

「ん~。ノイエの~変化か~」

フワフワと上半身を揺らすシュシュは、座ったままで落ち着きがない。

ただ何故か背後にホリーを連れているのが分からない。

理解するより納得するエウリンカは、ホリーの存在を無視してシュシュに問う。

「君はノイエと親しかっただろう?」

「ん~。ノイエに~あれを~してから~カミューに~睨まれて~たから~ね~」

「あれとは?」

「ノイエを~どんな~ことが~あっても~動じ~ない~女に~しようと~した~だけ~だよ~」

鶏小屋に放り込んだり、豚小屋に放り込んだりしたことだろう。

頷きエウリンカは話を変える。

「ならば外に出ていて違和感を感じなかったかね?」

「違和感~?」

「そうだ。アイルローゼたちが外に出れるような魔法を作ったのはそう昔では無いらしいが、それでも君はだいぶ初期から外に出ていたと聞いた」

エウリンカ自体それを知ったのはつい最近ではあるが。

「ああ~。最初は~魔力の~問題で~出れる~人が~少な~かった~からね~」

「そう聞いた。だから知りたい。前と今……違いを感じるかね?」

「ん~」

軽く首を傾げるシュシュの様子からして空振りかとエウリンカは思う。

だが予期せぬことが起きた。シュシュの背後に居るホリーが軽く手を挙げたのだ。

「気のせいか前より消費する魔力が減ったわ」

「あ~。それは~ある~かも~」

「本当かね?」

「ええ。ただ数字で見える訳じゃないし、何よりアイルローゼが暇を見つけては手直しをしていたから一概にそうとは言えないけれど」

「でも~。旦那さんが~来てから~かな~」

ククッと首を傾げシュシュは一度口を閉じた。

「違う~。アイルローゼが~引っ張られた~時から~だいぶ~楽に~なった~かな~」

「私を見ないでよ。表に出るようになったのは去年からなんだから」

「ふふ~。私は~ちょくちょく~出てた~ぞ~」

ホリーは興味を覚えたノイエの夫と関わるようになってから外に出るようになった。その前は一度だけ出れるのかを確認するので出たくらいだ。

シュシュは最初の頃からちょくちょく出ていた。

本当に出るだけで特に何もしていない。ノイエの体を動かし放置して帰って来るだけだ。

「あ~」

何かに気づいたシュシュが背後を見るが、彼女の顔の動きに合わせて移動するホリーを見つけることは出来ない。

一瞬動きを止めたシュシュは、魔法を使いまた振り返った。

綺麗に封印され無力化されたホリーが転がっていた。

「最近~ホリーは~よく~外に~出て~たね~」

「……エウリンカの魔剣のお陰よ。魔力の回復が早くなったから」

「待ってくれ」

ホリーの言葉にエウリンカはシュシュが言わんとしたことに気づいた。

「君たちに渡した魔剣はそこまで優れた物ではない。しいて言えば回復力を若干上げる程度だ」

「……」

魔法以外の知識であればノイエの中では一番のホリーもその言葉を受けて理解した。

「つまり私たちの魔力の回復が早くなっている?」

「そう考えれば納得出来るが……」

顎に手を当ててエウリンカは思案する。

自分が改めて手を加えたノイエの魔剣にそのような効果はない。

「どうも自分たちが把握していない力を感じるな」

エウリンカとしてはそう結論を出すしかない。

ワシワシと頭を掻き出しエウリンカは改めて目の前の2人に目を向けた。

捕らえたホリーの口を封じ、足の裏をこちょこちょするシュシュ。

そのくすぐりに全身を震わせ艶めかしい姿を晒すホリー。

「君たちは何気に仲が良いね」

そう言ってエウリンカは呆れた。

「私の耳だとそんな変な音は拾っていない」

「そう」

「拾うのはノイエの呟きぐらいかしら? それもちゃんと報告しているでしょ?」

体の一部が生々しい骨格標本状態のセシリーンは、気怠そうにアイルローゼを見る。

治りかけが一番眠い……それは中に住まう者の共通した認識だった。

「眠そうね」

「ええ。だから抱き枕を待っているの」

「枕?」

「そう。今はカミーラの所で魔法の基礎を学んでいるわ」

ファシーだと理解しアイルローゼは苦笑する。

「貴女が弟子にすれば良かったのに」

「私の弟子はあの馬鹿2人で十分よ」

「そう言うことにしておいてあげる」

弟子を亡くす恐怖を拭えないアイルローゼがこれ以上弟子を取ることは今のところ無さそうだ。

彼を弟子にしたのもノイエが必ず護ると信じての行為だ。

「あら? エウリンカが貴女を探しているわ」

「何か気づいたのかしらあの化け物は」

面倒臭そうに歩き出したアイルローゼに、セシリーンはふとそれを思い出した。

ずっと前から不思議に思っていたことを。

「ねえアイル」

「なに?」

「ノイエの魔眼の"右目"ってどうなっているのかしら?」

「……右目?」

足を止め魔女は振り返る。歌姫と呼ばれる彼女は軽く首を傾げた。

「私たちが居るのは左目でしょう? だから右目がどうなっているのか気になって」

「……」

アイルローゼは新しい手掛かりに薄く笑った。

「あら? そこまで気づいてたんだ」

クスクスと笑いその存在は膝を抱いた。

「さあ謎が解けるかしら探偵さんたち」

彼女らとは違い、"右目"から全てを見る存在……刻印の魔女は、改めて意識を左目に向けた。

「もし謎を解いたら、試練とご褒美をあげるわ」

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