軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そして死体も殺す

約束通りにメイド長がやって来たのでシュシュが描いた絵を見せた。

一瞬フレアさんが怪訝そうな表情を浮かべたけれど、『ノイエが描きました』で押し切ることにする。

渋々応じて彼女は手にした絵を丸めると、革製の筒に入れた。

「私はこれをお届けすれば宜しいのですね?」

「です」

「畏まりました」

軽く一礼をして来るフレアさんは今日は辛そうに見える。

呼吸が荒いと言うか、ため息っぽい物が多い気がする。

「馬鹿と喧嘩でもした?」

「いいえ」

サラリと告げた彼女は、一歩こちらに近寄り僕の机の上に存在する紙にスラスラとペンを走らせた。

『そろそろお腹の膨らみで気づかれてしまいそうなので』

こちらに見せるとその紙を手にして魔法語を発して灰にする。

「お屋敷の方の仕事も覚えないといけませんので、もうしばらくしたらこちらに来れなくなるかもしれません」

「それはそれで困る人が多そうですね」

具体的には馬鹿兄貴とか馬鹿兄貴とか。

「メイド長がこっちに来れなくなるとなると、誰がお屋敷との連絡を取るの?」

「はい。スィーク様が一時的に復帰なさると」

メイド長が2人だと? だがもう片方はお屋敷勤めだから良いのか……良いのか?

「まあ何かあったら教えてね」

「はい」

「それと」

チラッと視線を向けたら、何も知らないクレアが慌てて顔を引っ込めた。

お姉ちゃん子だった彼女とすれば、しばらく会えないと言う事実がショックなんだろけどさ。

「しばらく来れないなら、あっちのお漏らし娘に色々と教えてあげて」

「……私はただのメイドですが?」

「メイド長でしょ? だったら人に教えるのも仕事の1つだと思うよ。少なくとも僕は前任のメイド長から本当に色々と教わったしね」

「……畏まりました。時間の許す範囲で良ければ」

ふんわりと一礼し、フレアさんは妹の机へと向かう。

これでフレアさんと言う万能の駒が使えなくなるのは痛いな。

スィーク叔母様が現役復帰するならここに居る限りは安全なのは間違いなさそうだけど……でも僕を狙う暗殺者とか本当に居るのかね? 全くもってそんな気配もしないんだけど?

「ふははは~。どうかね幼き君よ! この私の素晴らしさに魅了されたと言うならば股を開くが良い!」

「お前の腹を捌いて内臓をぶちまけてやる!」

「あははは~。なかなかどうして! 本当に幼き君は素直では無いっ!」

襲撃者のはずだ。

突如として隠れ家に踏み込んで来た男女の2人組は、何故か女性というか少女のように見える彼女が一緒に押し入って来た男性に向かい短剣を振るう。

それを男性はひらりと回避すると背後に居た仲間が1人死んだ。

「本当に死ね。そして死体も殺す」

「なははは~。何をそんなに照れているのかね? 今日の幼き君の下着は可愛いと私は思うが?」

「良し死ね」

目にも見えぬ動きで少女が移動し仲間の首が2つ跳ぶ。

ひらりひらりと回避する男性は、余裕な様子でチッチッチッと顔の前で指を振った。

「私とて学ぶのだ! 幼き君がより可愛らしくさせるにはどうすれば良いか……それは普段からの装いだ! さあその可愛らしい純白な下着を私に見せると良い!」

カッと顔を真っ赤にした少女が、短めのスカートの裾を押さえまた消えた。

2人ほど死体が追加されるが、男たちはこの場から逃げることが出来ない。

襲撃に備え出入り口を1か所にしていたことと、何よりその場所を交互に男女のどちらかが塞ぐのだ。

「さあ! その年端も行かない少女用の下着を是非私にっ!」

両腕を広げ突進して来る彼に少女は短剣を投げる。

腰のカタナを抜いて弾くと、反射した短剣は物陰に隠れていた男の眉間に突き刺さる。

ついでに握ったカタナを振るい一閃すると……死体の数が増える。

ほんのわずかな時間と馬鹿話の間に、共和国が誇る賞金稼ぎたちは全員が死体となった。

「どう殺されたい? この変態がっ!」

床に伏した変態の顔面を踏みつけるミシュは、完全にどこか遠くに逝ってしまった目で彼を睨む。

視線で人が殺せるならミシュは彼をもう数千回は殺しているだろう。それでも生温い。

「ハァハァ……たまらん。たまらんぞ~!」

顔を踏まれつつもミシュの足の根元に視線を向けるマツバは興奮した様子で、腰を浮かせて頭から足で床の上には弓なりの橋を作る。

ギリッと奥歯を噛んでミシュは結構本気で相手の頭を踏む。

元上司の依頼で王都内の暗殺者や賞金稼ぎを狩り続けているミシュは、寮には戻らず安宿暮らしを続けていた。

一応元上司が手配しているとは言え仕事をズル休みしている状況なので、寮に戻って周りからの小言を受けるのも億劫なのもあるが、猟犬に戻っている時は余り知り合いに逢いたくないのが本音だった。

だが唯一の例外が居る。踏みつけている変態だ。

どこに隠れても『匂いを辿って来た!』と豪語して追いかけて来るのだ。

ただ寝込みは襲わないと言う紳士協定が成立しているので、いつも通り仮眠を取っていたら……相手に仕掛けられた。

水差しの水を頭から掛けられ、相手の股間を蹴り上げてから着替えをと思ったら……着替えの、下着の全てが子供用に変えられていたのだ。

ギリッとまた奥歯を噛んで、ミシュは相手の顔面を踏みにじる。

フリフリのフリルの付いた可愛らしい下着を履いて狩りなど狂気の沙汰だ。

それもこれも全て足元の変態が悪い。

「やっぱりこのまま殺そう」

「あははは~。眼福である。眼福であるぞ~!」

逆手に握った短剣を相手の心臓目掛けて振り下ろす。

スッと振られたカタナを回避すべく、彼の頭を全力で踏みつけその反動で跳躍する。

「うむ。幼き君よ」

「あん?」

「何故その下着の良さを理解しない。幼き君にはそれが一番似合っているのだ!」

「やっぱ死ね」

幽鬼のように動き出しミシュは相手を追って駆けだした。

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