軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ノイエの悪口は

魔力の回復で睡眠は必要とするが、食事や排せつを必要としない体は便利と言えば便利だ。

もう何日と話し合いと調査を続けるアイルローゼとエウリンカだが、明確な答えは出ない。

「もう一層のこと……この不毛な会話を止めないか?」

「無理よ。私は魔女だから」

「本当に厄介だね。その性質は」

自ら提案したことではあるが、エウリンカとてこのまま終わらせる気は無い。

ただ何の変化も生じないのは正直言って辛すぎる。

「あはは~。あれ~? 珍しい2人が一緒に居る~」

「レニーラか」

やって来たのは天性の舞姫であるレニーラだ。

その整った容姿は異性が見れば垂涎の的であるが、普段の彼女はとても能天気で……つまり見ていて残念な感じになってしまう。

それがエウリンカの彼女に対する評価だ。だが決して頭が悪い訳ではない。

「何々? 悪だくみ?」

「何故そうなる?」

「だって魔女が2人で密談とか絶対に良くない話じゃないの?」

「自分は魔女では無いのだがね」

やれやれと頭を掻くエウリンカばかりにレニーラが話しかけるのは、アイルローゼの視線がとても穏やかでないからだ。

ただ彼女の怒りはエウリンカの暴露で上書きされ、レニーラ的にはもう許された気でいるが。

「それで何してるの?」

「ああ。少しノイエのことを調べている」

「ノイエの?」

流石のレニーラも少し真面目な表情を見せる。

掻い摘でエウリンカは彼女に説明し、『誰かノイエのことでおかしなことを言っていなかったか?』とついでに質問をする。

頬に指をあてて軽く考え込んだ舞姫は、ポンと手を打った。

「あれだよ」

「どれかね?」

「誰かが何か言ってたとかじゃなくてさ……ノイエ自身が変わろうとしてるって線は?」

「君は何を言っているのかね?」

半眼で問うてくるエウリンカにレニーラの首が若干傾く。

「ノイエだって女の子なんだよ? 旦那君に好かれたい一心で、自分を変えようと努力するぐらい変じゃないと思うんだ~」

その場でクルッと綺麗なターンを決めた。

「ノイエがファシーに似ているんじゃなくてファシーに寄せているとかね。だって施設に居た頃の初期のファシーとか見てて物凄く癒されたもん」

「その頃を知らない自分としては何とも言えんな」

「む~。エウリンカは魔剣以外に興味が無さ過ぎなんだよ~」

クルクルと周り、レニーラは軽く服の裾を掴んで一礼する。

「そもそもエウリンカの魔剣ってどこまでの範囲有効なの?」

「有効範囲とは?」

「うん。ノイエの記憶とかにって聞いたけど……その範囲かな。生まれてから今まで?」

「違うな。あの魔剣で封じているのはわずか数年の範囲だ」

「ならノイエが出会った頃のファシーを覚えてて、ああすれば好かれるかもって思う可能性は?」

「……無くはない、か」

可能性だけで言えばゼロではない。

「その考え方で言えば、ノイエが失われている記憶を思い出そうとすることもあり得るわけね」

口を閉じて思案していたアイルローゼがそう切り出す。

「可能性で言えばあり得るが、彼女の記憶は魔剣で封じている。そう簡単には……」

簡単には思い出すことは出来ない。

エウリンカはそう言い切ろうとして違和感を覚えた。

思い出すことは出来ない。なら……作りだすことは出来るのではないか?

自身も創造を得意とする魔法使いだ。何より誰だって妄想の1つぐらいする。

仮にノイエが妄想し、それを自身の過去とすり替えてしまえば……記憶の改ざんなど簡単にできる。

「ふむ。これは少し真面目に話し合わなければいけないようだな」

「自分で結論を出さずに言いなさいよ」

「そうか」

魔女に促されエウリンカは自分が気づいた可能性を口にした。

聞いたアイルローゼもその可能性は否定できないと思えた。

「記憶の改ざん。ノイエの変化……この子もやはり自分が普通とは違うと気付いているのでしょうね」

「そうだろうとも。ノイエは元々頭の悪い子では無かった。無知であっただけでね」

「ノイエの悪口は許さないわよ」

「ノイエの悪口は許さないよ」

「……これは失言だったね」

2人に睨まれエウリンカは肩を竦めて謝罪する。

「まあ私は馬鹿だから難しい話は分からないけどさ~」

レニーラは場の空気を変えるように口を開く。

「このノイエの魔眼って、元々カミューの物だった訳でしょ?」

「そうだな」

「その魔眼に私たちって居る訳でしょ?」

「そうだな」

「……私たちってどんな風にこの中に入ったの?」

レニーラの問いにエウリンカもアイルローゼを見る。

2人の視線を受けた魔女は、やれやれと口を開いた。

「レニーラはあの日1番に志願したわね」

「そうだよ!」

「エウリンカは……」

「寝ていたね。気づいたらこの中だ」

そうだった。この化け物はあの時あの状況で禁断症状を出して寝ていたのだ。

「あの施設に居た全員が、この魔眼の中に入れなかったのは知っているわね?」

2人の反応を確認しアイルローゼは言葉を続ける。

「その基準は私も知らない。カミューも良く分からないと言っていた。ただあの日……あの場所に残る死体を見た王子様たちが、私たちの首実検をしていても私たちは見つけられなかったでしょうね」

「それはつまり?」

「ええそうよ」

魔女はうっすらと笑い口を開く。

「私たちは体ごとノイエの魔眼に取り込まれた。カミューが見せた『魔法喰い』と同じ原理でね」

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