軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

この借しは大きいぞ?

「何かウチの仕事が増えるとか言う恐ろしい話を聞いたから全力で文句を言いに来た! 責任者、出てこいやっ!」

「あん?」

机に縛り付けられた凶悪な表情をした化け物が睨んで来たので、急いで義妹の盾を装備して相手に向ける。

ジタバタと暴れたポーラが本気で泣きそうな顔をしたので……相手が折れて頭を掻きだす。

「忙しいんだから遊びに来るな」

「そっちが忙しいのは良い。こっちが忙しくなる理由を聞こうか?」

「お前……自分の肩書を忘れてるだろう?」

「僕は愛しいノイエの夫ですが何が?」

ズンと地響きがしてパラパラと天井から埃が落ちて来た。

ノイエがすぐに来ないと思ったらドラゴンの集団とでもかち合ったのかな?

「近衛の副団長だろうが?」

「ああ。そんななんちゃってな肩書もありましたね。今度陛下に言って返上しよう」

「出来ないことを言うな。馬鹿がっ」

一方的に押し付けておいて返せないとかイジメだよな?

「で、その肩書きが必要になるってことは……自ら南部の視察に?」

「そうなる。ボチボチ雨期も近いしここで動くしかない。コンスーロも連れて行くから大変だろうが頑張れ」

「おいっ? 近衛兵を動かす事態になったら誰が指揮を執る?」

「頑張れ」

丸投げする気か? ならばこっちもその時は容赦せんからな? 共和国を恐怖のどん底に突き落としたホリーお姉ちゃんが牙を剥くぞ?

勝手にソファーに座り部屋の外で待機しているメイドさんに紅茶を頼んで、ポーラは……パルが来て無理やり回収して行ったので生温かな視線を向けておく。

ポーラよ。必死に救いを求めているようなリアクションは相手に失礼だぞ?

全力でポーラを頬ずりしているパルもどこか同性愛者臭がするけど。

「で、本当に何しに行くの?」

「あ~。最近色々と過去の調査がずさんなことが分かってな……だから調査だ」

「そうっすか」

国王陛下も代替わりをして色々と引き締めを考えれば間違っていないのか。

強制的に手伝わさせられるのは面白くないけど、代わりに僕は王都残留確定だ。

家族とのんびりまったりしよう。

「で、こっちに内緒で裏で何か企んでるとか無いよね?」

「それはお前の専門だろう?」

「失礼な。僕なら正々堂々と裏工作をします」

「どんな宣言だよ」

やれやれと頭を掻いて、ふと馬鹿兄貴がこっちを見た。

「それとアルグ」

「はい?」

「今回の調査はミシュを借りるぞ」

「借りるって……ずっと借りっぱなしじゃん。ルッテが待機場で世界中の何かを呪いながら危ない言葉を発し続けているって、不穏な報告が上がって来てるんですけど?」

突然消えたミシュなのだが、屋敷待機になる前にフレアさんが色々と動いたらしくて『準戦時特別徴収』とか言う謎の命令書で、一時的ではあるけど強制的に近衛にドナドナされて行った。

「ルッテの不満は知らん。ただ今回のミシュの借用は陛下の正式な許可を得ている。諦めろ」

うわっ……厄介な。

この国の騎士は全て陛下に忠誠を捧げた人たちだ。一応僕の部下であるミシュやルッテでさえも、陛下から命じられればそっちが優先される。

今みたいな暫定的な物じゃなくて正式な物だと手の出しようがない。

つまりルッテの休みは……またダークサイドに落ちるな。あの巨乳。

「この借しは大きいぞ?」

「知らんよ。勝手にどこかに付けておけ」

もう終わりだと言いたげに、馬鹿兄貴がシッシッと払うように手を振って来る。

ソファーから立ち上がり廊下に向かい歩き出すと、『ん~!』とうめき声が。

ポーラの口を押えて頬ずりしているパルの様子に、流石の妹のミルですら何とも言えない表情を作っていた。

このままこのポーラを取り上げたら、パルに末代まで祟られそうだ。

「なら後は宜しく~」

たまには義妹に対して優しいお兄ちゃんで居てやろう。パルは本当に腹違いの妹な訳だしな。

ポーラはパルに預けて部屋を出て行こうとしたらノイエが来た。

「なに?」

「大丈夫だったから……呼んでごめんね」

そっと彼女のアホ毛を抓んでキスをする。

ブルッと全身を震わせたノイエが、嬉々として仕事場に戻って行った。

「グローディアは?」

「撲殺されててぐっちょりしてたから運んで来なかった」

「ジャルスか。本当に律儀ね」

呆れつつ、ノイエの中枢に集まったいつもの面々をアイルローゼは見渡す。

前までならグローディアを実質の議長として話し合いで色々と決めていたが……今はそんなことをすることも無くなった。

最後に面々が集まったのは、アルグスタが異世界人だと知った時ぐらいだ。

何よりあれ以降、この魔眼の中の環境が変わった。

ノイエの傍に彼女を愛し護る者が居ると知って……自ら自分の役目は終わったと言いたげに奥に引っ込む者が増えた。割合で言えば全体の4割ぐらいだ。

一部は隙あらば暴れようとする者も居るが、それだって全体の3割だ。

残りの3割……その内の半分ぐらいが集まっていた。

「少ないわね?」

「あはは~。みんな真面目な話は嫌いだしね~」

踊るレニーラは一応皆に声をかけに行って貰った。

それでも集まったのは、元から居るセシリーンを除いて4人だ。

「きっとアイルローゼの人望が無いからだね」

「否定しないわ」

レニーラの悪口を無視して、アイルローゼは居る者を確認する。

自分。エウリンカ。レニーラ。ホリー。セシリーン。以上だ。

「リグは?」

「難しい話は分かんないって」

「カミーラは?」

「あの旦那は甘やかすと遠慮が無さ過ぎる。しばらく寝るって」

「ファシーは?」

「魔法の勉強するって」

「シュシュは?」

「自由の風が~とか言いながらフワフワと」

「良し。後で全員溶かすわ」

最も短絡的だが効率の良い罰を口にし、アイルローゼはとりあえず集まった者たちに顔を向けた。

「掻い摘んで説明すると、この魔眼はどうやら解明できていない機能がありそうなのよ。だからそれを踏まえてみんなで意見を出し合う。良いかしら?」

告げて話し合いが始まった。

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