軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

もう1枚脱いで

「済まんなアルグスタ。忙しい時に」

「いいえ。前王のお招きでしたらいつでも参じますよ」

「うむ」

義母さんが暴走したお陰で遅くなったが、どうやら今回僕を呼んだのはパパンらしい。

ベッドの上の住人である前王ウイルモット様に真面目に挨拶し、勝手に椅子に座る。

「で、何か用ですか?」

「砕けるのが早すぎるであろう?」

「自分真面目なのが大っ嫌いなんですよね」

「上級貴族としてあるまじき物言いだな」

苦笑しながらもパパンはそれ以上追求してこない。

そもそも王子様じゃない僕として形式まみれの会話とか頭が痛くなるのです。

「何でもノイエと2人で共和国で遊んで来たとか?」

「ん~。そんな噂が流れているみたいですけど、僕らは西の領地を見てからキシャーラさんの所でのんびりしてましたよ? あそこだと素性がバレないのでのんびりできますし」

「そうかそうか」

カカカと笑いだいぶ血色の良くなった表情を見せる。

腕の骨折も回復して来たらしく、今は字を書く練習をしているとか。

ただ腰から下の機能は回復の見込みが無く、立って歩くことは出来ないと言う診断結果が下っている。

「それで何かご用ですか? これでも忙しいんです」

「呼べば来るとさっき言ったであろう?」

「そりゃ来ますよ。でも今日は義母さんが呼んでいるってことだったんで、色々と仕事を残したままなんです」

一応これでもちゃんと仕事とかしてますから。

「何じゃ? 儂の呼び出しであったら仕事をしてから来たと?」

「当たり前でしょう? 何が悲しくて髭面のオッサンの顔を見るのに張り切ったりします?」

「うむ。確かにな」

男として生まれた以上は、野郎に逢うより女性に逢う方を優先すべきである。たとえそれが義理の母親であったとしてもだ。

「で、本題は? 共和国のことなら言いませんよ」

「聞かんよ。実はお前に頼みたいことがある」

「借金ですか?」

「違うよ」

言ってパパンは手を伸ばし自分の足を叩く。

布団に隠されているから分からないが、動かしていない足とかって直ぐに細くなるからな。

「これが動かんでな……ウイルアムの葬儀を行えん」

「陛下に任せれば?」

「否。あれの葬儀は儂が行うと言ったのでな」

「そうっすか」

約束なら仕方ない。

「つまり僕に車いす的な物を作れと言うんですか?」

「どうにかして欲しかったのだが、それは何じゃ?」

ん? この世界には車いすは無いのか。

というか余り異世界の知識を使わせるなと言いたい。まあ良いか。

「簡単に言うと椅子の足に車輪を付けて座ったまま動ける物ですね」

「……作れるのか?」

「あれなら簡単な原理なのでたぶん職人さんと話し合えば作れると思いますが」

病院に入院していた母さんを乗せて外に散歩しに行った時とかよく見てたし、何となくで良いのなら作れると言うかイラストぐらい描ける。

「ならばそれを頼めるか?」

「良いですけど少し時間を頂けますか?」

「何じゃ? 本当に仕事を抱えているのか?」

「仕事と言うか……共和国が僕の首に結構な金額の懸賞金をかけているみたいで」

「やり過ぎなのだよ。お前は」

そう言うなって。だから最近の僕は自重を友達にしてますから。

「だから『余り勝手に出歩くな』と馬鹿兄貴から釘を刺されてまして」

「ふむ。そうか」

釘を刺されているけど、ノイエが常に僕を見ているから大丈夫だと思うんだけどね。

「なので信頼できる職人さんを紹介して頂ければどうにかなるのですが、自分の描いた物を作れる人材を探して注文するとなると」

「背後関係の洗い出しなどせねば会わせられんということか」

「ですね」

だから気心の知れた人の所に行くぐらいならどうにかなるけど、見ず知らずの人の所にはいけないのです。

「ならばその物の絵だけでも描いてくれんか? それを元に儂の方で手を回す」

「それで良ければ今夜にでも描いておくので、明日メイド長が来たら渡せるようにしておきますよ」

「うむ。頼んだ」

真面目な会話は以上か?

「してアルグスタよ」

「はい?」

「先ほどからラインリアの嬉しそうな声が聞こえるのだが……ノイエでも来ているのか?」

「いいえ。彼女は仕事中で……自分の屋敷で預かり育てているポーラを連れて来まして」

「……そうか」

パパンは深く頷いて納得してくれた。

聞こえてくる声は義母さんの『大丈夫よ。もう1枚脱いでちょっとだけ見せてごらんなさい』等の大変物騒と言うかあれな内容だ。

アルビノのポーラは肌がとても白いので、それに興味を持ったらしい義母さんの興奮が止まらない。

「裸に剥くまでやるんですかね?」

「うむ。あれは何と言うか……娘の可愛がり方が特殊じゃからな」

特殊なのはあんた等2人だけの営みだけにしといて欲しいわ。

結果としてポーラは全裸に剥かれたそうな。

「フクロウは?」

「知らん。さっきまで生きていたはずだが」

後ろを振り返ることもせず、男たち2人はただ前へと足を動かし駆け続ける。

足を止めれば狩られてしまう。

自分たちは狩りに来たと言うのに、知らぬ間に猟犬に駆り立てられる獲物と化していたのだ。

「どうする?」

「このままでは共倒れだ」

2人は高額賞金に釣られユニバンスまで来た。

即席ではあるが、今回は組んで狩りをすることにした。

相手はこの国の王族。普通に考えれば護衛となる密偵が配備されているからだ。

だが獲物には護衛の密偵は居ない。

簡単に駆れると思い行動を移そうとした者たちがただ狩られて行く。

男たちは足を止め互いに背を預けると敵が来るのを待った。

荒れた呼吸を必死に宥め、手にした武器を構えて相手の動きを待つ。

「これが噂に聞く……ユニバンスの猟犬か?」

「かもしれんな」

それはあくまで噂だった。

ユニバンス王国には『猟犬』と呼ばれる存在が居て、内外と問わず王家の"敵"を狩り尽すと言う。

猟犬に追われて生き残れた者は居ないとも言われ……実際猟犬の獲物となったこの男たちは、間もなくその人生を終えた。

「本当に数が多い」

短剣の血糊を払いミシュは鞘に戻す。

「あ~もう疲れた」

敵も居なくなり一息つく。

「にょはぁ~!」

警戒はしていた。ちゃんと警戒していたはずなのに、ミシュは悲鳴を上げた。

「幼き君よ……私は帰って来た!」

「何処に手をっ! そっちは、ふにゃ~!」

鎧の隙間とスカートの間から差し込まれた変態の手が、ミシュの敏感な部分に触れて来る。

流石にブチっと何かがキレた彼女は、問答無用で短剣を抜いた。

「死ねっ!」

「ぬはは~。私は死ぬ時は幼き君を腹に乗せてっと、少々本気過ぎるであろう?」

「良いから死ぬ」

本気でブチギレたミシュは短剣を逆手に持つと、変態……マツバ・サツキを追い回した。

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