軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

動じない人になれ

「子が出来んと?」

「はい」

「うむ」

『怪我とかじゃないけど相談したいことがある』と言ったら、ナーファがあっさりと病院内に入れてくれた。

最近は影のように後ろをついて回るポーラの発育状況を確認して貰おうとナーファにお願いしたら、何故か嬉しそうに彼女を連れて行った。

ポーラは泣きそうな顔をしているのだろうか? 良く分からん。

診察室に勝手に行くと、今日の先生は比較的普通だった。

珍しいがこんな日もあるのだろうと納得する。

「自分種無しですかね?」

「うむ。実は過去に毒を飲んだことはあるか?」

「普通死ぬでしょう?」

間違っていないはずだ。普通毒なんて飲んだら……あっ!

「先生」

「どうした」

「実は毒を飲んだことがあるかも?」

というか飲んでる。前のアルグスタは毒を煽って死んだんだ。

「生きている所を見ると弱い毒だったのだろう?」

「いいえ。ちょっと? かなり? 結構強い毒だったかも?」

「……」

ジトッとした目で相手が見てくるわけです。

ええ。飲みましたよ。飲んだら死んじゃうような毒を飲んで死にましたが何か?

「飲んだ毒の効果次第だな。種類が分かるなら可能性を突き止められるが」

「あ~。先生」

「何だ?」

「一般的に貴族たちが最後に使う毒薬的なそれっな感じの毒だと?」

「……お前は何て物を飲んでいるんだ?」

「たぶん事故です」

呆れ果てた感じで先生が深いため息を吐いた。

「貴族が名誉の為に使う毒は即効性の強い物だ」

椅子から立ち上がると先生は棚を漁る。

「主に3つ。子供に使う甘い毒。それと即効性の強いこれと、毒性が強いが死ぬのに時間のかかるこれだな」

わおっ! そんな3種類が揃ってら~。

「ただこの3つには男性の種を殺す効果はない」

「なら僕は大丈夫?」

「毒でない可能性はあるが、これ以外の毒を飲んでいたら何とも言えん」

出された毒が仕舞われ、先生がまた椅子に腰かけた。

「お主の奥方は……月のあれはどうだ?」

「ありますよ。ちゃんと」

「そうか。なら考えられるのは……健康であってもどちらかが不能と言う可能性だな」

「と言いますと?」

「奥方が子供の種が無いか、お主が元々種無しであるか……そう言った先天性の問題だな」

それだと絶望的やん。

「ただ種の数が少ない可能性もある」

「少ない?」

「ああ。ずっと頑張って10年経ってようやく授かることもある」

「ウチもそれかな」

「ただその夫は10年経って出来たことを不審に思い、妻の浮気を疑い大喧嘩になって刃傷騒ぎにまで発展したがな」

「聞きたく無かったです。それは」

ウチの場合刃傷騒ぎは無いな。僕がノイエに勝つとか絶対にないし。

下手したら中の人に殺される可能性すらあるから……刃傷騒ぎになる可能性だけはあるのか。あはは。

「うなぁ~っ!」

ふと僕らは会話を止めて声のした方に顔を向けた。

ナーファよ。だからポーラを妾にする予定は無いんだからな?

「本当に面倒だな」

「でも知らないことが分かったでしょう?」

「うむ。その点は素直に認めよう」

アイルローゼとエウリンカは集まった情報を元に色々と話し合っていた。

何より情報と言えばセシリーンに聞くに限る。

「シュシュが出て戻ってからノイエが『豚』と言ったそうだが……何か分かるか?」

「ええ。知ってるわ」

「聞かせて貰えるかな?」

エウリンカの問いに、アイルローゼは何度か呼吸をし気持ちを落ち着けた。

「……私たちが施設に居た頃の話よ。野外練習と称して犯罪奴隷たちと素手で殺し合いをさせられたことを覚えている?」

「ああ。カミーラたち数人が全員を殺したあれだろう?」

「ええ。ただその時他の実験もあって私たちは施設を30日以上離れた」

「確かそれぐらいだったな」

エウリンカの記憶でもそれぐらいのはずだ。

「シュシュとノイエは留守番組だったよ」

「それは知らなかったな」

「ノイエはあの性格と幼さから無理だと判断され、シュシュは前の鍛錬で怪我をして休んで居た」

一度口を閉じて……アイルローゼは頭を振った。

全てはシュシュの悪戯と言うか、ノイエに施した鍛錬のせいだ。

「シュシュはその間、ノイエに『動じない人になれ』と言って無茶な課題を毎日課したみたいなの」

「無茶とは?」

「ノイエが寝ている隙に豚小屋に運んだり、鳥小屋に運んだり、木の上に運んだり」

「……」

施設に居た頃は、他者と余り接してこなかったエウリンカはそんな事実を知らなかった。

「私たちが戻って来た頃にはノイエは何があっても動じない子になったわね。

寝て起きて馬に顔面を踏まれそうになっても悲鳴1つ上げないのはノイエぐらいよ。代わりにグローディアやカミューが悲鳴を上げて大変だったけれど」

「つまり君もか」

アイルローゼの返事はない。沈黙を肯定と捉えエウリンカは思考する。

「まあ過去の話は良い。つまりノイエが豚と言ったのは?」

「シュシュとの鍛錬を思い出したか、それとも」

「シュシュを思い出したか、か」

どっちにしても厄介な話だ。

やはり直したとはいえ魔剣が壊されたのは良くなかったのかもしれない。

エウリンカはそう結論を出し……対処法を思案する。

「これ以上ノイエの封印を強めるのは正直お勧めはしない」

「理由は?」

「分かっているだろう? これ以上はノイエの記憶の全てが消えかねない。何より彼女の記憶に制限があるのも封印の余波かもしれない」

「でもドラゴンに関する記憶だけは相変わらず完璧よ?」

「……好きなことは決して忘れないと言うことか」

正直魔剣が担当のエウリンカとしては、人の記憶という分野に関しては専門家を連れて来て欲しいのが本音だ。

「ユーリカが居ればもっと分かったのだろうな」

「ええ。でも彼女はもう居ないわ」

「そうか」

ならば居る者で頑張るしかない。

アイルローゼとエウリンカの調査はまだ終わらない。

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