軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

絶対に殴り飛ばしてやる

結果としてそれは失敗だったのだろう。部分的にでは無く全てにおいてがだ。

稚拙すぎる企み。『あれでどうして成功すると思ったのか?』と後で調査した者は皆が首を傾げる。

その名を広く知られたユニバンス王国の上級貴族ルーセフルトは、捕らわれの王都で決起し反乱を起こそうとして失敗した。

『滅亡前の悪あがき』

そう揶揄する者も多く居た。

だが彼らはその作戦が成功すると信じ、全員が疑うことなく行動したのだ。

捕らわれの旗頭……アルグスタ王子を救い出し、その勢いで国王と"2人"の王子を殺害しようとした。

宰相シュニットは王都に居るが、ワヒルツヒに居るハーフレンなどどうやって殺す気だったのか?

全てにおいて欠点だらけだった反逆行為は……結果として最初の時点で終わっていた。

タインツたちは捕らわれていた自身の屋敷の外にすら出ることが出来ずに、全員が警戒していた近衛の精鋭の手により捕縛されたのだ。

凶行と言っても良い。気が狂っているとしか思えないが、それでも彼らは動いたのだ。自分たちの死期を早める行動を。

ようやく王都に帰還したハーフレンは、国王の命により部下を連れてエーバの街に移動することとなった。

囚われ運ばれて来たルーセフルト家の主だった者たちはエーバの街の屋敷に放り込まれ、そして第二王子の指示の元で完全に粛清されたのであった。

「ふむ。少し失敗したな」

遠くからエーバの街に存在する屋敷の様子を覗いていたエルダーは、そう結論付けた。

やはり無能な者たちを操っても自分の与えた命令以上の仕事は出来ない。

柔軟性も無く、命令を盲信して行動してしまう。

「まあ良いでしょう。次に繋げれば良い」

嗤いエルダーは屋敷に背を向けた。

ルーセフルトは十分に自分の益となった。

潤沢な活動資金と実験の材料も提供してくれた。何より魔剣は有り難い。

これ以上の活躍を望む方が酷と言うものだ。

《私はこの研究成果を武器に必ずや登り詰める》

事実彼は邪魔な者を廃して地位を得だしていた。

《皇の傍に行き、この支配魔法で皇を支配すれば……私はこの地の覇者となる》

クツクツと笑い彼は姿を消した。

「どうするよ? 兄貴」

エーバの街から戻って来た弟の面会にシュニットは時間を作った。

彼が何を求めて来るのかは想像出来たからだ。

「だが勝手をすれば陛下がお怒りになるぞ?」

「でもこのままアルグスタを野放しにしておけば、王家を良く思わない貴族たちに担がれることになるかもしれない。こんな粛清をその度にするつもりか?」

「確かにな」

渋い表情をしてシュニットは押し黙る。

本来ならアルグスタが持つ王位継承権だけでも廃することが出来れば良いのだが、彼は運悪くあのノイエの結婚相手を押し付けることが決まっている。

ドラゴンを千切り殺す化け物と結婚させられるのは、ハーフレンとしては同情すら覚える。

「勝手をすれば大問題だ。今はまだ様子を見よう」

「分かった。ただもし不穏な動きがあれば……俺は勝手に動くぞ」

「ハーフレン?」

ソファーから立ち上がった弟は頭を掻いて兄を見た。

「俺たちが判断を誤り王家を滅亡へと導いたら……俺たちを信じて死んで行った者たちに顔向けが出来ない」

「……」

現場で人の生き死にを見ている弟だからこそ、その言葉の意味が重い。

シュニットは何も言えずに部屋を出て行く弟の背中を見つめ続けた。

「あ~。疲れた~」

「謹慎って疲れるんですか?」

「そうなのよ~。朝から晩まで嫌な上司にご奉仕しないといけないの~」

「ご奉仕?」

小さく首を傾げるルッテに歩み寄り、ミシュはごにょごにょと大人のあれ~なご奉仕を説明する。

顔を真っ赤にさせたルッテは、変態な先輩からダッシュで離れるとそのまま丸太小屋に逃げ込んだ。

「まだまだ初々しいね~」

「遊んでないでよ」

「良いじゃん。私なんて結局休み無しで働き詰めなんだからさ~。これぐらいして遊んでないとやってらんないわ~」

いつも通り丸太の椅子に戻ってミシュはそれに座った。

「それでルーセフルト家は?」

「王子様を残して全員粛清されたね~」

「そう」

まだ上がって来る報告書が少ないので、フレアとしては詳しい話は分かっていない。

唯一最初に確認したのは、幼馴染の彼が無事に帰って来たかどうかぐらいだ。

「ま~。これでようやく休めるわ~」

「何を言ってるの? 本業に戻りなさい」

「うわ~。ここにも酷いことを言う奴が居たわ~」

天を仰いでミシュは吠えた。

「知ってる? イーリナなんて今日から10日も休みなんだよ? 何この違い?」

「日頃の行いじゃないかしら?」

「あんな無気力生物より私の方が仕事してるって言うのよ~!」

「そうね」

その点だけはフレアも認める。

噂に聞く近衛の魔法隊隊長は……今の自分が何か言えばひがみにしか聞こえない気がしてフレアは口を閉じた。

「一つ言えるのは、彼女は軍関係の男性から拒絶されていないわ。少なくとも」

「何でだよ~。男って言うのは、普通私ぐらいの女を見たら興奮して襲って来いって言うのよ~!」

「襲いかかって来る猛獣を相手にその気が起きる男性が居たら驚きよね」

「腰抜けばかりか~!」

絶叫して地面を殴り出した馬鹿にフレアはため息を吐いた。

王城の一室から地下牢へと住まいを変えた弟の元をハーフレンは訪れた。

鉄の扉の向こうに居る相手に対し、覗き窓から中を見る。

捕らわれの弟は報告通りベッドの上で膝を抱いて、ただ壁の一点を睨みつけていた。

《見るのも嫌になるな》

だから扉を開けて彼は中に入った。

「……誰だ?」

「兄の顔も知らんか?」

「……そうか」

興味が無いと言いたげな相手にハーフレンは深く息を吐いた。

ヅカヅカと歩み寄って馬鹿な弟の頬を張る。二度三度と叩いて相手に自分の立場を叩きこむ。

「文句ばかり言って駄々を捏ねているだけのようだな?」

「……悪いか?」

「ああ悪い。息をするだけの虫風情が我が儘するな」

もう一度頬を叩いて、ハーフレンは相手を投げ捨てる。

どうにか体勢を立て直したアルグスタは、切れた口の端から血を溢し……兄を睨みつけた。

「覚えて居ろよ。絶対に俺はお前を許さん。殺してやるからなっ!」

「出来るならやってみろ? 口先だけのガキが」

激高して飛びかかって来る弟を片手で制し、ハーフレンはそのまま相手を石の床に投げつける。

背中を強かに打って痛めたアルグスタは身を捩じるが、ハーフレンはそんな彼の顔を踏みつけた。

「従えアルグスタ。それがお前が生きる唯一の道だ」

本当に残された道はそれしか無い。だが弟はそんな兄の言葉に拒絶した。

「断る。殺したければ殺せ。あんな化け物の番人になるなら俺は笑って死んでやる」

「お前みたいなガキにそんなことは出来ないよ」

蹴り飛ばしハーフレンは牢を出ようと歩き出した。

「……忘れないからな」

足を止め肩越しに振り返る。

アルグスタは床に這いつくばって兄を睨んでいた。

「俺は忘れない。死んでも忘れない。お前は俺の敵だ。絶対に殴り飛ばしてやる」

「そうかよ。なら出来たら頭の1つでも撫でてやるよ」

鼻で笑いハーフレンは地下牢を出た。

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