軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

こうグワッと

吐く息が白くなりだした。

ノイエはいつもと変わらず王都の外でドラゴンを狩る。

捕まえて地面に叩きつければドラゴンは動かなくなる。

たまに地面を走って来るのも居るので、そっちも捕まえて地面に叩きつける。

毎日のように言われてノイエも1つだけ覚えたことがある。叩きつけたドラゴンを放置しない。

尻尾を掴んで地面を蹴って宙を舞う。向かう先は郊外に作られたドラゴンの集積場だ。

現在は北と南に作られたが、新年の間に東と西にも作られるらしい。だがノイエはそんな言葉を右から左へと受け流し、ただ近い場所へと運ぶのだ。

ポイッと地面に投げ捨てれば、ボロを纏った犯罪奴隷たちが鉈を持ってドラゴンの厚く硬い皮膚に向かって振り下ろす。

ガツンガツンと何度も弾かれそれでも打ち続ける様子をぼんやりと眺めていたノイエは、クルッとひと房飛び出ている髪を揺らすと地面を蹴って宙を舞った。

「何だって?」

「えっと……隊長が何と言うか……普通の人に見せられないドラゴンの狩り方を初めまして……」

何故か後頭部に手をやり、『いや~どうしたんだろうね?』と言いたげに笑う馬鹿にハーフレンは丸めた紙を投げつける。

軽く受け止めたミシュは、その紙がゴミでは無いと理解して自分の懐に入れた。

「それでどんな狩り方なんだ?」

「えっと……前までは地面に叩きつけて殺してたんだけど」

それもそれで十分に人に見せられない殺し方である。

だがミシュの言葉はハーフレンの想像を超えた。

「口を上下にグワッと開いて引き裂くのよ。こうグワッと」

自身の動作で目に見えないドラゴンの口を上下に引き裂くミシュ。その動きでハーフレンは納得した。

「何か不満でもたまったか?」

「かな~?」

「食事の方は?」

「フレアが確認したけどいつも通り山盛りで食べてるって」

「なら風呂か?」

「メイドさんたちが何人も掛かりっきりで面倒見ているから問題無いはず」

「そうなると……何だ?」

「知らないわよ。そもそも隊長は自分のことを語らないし」

やれやれと肩を竦めるミシュにハーフレンは掴んだ羽ペンをダーツの要領で投げる。

飛んで来たペンを掴んでミシュは羽根先で耳を掻く。

「一応フレアが話を聞いているけど……まあ期待しないで」

「と言うかフレアばかり働いて無いか?」

「え~。だって~。私が~。『隊長はこう野性味溢れる感じで育てよう』って言ってるのに~。フレアの奴が~。『隊長は清楚な感じで良いんです。そっちが似合います。動かなければ』って言ってるから~」

かわい子ぶって目を輝かせるミシュに、ハーフレンは生温かな視線を向けた。

「まあ動かなければノイエは可愛いからな。何処かの行き遅れと違って」

「おうおうおう。ミシュちゃんは次の新年で21だから。まだ大丈夫だから」

「そっか~。なら良いけどな~」

「よく分からんがムカついた~!」

襲いかかって来た馬鹿を退治し、ハーフレンは外に目を向ける。

新年がもうすぐ来るらしい。その証拠に外は厚い雲が姿を現すようになり、暖炉に火を入れる回数も増えて来た。

「ノイエのことは基本お前たちがどうにかしろ」

「おうおうおう。相変わらず無茶を言う上司だな?」

「言うな。正直今はそれどころじゃない」

ハーフレンに踏まれているミシュは動きを止めた。

「で、さっきの紙になる訳?」

「ああ。済まんが早急に頼む」

「だからあまり王都のような場所で仕事したくないんだけどね」

脱力したミシュは、面倒臭そうに顔を上げる。

「ルーセフルトが何か企んでる?」

「それもある。ついでに新年には共和国から兄貴の嫁が来る」

「うわ~。面倒臭そう」

『嫌だ嫌だ』と言いたげにミシュは耳を塞いだ。

「ああ。駐在の大使や共和国から来る特使が、是非にと言ってノイエとの面談を求めている」

「無理無理無理。最近ようやくフォークとスプーンの違いを覚えたのよ? そんな人が偉い人に会ったら何をしでかすか」

「知らんよ。それをどうにかするのがお前の仕事だ」

「うわ~。本気で馬を育ててる方が楽だわ」

「そうか」

グリッと馬鹿の背を踏んで、ハーフレンはその足を退けた。

「そうだミシュ」

「ほい?」

「年が明けたら馬を買いにお前の実家に行きたい。案内しろ」

「え~」

全力で嫌そうな声を上げる馬鹿にハーフレンは言葉を続ける。

「それとついでに1人面白そうな人材が居る。それを勧誘に行くから付き合え」

「へいへい。なら新年の間は……隊長はどうするの?」

「ドラゴンが居ない時のノイエは基本ベッドの上でゴロゴロだろう?」

「確かに」

認めてミシュは、とりあえず与えられた新しい依頼から処理することに決めた。

「硬い?」

「硬い?」

「はい」

合計で半日近い時間を費やし、フレアはようやくノイエからその言葉を得た。

「つまりベッドが硬いと?」

「はい」

コクンと頷いてるが、ノイエはたぶん適当に頷いている感じだ。

付き合うというよりも介護に近い環境下でずっと彼女と居るからこそフレアは理解した。

「なら今日は仕事が終わってからベッドを見に行きましょうか?」

「はい」

頷いて昼食を食べたノイエは地面を蹴って宙を舞う。

寒くなって来たからドラゴンの数は極端に減っている。その減ったドラゴンを探して退治するのだから……そう考えると少しだけドラゴンに同情したくなった。

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