軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

俺は責任を取らんがな

「保護と申すか?」

「はい陛下」

「うむ」

急を要するということで近衛団長と会うこととなった国王は、彼の申し出に頭を悩ませた。

申し出としては『ノイエを他の女性騎士たちと一緒に住まわせるのは、同じ寮に住む女性騎士たちからの勧誘を受けることとなる』と言うもっともらしい言葉だった。

だから王家で保護したいと言う言葉も理解は出来る。

「事実を申せハーフレン」

「はい。ノイエを女子寮に置いておくと女子寮が崩壊しかねません。具体的にはあと数日の猶予かと」

「……そうか」

あれが普通とは違うということをウイルモットは直に見て理解している。

その容姿は将来有望であるが、飛んでいるドラゴンに飛びつき尻尾を掴んで地面に叩きつけるなど……もし何かあれば、あれを自身の身にされてしまうかもしれないと思うとゾッとする。

「何処か近衛の施設で置いておけないのか?」

「それも考えましたが……彼女には致命的な欠陥があります」

「うむ欠陥とな?」

「はい。自分のことが何一つとして出来ないのです」

「出来ないとは?」

「……着替えや入浴など1人で出来ません」

実の父親である国王に対し、ハーフレンははっきりと告げた。ただ内心では『俺は何て馬鹿なことを言っているんだ?』という何とも言えない気持ちが渦巻いて悲しくなる。

案の定父親である彼が呆れ果てた視線を寄こした。

「ハーフレンよ」

「失礼ながら先に弁明を」

「……聞こうか」

「はい。自分の部下であるフレアとミシュがあの少女を預かり幾日も経ちました。が、彼女はまだ入浴どころか着替えすら出来ないのです」

「……」

余りの言葉にウイルモットは軽く目を剥いて自分の息子を見た。

メイド長であるスィークが救出して来てから暦の上では3分の1ほど過ぎた。その間教えても覚えられないというのは……想像を絶する欠陥である。

「事実か?」

「はい。悲しいことに」

「つまり……彼女をどうにかするには面倒を見る者が必要だと?」

「そう部下たちは申しています」

特にミシュが全身全霊を持ってそう訴えている。

フレアに関しては『もう少し……結構それなりに頑張ってくれれば面倒を見れないことはないのだけれど』とその目をずっと遠くに向けて言い出す始末だ。

「正直に申してこのままでは部下たちがノイエの扱いで燃え尽きてしまいます。出来れば仕事の時間以外はノイエの世話から解放させてやりたいと思うのです」

「そうか……」

頷いてウイルモットは思案する。

ノイエが日々ドラゴンを狩りだしたことで、王都は現在ちょっとした好景気に沸いている。

先んじて工区にドラゴン用の加工場を製造していたルーセフルト家のエルダーに対しては思うこともあるが、お陰でドラゴンを加工し新たな産業が生まれたのも事実だ。

ノイエの仕事は金になる。

「良かろう。ではノイエを王城内の離れに住まわせることとし、彼女には専属でメイドを付ける。その費用は王家が支払うことする」

「申し出た自分が伺うのも失礼ですが、宜しいのですか? 陛下」

「構わん。何より今後のノイエは金を生む存在である」

ニヤリと笑いウイルモットは息子を見た。

「近衛団長よ」

「はっ」

「このことを宰相と話すように。良いな?」

「……はっ」

新たに課題を出されたと感じ取ったハーフレンは、頭を掻こうとしてそれを我慢した。

本当に自分の父親は息子を試すことを趣味にしているのかと思うほどだ。

「済まんな兄貴。色々と忙しい時に」

「構わんよ。お前の所のフレアが正確な報告書を作ってくれたお陰でこちらはだいぶ楽が出来た」

「ならルーセフルトに一発お見舞いできるのか?」

「一発と言うには少々辛いがな。ただあの一族に嫌がらせぐらいは出来るだろう」

次の議題にかければルーセフルトの派閥の者たちは大騒ぎするのは間違いない。

それでもあの一族に対する嫌がらせ程度で終わるだろろうとシュニットは考えていた。

「それで陛下は何と?」

「ああ。ノイエは金を生む存在だと言われた」

「金を……」

腕を組み思案するシュニットは押し黙る。

しばらくすると腕を解いて彼は口を開いた。

「なるほどな。つまりはノイエに目を付け行動する者が増えるということだ」

「どう言うことだ?」

政治……特に財政面に弱いハーフレンは思考せずに兄に尋ねた。

「幸か不幸かノイエは王城の離れに住むこととなった。これならば女性騎士を使いノイエを勧誘することは難しいだろう。何より副隊長はあのクロストパージュの娘と……もう1人はどうなのだ?」

兄の質問は理解出来た。身内を襲い脅迫すると言ったことを警戒してのことだ。

「あの馬鹿は実家から勘当されているそうだ。自称だがそうなっている。それに多くの軍馬を育成しているエバーヘッケ家に手を出すのは色々と考えて面白くない。ドラゴンが増えてから家畜の育成は難易度が増している。それでも前と変わらず軍馬を納めるあの一族の馬産技術はおかしなぐらいだ」

「ならば実家を脅すなどと言う馬鹿げたことをする者は居ないと?」

「居るかも知れんが……まあやってみると良い。俺は責任を取らんがな」

何故かそう言って肩を竦める弟の様子が気にもなったが、シュニットは深く追求しなかった。

「ならば考えられるのはノイエ自身に対する直接的な行為だな」

「あれを物理的にどうにかすると?」

「ああ。私たちはノイエの実力を知っているが、知らん者も居る。何より欲と言うのは人の目を狂わせる」

「確かにな」

何となく自滅した前任の近衛団長の名をハーフレンは思い出した。

「だからこそ手を打つ」

「どんな?」

「ノイエに特別な許可を与える。ただそれだけだ」

言ってシュニットは軽く頷いた。

「ノイエのドラゴン退治を妨害をする者を、仮にノイエが殺害しても罪には問わない」

「そんな無茶を他の貴族が飲むものか?」

「だからこの言葉も付け加える。『どんな地位の者であっても例外は無い』とな」

はっきりと告げた兄にハーフレンは手を叩いて笑った。

「つまり俺たちも例に漏れずと言うことか? それなら貴族たちもはっきりと拒否できないな」

「ああ。だが下手をすれば私たちもノイエに殺されかねんぞ?」

「だったらあれがドラゴン退治をしている時は近くに居なければ良い。そう言うことだろう?」

「そう言うことだな」

そう言うはずだった。当初は、

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