軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟を決めたんだろ?

27日目

予定変更を余儀なくされたが……元々限界には達していた。

出て来れるメンバーも前衛職はカミーラだけだ。お姉ちゃんは後衛と言うか裏方だし、シュシュに至っては前後衛のくくりで測れない立ち位置だしね。

何よりユニバンスに戻った時点でノイエの家族は使えない。

だったら最後は僕ら2人でするしかない。出し惜しみは無しだ。全力で挑んでやる。

「ノイエ」

「はい」

「準備は?」

「大丈夫」

プラチナの鎧姿のノイエは臨戦状態だ。でも今回の相手はドラゴンじゃない。

と、ノイエの色が青に変わった。

「2人きりでやれるの? アルグちゃん?」

「やるしか無いんだよ。今回ばかりは」

ポンとお姉ちゃんの肩を叩く。

「そもそもユーリカに頼まれたのは僕ら2人だしね。甘えが過ぎたかも」

「……馬鹿ね」

笑って彼女が抱き付いて来た。

前からギュッと優しく抱き締めてくれる。

「私たちは家族なのよ。だからいくらでも甘えれば良い。私はそれを受け入れるぐらい造作もないのだから」

「それでもだよ」

何より少しは格好の良い夫で居たいのです。

このままだと全部ノイエのお陰になっちゃうから……それだとユーリカが安心してくれない。

彼女の夫として彼女の共に生きるのなら、僕はちゃんと出来ることを証明したい。

「僕はやるよ。ノイエと2人で、今回は彼女の家族を解放するんだ」

「そう」

ゆっくりと手を離して彼女は僕に笑ってみせると、そっと爪先立って僕にキスをする。

はむっと濃厚なキスをして……そっと僕の目を見て微笑んだ。

「ならお姉ちゃんに格好の良い所を見せてね。出来るんでしょう?」

「ああ。勿論だよ」

たとえ嘘でも僕の返事はそれだと決まっている。

僕らは王都から半日ほど北に進んだ場所に布陣した。

この場所は古戦場の1つで平坦で戦いやすい地形している。

本来ならノイエと2人で突撃する予定だったんだけど、

「で、何故にと問いたい?」

「決まっているだろう? 『楽しいことは全員で』がこの国の決まりだ」

笑う近衛団長の頭を新旧のメイド長が殴って黙らせてくれた。

旧の方は良いとして、新の方は来ちゃダメでしょう? 自分の体を理解してますか?

僕の視線に気づいたフレアさんが柔らかく笑った。

「ご心配なく。アルグスタ様」

「心配が止まらないんですけど?」

「私はこれの護衛ですので」

自分の主を、愛して止まない人物をこれとか言わないの。

何よりそれの子供がお腹の中に居るんでしょう?

「片時も彼の元から離れませんので」

「……そうっすか~」

惚気だ。実はこの2人惚気るためにここに来たらしい。

気づいたミシュとルッテまでもが同時に『ペッ』と唾棄して凶悪な目を向けている。

「で、そっちの凹凸2人組はどうしてここに?」

「糞上司が勝手やるからでしょうに! これでも私たちは騎士なのよ! 全く!」

普段していない騎士の紋章を腰にぶら下げてミシュが吠える。

ミシュたちの紋章とかレアだわ~。

ウチのお嫁さんなんて最近、存在自体でフリーパスになりつつあるけど。

「王家と王族の人がこんな場所に来てて騎士が居ない方が変なの! 分かれ!」

「分かりました」

押し切られた格好で理解させられた。

それだったら名誉騎士の称号を持つノイエが居る時点で問題無しだ。

本来結婚したら女性騎士は地位し喪失するんだけど、ノイエの場合は『ドラゴンスレイヤー』だからと言う特例で名誉騎士に叙された。

受勲式でのひと悶着は思い出したくない。お兄様が王様で良かった。本当に。

「さてと。なら今回の敵を伝えます。共和国の魔女とその部下たちです」

「知ってるし~」

ミシュのツッコミがうざい。イラッとしてたらノイエが物理的に口を閉じさせて黙らせてくれた。

鼻まで押さえたら呼吸は……ミシュならエラとか生やして呼吸しそうだな。うん。

「問題はその部下の方。例の施設で実験された……本来処刑されているはずの『あの日』の罪人たちです。実力は言うまでも無し。全員が最低でもそこの3人くらいはあるってことだ」

三者三様で反応を寄こす。

ただミシュだけはやはり肺呼吸以外の方法で呼吸は出来ないらしい。だいぶグッタリして来た。

「それがザッと20人くらい。で魔女マリスアン。こっちも様子がおかしいらしい」

「おかしいとは?」

叔母様が軽く睨んで……見つめて来た。

「普通の人の気配が余りしないそうです。つまりは手にした実験体を元に自分の体を弄った可能性があります」

「……」

移動中にお姉ちゃんが出て来て教えてくれた。

『似たり寄ったりだけど、ほぼ全員がおかしな気配を発してるって。本当に大丈夫?』と。

格好つけた手前、甘えられない。後悔ってどうして後でするんだろう?

説明に納得した叔母様が軽く肩を竦めた。

「で、ルッテ」

「はい?」

「そろそろ北の方から来るはずなんだけど……どう?」

「えっと……」

祝福を発動したルッテの目が窪む。

「居ました。たぶん20人くらいです」

「とま~1番の問題は、そんな敵の方が多いんですわ」

ぶっちゃけよう。格好付けたが正直ピンチなのだ。

「だから作戦としては僕とノイエで魔女を倒す」

「俺たちにはその他部下たちの相手をしていろと?」

「出来ないの?」

「やるしかないならするが……正直ドラゴンの皮膚を持っていると無理だな」

「その心配は無用です。今回は僕が全員に祝福を使います」

何故か馬鹿兄貴が口笛を吹いた。

「必死だな。アルグよ?」

「出し惜しみしている状況じゃないしね。何より勝って終わらないと、ここを抜かれると色々と問題です」

「そうだな」

問題は多い。まずマリスアンが彼らにどんな命令を下しているのか分からない。

そして死んだはずの罪人がもし王都にまで到達して暴れようものなら、貴族たちが一斉に声を上げかねない。

本当に厄介だ。

「ならアルグスタの祝福を得られると?」

「はい。叔母様」

「……それはどのような力で?」

叔母様の問いかけに一瞬躊躇した。

仕方ない。覚悟を決めたんだろ?

「使うのは武器に対して。一定の時間ドラゴンに対しては無敵の武器になりますが、いつ効果が切れるのかは運次第です。切れたら全力で逃げて下さい」

「効果切れは時間かしら? それとも何かしらの蓄積?」

「たぶん後者かと。でもノイエが使うと大体一撃で終わりますけどね」

たぶん込める力と言うか、思いと言うか、気合と言うか……何かしらの何かに反応して消費されるっぽい。モミジさんが使った時は複数回使用できたし。

あれ? 気づけばモミジさんが居ない。まあお客さんだし仕方ないか。

「相手が目視出来たら、力を渡すので頑張ってください」

(c) 2020 甲斐八雲