軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

嫌がらせはお終いよ

「ホリ~」

「何よ?」

「仮に~私が~外に~出ると~ファシーが~大暴れ~だぞ~」

台に腰かけているシュシュがフワフワしている。

部屋の隅ではいつも通りホリーが腰を下ろしずっと外を見ている。

ホリーがあの場所に座ってから何日が経過しているだろうか?

弟の信頼に応えるためにとほとんど眠らずにずっとその頭を使い続けている。

どんな無茶をしてもここでは死なない自分たちでも、そんな狂気の沙汰を実行できるのはホリーの彼に対する想いの深さだろう。

「その時は私の魔法で刻んで黙らせるわ」

「……」

その為に自分の隣に封印されたファシーを転がしたのか?

納得してシュシュは外に視線を向ける。

共和国の兵たちに囲まれている彼は命じられるがままに言葉を綴っている。

その記憶力も凄いが、何より彼の胆力が凄い。

槍の先をこれほど向けられて及び腰にならないなど、どれほど自分たちを信頼しているかが伺える。

トクンと胸から大きな心音が聞こえた気がして、シュシュはフワフワしながら小さく首を傾げた。

「もし~旦那ちゃんが~攻撃~されたら~出れば~良いのか~だぞ~?」

「ええそうよ。その時は出て全員を拘束するかアルグちゃんを守りなさい。相手が攻撃をし続けるようならカミーラを呼んでこの場で共和国の国家元首が大怪我をすることになるわね」

「ん~。大問題~だぞ~?」

「そうね。でもその場合、たぶん権力抗争が始まるから共和国は動けなくなる。その間に南部の新領地を固めてしまえば問題無いわ」

「あは~。流石~ホリーだぞ~」

フワフワしながらシュシュはただ外の様子を見続ける。

だがホリーはそっと親指の爪を軽く噛んだ。

ここまでやっても"彼ら"が出て来ない。

考えられるのは温存? それはあり得ない。こんな好機を逃す手はない。全員で襲いかかればノイエを無力化できると考える。何よりそれが最良の手だ。

だが動きが無い。つまりは別だ。

《魔女が共和国から離れて個人的に動いていると考えた方が良い。ならどうする?》

もう一度ゆっくりと思考を巡らせ、ホリーは頭の中に盤面を描く。

自分の駒。相手の駒。それ以外の駒まで配置し再度動かす。

瞬時に100通りの動きを終わらせ、ホリーは噛んでいた爪から唇を離した。

「シュシュ」

「ほ~い」

「退いて。変更よ」

「ほ~い」

台から立ち上がりフワフワするシュシュに、セシリーンの頭部を渡す。

流石のシュシュもそれを直視する精神力を持ち合わせていないらしく、頭上に掲げて見ないようにしながらフワフワを続行だ。

「で~どう~するの~?」

「だから変更よ」

台に座りホリーは自身の魔力を高める。

「たぶん私たちの目標はこの国には居ないわ。だったらこの国での嫌がらせはお終い。グローディアの出番よ」

ホリーは言葉を残して外に出た。

クイクイとノイエが僕の手を引く。

『何だろう?』と視線を向けたら、一瞬彼女の瞳が碧く染まった。何故にお姉ちゃんが?

「アルグ様」

「はい」

「話がある」

ちょっと待とうねお姉ちゃん? 今ここで周りを無視してお話するとか色々と無理っす。

ほら見える? あの殺気立った人たちの姿が? 今にもあの槍を手に突撃して来そうだよ?

「すぐ終わる」

「はい」

と、軽く背伸びをして彼女が僕の耳元に口を寄せる。

「魔女たちはもう居ない。でも確認して」

「……」

「居ないなら指示の3番で」

「了解です」

頬にキスをしてお姉ちゃんがその顔を離す。

と、ノイエに戻ったのだろう彼女は……何故かまたキスをして来てから離れた。

「申し訳ない。余りにも周りが殺気立っていたので妻が甘えて来まして」

「……」

色々と無視していたハルツェンに視線を向ける。

彼の方も裏で何かしているのか、背後で執事らしき者が歩み寄っていた。

「まあ報告はしましたし義理はこれで良いですかね?」

「義理か……まあ良いだろう」

嫌なイケメンぶりを復活して彼はその表情を冷たくしてこっちを見る。

あれだ。悪役特有の余裕しゃくしゃくな感じだな。まあ良いけど。

「それでこっちに来たのでついでに質問があるんですけど?」

「何だアルグスタ」

とうとう呼び捨てですか。まあ本当に良いんですけどね。

「……魔女マリスアンはどこに居る?」

「聞いてどうする?」

「一発殴ってから後は考える。たぶんあの魔女は、死ぬほど後悔することになると思うけどさ」

僕の言葉にハルツェンは増々その表情を冷たくした。

「なるほど。お前はこの場から無事に帰れると思っているらしいな」

「思ってる。だからさっさと居場所を言え」

「……まあ良い。答えは『知らない』だ。『私に逆らうなら全員食い殺す』と置手紙だけを残し消えた」

「使えねえ。それでもこの国の国家元首かよ。恥を知れ」

「……」

視線に冷たい殺意を宿して彼は、そっと右手に何かを持ってこちらに差し出して来る。

透明な丸い玉だ。水晶の類にも見えるけど……最近あの玉が増産され過ぎていないか?

「で、何がしたいの?」

「決まっている。ここまで馬鹿にされコケにされたのだ。それ相応の報いは受けるべきだろう?」

「報いね……」

ノイエのアホ毛が猫の尻尾のようにパンパンに膨らんでいる方が、僕的には大問題ですけどね。

「それでどうするの?」

「今なら降伏するのであれば命は救おう。だが逆らうなら殺す」

「なら逆らう方向で」

「……ほう」

ギリッと玉を握りハルツェンが残忍な笑みを見せる。

これが奴の本当の顔か……醜いな。

「ならばお前は死ね。その女は俺が存分に苦しめてから殺すこととしよう」

「出来るならやってみろ」

その言葉にハルツェンは手にした玉を握り潰した。

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